3 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 15:53:14.46 ID:cz+u61Nv0
 
体に当たる陽が、じりじりと音を立てている風に錯覚するほど暑い日だった。
汗でぐっしょりと濡れたTシャツが、体に張り付くのが気持ち悪い。

蝉の鳴く声が、都会から離れた事を再確認させる。
上京する以前は、毎年聞いていた声だったのだが。
今はもう懐かしいメロディだった。


('A`)「おせえな」


僕の友達、ドクオが愚痴る。
旅館の前で、僕たち六人は、もう一人がトイレから戻ってくるのを待っていた。


(`・ω・´)「あれだろ。あの日」

('A`)「ああ……なるほど」


体格の大きい男が茶化す。大学の柔道部に入っているシャキンだ。
主将では無いのだが、サボリ癖を直していれば間違いなく主将の器の男だ。



4 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 15:58:10.88 ID:cz+u61Nv0
 
从 ゚∀从「馬鹿な事言ってんじゃねえよ」


やや化粧のどぎつい女が、2人に軽蔑の視線を送った。
彼女の名前はハインさん。男勝りの性格で、男より男らしい女。


(*゚ー゚)「中で待ってた方が良かったね」

(,,゚Д゚)「だな」


仲良く2人並んでいるのは、しぃさんと、ギコさんだ。
呼び方でわかるだろうが、僕とドクオ、シャキンは同い年。
ハインさん、しぃさん、ギコさんは一つ上である。

そして今、トイレにいったまま帰ってこないもう一人の人物は、僕と同い年だ。
僕は――その子に恋をしている。



5 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 16:03:44.42 ID:cz+u61Nv0
 



サークルのみんなで、肝試しに行こうと持ちかけたのは、ギコさんだった。
ギコさんはサークルの中でも有名な廃墟マニアだ。

普段は別の友達と廃墟巡りをしていたらしいが、卒業を控えたこの年。
どうしてもサークルのみんなで行きたい場所があるらしいとのことで、僕らはかり出された。

それは有名なホテルの廃墟だった。廃墟に疎い僕でさえ、名前だけは知っている所だ。
僕は正直乗り気じゃなかったが、他のみんな、とりわけシャキンとハインさんは張り切っていた。
どうしてわざわざ怖い場所に行くのか、僕にはとても理解出来ない。
では何故僕がここにいるのか?


从 ゚∀从「あ、デレ! おせえぞ!」


それは一重に、デレが理由だった。



7 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 16:09:22.17 ID:cz+u61Nv0
 
ζ(゚、゚*ζ「……」


玄関からふらりと現れたデレに、ハインさんの怒号が飛ぶ。
色白の肌が、陽を反射してなめらかに輝いている。
形の良い唇がすぼみ、きょとんとした顔をしていたが、彼女はすぐに破顔した。


ζ(゚ー゚*ζ「ごめんなさい」


あまり悪びれた様子が無く、脳天気な笑顔で答える。
ハインさんは、言いかけた言葉を呑んだ。
デレのマイペースぶりは、たぶん生まれた時からだろう。


(,,゚Д゚)「そろそろバスが出るぞ。それ逃したらやべえから、急ぐか」


ここのバスは、一日たった3本しか出ないらしい。
それを逃せば、今日の予定はパーという訳だ。



8 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 16:13:04.25 ID:cz+u61Nv0
 
僕はそれでもいい。
旅館で酒盛りしたり、花火をしたりする程度で良いんだ。
目的は廃墟じゃなくて、あくまでデレなんだから。


(`・ω・´)「モララー」

( ・∀・)「え、何?」

(`・ω・´)「……」

(`・ω・´)「びびって小便漏らすなよ」

( ・∀・)「……」


たぶん軽いジョーク、のつもりだったんだと思う。
僕は苦笑いしか出来なかった。漏らしてたまるか。
どうせ肝試しするなら、デレに良いところを見せたいもんだ。



10 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 16:21:07.88 ID:cz+u61Nv0
 







バスから降りる頃には、空は赤く染まっていた。歩いて山道に入り、真っ直ぐ進んでいく。
ギコさんがあらかじめ下調べしておいたおかげで、分かれ道が来ても迷わず進めた。

ただ分かれ道の時、ギコさんが先導してくれる道は、必ず片方より暗い道だった。
つまり、分かれ道の度に、徐々に陰気な、獣道へとなっていったのだ。
途中しぃさんが何度もギコさんに、こっちの道でいいのか尋ねていた。
その度にギコさんは、けらけらと笑いながら、大丈夫と答える。


(;'A`)「……」

(;゚ー゚)「……」


歩きにくい獣道に、ドクオとしぃさんが早くもダウンしそうだった。
着く前からこれだ。本当に大丈夫なのだろうか。



11 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 16:28:33.82 ID:cz+u61Nv0
 
ギコさんが立ち止まる。再び分かれ道になったようだ。
といっても、もはや分かれ道なのかどうか断定出来ない程の獣道だ。
右か、左。どちらの道も、侵入者を阻むように、生い茂った枝葉が所々道を塞いでいる。


(,,゚Д゚)「……えっと」

(;゚ー゚)「どっちなの?」

(,,゚Д゚)「……すまん。わからん」

从#゚∀从「はぁ!?」


ハインさんが今にも殴りかかりそうな目つきで、ギコさんを睨み付けた。
ギコさんは両手を突き出し、彼女をなだめるように言った。


(;゚Д゚)「違うんだ。本当はさっきの分かれ道を行った先にホテルがあるはずなんだよ。
     ここに分かれ道があるはずないんだ」

(`・ω・´)「道間違えたんじゃないすか?」

(,,゚Д゚)「……かもしれない。どうする?」



13 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 16:32:30.32 ID:cz+u61Nv0
 
('A`)「どうするって……」

(,,゚Д゚)「右に進むか、左に進むか、一旦戻るか、だな。
    間違えてもすぐに引き返せるから、しらみつぶしに行こう」

从 ゚∀从「右行こうぜ。男なら右だろ」

(`・ω・´)「あんた女でしょう。何となくっすけど、左行きたいっす。俺」

(*゚ー゚)「あたしどこでもいいけど……」

ζ(゚ー゚*ζ「私も、どこでもいいです」

( ・∀・)「……」


何となく、僕の意見待ちみたいな雰囲気になった。
さて、どうしようか。

1:右
2:左
3:戻る
>>15



14 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 16:40:54.95 ID:r+Xg0RgxO


15 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 16:41:26.46 ID:ZtpxKvgbO




18 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 16:46:59.63 ID:cz+u61Nv0
 
( ・∀・)「僕も左がいいです」


右か左か、という時、僕はいつも左を選ぶ。
別に理由がある訳ではないが、何となくそっちの方が安心するのだ。


从 ゚∀从「ち」


短い舌打ちが聞こえた。まずい。ハインさんに合わせた方が良かったかもしれない。
僕をじろっと睨むと、踵を返し、無言で先頭を歩いていった。
旅館に戻った時、飲み会があるだろう。その席でからまれる事が、今決定した。








十分ほど歩いた後、少しだけ開けた場所に出た。
切り立った崖に囲まれた場所で、背の高い雑草で覆われている。
ホテルなんて、影も形も無い。ギコさんのため息が聞こえる。


(,,゚Д゚)「間違えたみたいだな」



19 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 16:51:12.71 ID:cz+u61Nv0
 
僕たちは無言で頷いた。その時、ドクオが声をあげた。
何かを見つけたらしい。地面を指さして、首を捻っている。


('A`)「これ、なんだろ」


ドクオの眼前には、動物の足跡がくっきりと残っていた。
周りの雑草は踏みつぶされ、何かが通った道らしきものもある。


从;゚∀从「クマか?」

(,,゚Д゚)「いや……違う」


僕もクマだと思ったが、クマにしては細長い足跡に見えた。
何の動物かわからなかったが、この足跡からすると、クマくらい大きい気がする。


(;゚ー゚)「危険じゃない? 帰らない?」



20 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 16:56:51.35 ID:cz+u61Nv0
 
出来ればそうしたいところだ。僕はみんなの顔をそっと伺った。
ギコさんとハインさん、それとシャキンは、明らかに帰りたくなさそうだった。
この三人は、元々肝試しがメインで来たのだから、帰りたくないのは当然だろう。

ドクオは無表情に、その足跡を見つめている。心中はわからない。
デレはあさっての方を向いて、何か考えているようだった。


(,,゚Д゚)「さっきの分かれ道まで戻ろう。んで、今度は右行こうぜ」

从 ゚∀从「わかった」

(*゚ー゚)「……」


ギコさんが提案し、ハインさんが賛成したら、それは全体の決定を意味する。
一応このサークルの部長と副部長だ。それなりの決定権は持っている。


('A`)「……」


僕たちが引き返そうとした時、一人ドクオは、まだ足跡の前に立ちつくしていた。
後ろから声をかけても反応が無い。僕は肩を叩いて、動くのを促した。



21 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 17:01:12.12 ID:cz+u61Nv0
 
('A`)「なあ、モララー」


振り返ったドクオは、変わらぬ無表情だった。


( ・∀・)「何?」

('A`)「これさ……二本足で歩いているように見えないか?」

( ;・∀・)「え……」


ドクオはにやっと笑って、先に行ったギコさんたちの方へ歩いていった。
もう一度だけ、足跡を見る。二本足で歩く動物なんて、人間以外にいないはずだ。
威嚇でクマが立ち上がる事があるが、それとはまた違う意味だろう。


( ・∀・)「……」


もしこの足跡が、人間のように二本足で歩く動物だったら、とてつもない大男だろう。
雪男とか、そういうレベルの。



23 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 17:06:59.84 ID:cz+u61Nv0
 
下らない空想だ。我に返った僕は、踵を返し駆けた。
その場に止まる事が、何だか怖かった。








分かれ道まで戻り、今度は右の道を選んで進んでいく。
空は青黒く染まり、ぽつぽつと星が見えてきた。
僕たちは、ホテルで分かれて肝試しをする為に、全員が懐中電灯を持っている。
今は節約の為、ギコさんとハインさんだけ点灯していた。


(,,゚Д゚)「お……おおおお!」


道を塞ぐ枝をどけた先に、ぼろぼろになったホテルの壁が見えた。
おざなりのようなフェンスの残骸に囲まれている。どうやら正解だったようだ。



25 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 17:17:33.98 ID:cz+u61Nv0
 
そのホテルは、綺麗な真四角の建物で、学校のような印象を受けた。
雨風にさらされて、コンクリートの壁に所々黒い染みがつき、縦縞の模様をつくっている。
割れた窓ガラスが多く、綺麗に残っている窓は一握りしか見あたらなかった。


(,,゚Д゚)「こっちはたぶん裏だな。前に回るぞ」


ギコさんを先導に、僕らは壁沿いにホテルを回っていった。
角を二回曲がると、割と大きな庭が見えた。
石の残骸となってしまった噴水や、はがれた石のタイルが散らばっている。
屋根付きの玄関もある。仰々しい木の扉が、浸食された表面を晒して、そこに貼り付けられていた。
そこから中へ侵入出来そうだ。


(,,゚Д゚)「……く」


ところがそう甘くは無かった。鍵がかかったままなのか、はたまた腐って開かなくなったのか。
分厚い木の扉は、取っ手を押しても引いても、びくともしなかった。



26 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 17:21:11.56 ID:cz+u61Nv0
 
(*゚ー゚)「どうするの?」

(,,゚Д゚)「ううん……他に通路を探してみようか」


ホテルなのだから、きっと裏口があるだろう。
その時僕は、何か言いたげなシャキンが視界に入った。
昨日今日の付き合いでは無い。何が言いたいか、大体分かる。


1:僕は、シャキンに声をかけた
2:僕は、黙ったままギコさんについていった
3:僕は、全裸で安来節を踊った
>>28



27 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 [sage] 投稿日: 2008/04/14(月) 17:22:14.02 ID:CcyaPzqU0
3

28 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 17:23:54.79 ID:Baxuy1ew0




29 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 17:27:52.64 ID:cz+u61Nv0
 
( ・∀・)「ちょっと待って下さい!」


先に行こうとするギコさんを引き留める。
今こそ練習していたあの芸を披露する時だ。
僕はおもむろに服を脱ぎ、生まれたままの姿となった。
呆然とするみんなの視線を感じ、興奮が高まる。


( ・∀・)「安来千軒〜名の出たところ〜」


ハインさんが何か叫んでいるが、僕は踊るのをやめない。


( ・∀・)「社日桜に〜十神山〜」


ホテルの壁に、僕の天使のような歌声が反射する。
そのままキレのある踊りを見せつけ、ようやく歌が終わる頃には、空は完全に真っ暗になっていた。
懐中電灯に照らされた僕は、全身を覆う汗でキラキラと輝いている。爽快だ。



30 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 17:33:28.35 ID:cz+u61Nv0
 
(`・ω・´)「あのう……」

(,,゚Д゚)「どうした?」

(`・ω・´)「この扉、たぶん開けられますよ」


ギコさんは、意味がわからないと言った風に、怪訝そうな顔をした。
答えの代わりに、シャキンは大きく前傾の姿勢を取り、勢いよく地面を蹴る。
そのまま扉に体当たりをかました。木の扉は弾けるように開いた。


(*゚ー゚)「すごーい!」

(,,゚Д゚)「よっしゃ。まずは中を探検してみるか!」

( ・∀・)「……」


一人残された僕は、ホテルの中に入っていくみんなを、全裸で見つめていた。
誰も僕の事を見ていない。まるで空気の様な扱いだ。
一体僕が何をしたと言うんだ。いそいそと服を着込みながら考えたが、結局わからなかった。



32 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 17:48:23.37 ID:cz+u61Nv0
 
ホテルの中は、外より暗い。僕たちは持っていた懐中電灯をつけ、周りを見渡した。
内装は割と荒れておらず、元のまま残っているようだ。
入って真っ直ぐいったところにカウンターがあり、その左右に通路が続いている。
近くにエレベーターと階段もあった。


(,,゚Д゚)「ホテルの見取り図があるんだ。見てみろ」


ギコさんはポーチから地図を取りだし、地面に広げた。
上から懐中電灯を当て、全員でのぞき込む。

このホテルは十階建てらしい。中庭もあるみたいだ。
宴会場が二つ、レストラン、厨房が一つ、十階はスウィートルームで、あとはダブルとシングル。


(,,゚Д゚)「じゃあ探索といこうか。あ、それとももう肝試しを始めるか?」


うずうずしてたまらないらしい。みんなの顔をニヤニヤしながらのぞき込んでくる。
僕は……。

1:ひとまず、ホテルの中を探索しようと提案した
2:さっさと帰りたかったので、肝試しをしようと提案した
3:全裸でソーラン節を踊った
>>34



33 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 [sage] 投稿日: 2008/04/14(月) 17:49:50.89 ID:CcyaPzqU0
3

34 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 17:52:14.22 ID:kZynWrh70




36 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 17:59:50.53 ID:cz+u61Nv0
 
( ・∀・)「待って下さい!」


不審そうな目で睨まれた。それでも僕はめげない。
こんな時の為に、毎日練習してきたんだ。
その苦労が、僕の自信へと繋がっていた。
おもむろに服を脱ぎ捨てる。この動作も日々練習していた。
今では2秒で全裸になれる程の腕前だ。


( ・∀・)「ヤーレンソーランソーランソーランソーランソーラン!」

('A`)「迷うかもしれないし、とりあえず探索してからでいいんじゃないですか?」

( ・∀・)「にしん来たかと鴎に問えば〜わたしゃ立つ鳥波に聞け〜チョイ!」

从 ゚∀从「そーそー。ここ携帯通じねえじゃん。迷子になったら危ないしさ」

( ・∀・)「ヤサ、エーエンヤーサーノドッコイショ!」

(,,゚Д゚)「迷うようなルートにはしねえつもりだけど……まあいいか
     じゃあ今から肝試しのルートを通るぞ」


見取り図をしまい、ギコさんが立ち上がる。
他のみんなを確認してから、歩き出していった。みんなギコさんについていく。
僕の事を気にかける人はいない。



38 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 18:07:00.60 ID:cz+u61Nv0
 
( ・∀・)「……」


声が出なかった。服を着る気も、みんなについていく気も無かった。
ただただその場で呆然としていた。どうして。あんなに練習したのに。


(・∀・ )「……」


帰ろう。単純な分かれ道だったから、道順は覚えている。
先に旅館に戻って、飲み会の準備でもしておこう。
僕は一人ホテルを出て、真っ暗な夜道を歩いていった。








( ・∀・)「……」


鈴虫の鳴く声が、周りから聞こえてくる。真夏だが、からっとした空気は気持ちよかった。
空を覆う林の木が、星の海を隠す。せっかく田舎まで来たのだから、夜空を楽しみたかった。
もっと星が見えないかと、上を見ながら歩いていく。



40 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 18:15:40.35 ID:cz+u61Nv0
 
( ・∀・)「あれ?」


僅かに見えていた夜空が、真っ暗になった。
一瞬何が起こったのかわからなかったが、すぐに理解出来た。
何かが……大きな何かが……僕の上に降ってきたのだ。

顔を前に向け、急いで地面を蹴る。プールの飛び込みのポーズで、地面に倒れた。
その反動で、懐中電灯がこぼれ落ちる。夜空を遮ったソレは、さっきまで僕がいた場所に落下した。


( ;・∀・)「ああああ……ああ……」


体を起こそうとしたが、腰が抜けて立てなかった。ソレは大きく、二本足で地面に立っていた。
倒れたまま、地面を這って逃げる。懐中電灯を掴もうと、手を伸ばした。
すると……僕の手が……赤く染まった……。
いや……違う……染まったのは……僕の……視界……。
薄れゆく意識の中で……まだ津軽じょんがら節を踊っていない後悔だけが……くっきりと残っていた……。


糸冬「芸は身を滅ぼす」





44 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 18:19:09.32 ID:cz+u61Nv0

(,,゚Д゚)「じゃあ探索といこうか。あ、それとももう肝試しを始めるか?」


うずうずしてたまらないらしい。みんなの顔をニヤニヤしながらのぞき込んでくる。
僕は……。

1:ひとまず、ホテルの中を探索しようと提案した
2:さっさと帰りたかったので、肝試しをしようと提案した
>>46



45 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 18:20:05.41 ID:CcyaPzqU0
2

46 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 18:20:13.25 ID:aASc0ydp0




48 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 18:25:03.83 ID:cz+u61Nv0
 
( ・∀・)「肝試ししません? 旅館に門限がありましたし」

从 ゚∀从「確か2時まで大丈夫だったろ?」

( ・∀・)「まあそうすけど……」

(,,゚Д゚)「他のみんなは?」

(`・ω・´)「俺はどっちでもいいす」

('A`)「俺も……」

ζ(゚ー゚*ζ「私もです」

(*゚ー゚)「んー迷ったりしない?」

(,,゚Д゚)「それは大丈夫だ。迷うようなルートじゃない」

(*゚ー゚)「ならいいよ」

(,,゚Д゚)「よし、決まりだ」


ギコさんはウェストポーチから、今度は赤のマジックを取りだした。
見取り図に線を引いていく。これが肝試しのルートのようである。



50 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 18:30:50.60 ID:cz+u61Nv0
 
(,,゚Д゚)「スタートは今の場所だ。まずは二階まで上がって、レストランを抜ける。
    その後最上階のスウィートルーム、1001号室に行く。印をつけるのはここな」

(*゚ー゚)「印って?」

(,,゚Д゚)「これだよ」


再度ウェストポーチに手を突っ込み、三つのスプレー缶を取りだした。
何て準備がいいんだろう。


(,,゚Д゚)「赤、青、緑のスプレー缶だ。これで壁にちょこっとだけ印をつけるんだよ」

( ;・∀・)「は、犯罪じゃないですか!」


僕は声を大にして叫んだ。
ホテルの一階に、僕の声の残響が起こる。


(,,゚Д゚)「気にするなよ。どうせ廃墟なんだ。
    それにここは立ち入り禁止だ。今いるだけで犯罪なんだよ」

( ;・∀・)「……」



52 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 18:39:35.77 ID:cz+u61Nv0
 
確かにそうだが、あまり気は進まなかった。
暴走族のような真似をするのが気に入らなかったからだ。
そんな僕に構わず、ギコさんは話を続けた。


(,,゚Д゚)「んで、最上階から一気に下まで進む。その時西側の階段を下りるんだぞ
     そうしないと、後の組と鉢合わせになっちまうからな。
     階段を下りたら、すぐ傍に中庭への通路がある。
     中庭を抜けて、北側の扉からホテルの中へ戻る。あとはここを目指してゴールな。
     階段は三つあるから、時間差も考えて、これで鉢合わせになったりはしないはずだ」


見取り図をなぞりながら、ギコさんは丁寧に説明した。
思ったより複雑な構造になっているホテルなので、迷う気もしたが、まあ問題は無いだろう。
迷ったらここを目指して、近くの階段を下りればいいのだ。


(`・ω・´)「七人いますけど、どうやって分かれるんすか?」

(,,゚Д゚)「クジがある。これで、2人、2人、3人に分かれるんだ」


ウェストポーチから出てきた最後のアイテムは、色つきの付箋だった。赤、青、緑色がある。
片方の先にだけ色がついているので、それを隠せばクジとして引けるようになっている。



53 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 18:45:50.16 ID:cz+u61Nv0
 
(,,゚Д゚)「一人ずつ引いてけ」


付箋の色を隠し、みんなの前に掲げる。
方向からして、女の子から先に引かせる気のようだ。


从 ゚∀从「よっと……俺は緑だ」

(*゚ー゚)「……私は赤」

(,,゚Д゚)「デレ」

ζ(゚ー゚*ζ「あ……引くんですね」

(,,゚Д゚)「おう……青、か。ちなみに、緑が3つあるから、3人組は緑だ。モララー、引け」

( ・∀・)「……」


その時僕は……。

1:何となく緑がくるような気がした
2:どことなく赤を引くような気がした
3:気力を振り絞り青を狙った
>>55



54 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 18:46:20.36 ID:pXZJ3LJhO
1

55 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 [sage] 投稿日: 2008/04/14(月) 18:46:24.85 ID:aASc0ydp0




58 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 18:52:56.87 ID:cz+u61Nv0
 
僕は神さまに祈った。お願いします、青を引かせて下さいと。
ただしその時、願望とは別に、何となく緑がくるんだろうという気がしていた。


( ・∀・)「……」

(,,゚Д゚)「3人組だな」


残念ながら、その予感は当たっていた。悪い事に限って当たるんだ。
その後、残りの者がクジを引き、組の編成は決まった。
緑が、僕、ハインさん、シャキン。
赤が、ギコさんとしぃさん。
そして青が、デレとドクオだ。


( ・∀・)「……」

('A`)「不服か?」

( ;・∀・)「え?」

('∀`)「……別に」


気味の悪い笑みだと思った。
その笑みの意図が、全て悪い事に繋がっている気がして、不安だった。



60 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 18:59:22.20 ID:cz+u61Nv0
 
(,,゚Д゚)「最初の組がスタートして、五分後に次の組、て感じで出発する。いいな?」

(`・ω・´)「うぃーす」

(,,゚Д゚)「最初の組は……ジャンケンするか」


代表を決めてジャンケンをした。
その結果、僕らの組が最初に、ギコさんたちが次。
最後にデレたちとなった。

一組目というのが、何とも言えず、恐ろしかった。
もしかしたらホテルの中に、化け物みたいな存在がいるかもしれない。
探索していない分、何が起こるかわからないのだ。


从 ゚∀从「さっさと出発すんぞ」

(`・ω・´)「うぃーす」

( ・∀・)「……」


2人の様子を見て、ひょっとすると僕はくじ運が良かったのかもしれないと思った。
怖い者知らずのハインさんと、柔道有段者のシャキンがいるんだ。
これほど心強い味方も無い。3人組というのが、また頼もしい。



63 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 19:09:14.21 ID:cz+u61Nv0
 
僕は意気揚々と2人についていった。








階段を上がると、目の前がレストランの入り口だった。
元は黄金色に装飾されていたのだろうが、金メッキが剥がれて金属の扉になっている。
扉を抜けると、中は驚くほど荒れていた。埃被った床に、真っ二つになったテーブル。
椅子は運んだ後だったのか、一つも無かった。
むき出しのコンクリートの壁が崩れ落ち、砂礫の山を作っている。

光を巡らせると、部屋は思ったより大きく、二百人くらいは楽に入りそうな部屋だとわかった。
3人で適当に部屋を探索すると、もう一つの出入り口に気がついた。
ルートではここを抜けるのだ。


(`・ω・´)「あん?」


シャキンが立ち止まる。
懐中電灯を振って、何かを探していた。



64 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 19:17:36.95 ID:cz+u61Nv0
 
从 ゚∀从「どうした?」

(`・ω・´)「いや……何か見えたような気がして」

从;゚∀从「こ……こえぇ事言うんじゃねえよ」

(`・ω・´)「あれ、ハインさんって意外と恐がりなんすか?」


シャキンの腰の辺りに、ハインさんの蹴りが入った。
痛がる様子も無く、シャキンは平然としている。
ハインさんはそれが不満だったらしく、再度蹴りを放つ。
しかし当たる寸前に足首を掴まれ、その場で転んでしまった。


(`・ω・´)「あ、すいません」

从#゚∀从「殺……!」


シャキンが懐中電灯をハインさんの方へ向ける。
背後の壁に映ったものに、僕は短く悲鳴を上げた。

壁が、爪の形に抉られていた。本当に爪でやったのなら、鋭く、強固で、大きな爪だ。
問題なのは、その傷がどう考えても最近つけられた風に見える事だった。
僕と同じ事を考えているらしく、ハインさんもシャキンも言葉が出なくなっている。



65 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 19:23:48.80 ID:cz+u61Nv0
 
(`・ω・´)「……」


シャキンは無言で壁に近づいていった。
僕とハインさんも、シャキンの後を追って壁に近寄る。
近づいてみてわかったが、その傷は妙に高い位置にあった。
背の小さい僕は、背伸びをしないと触れられないくらいの高さだ。


从;゚∀从「なんだよこれ……やっぱクマか何かいるんじゃねえか」

(`・ω・´)「……ですね」

从;゚∀从「戻った方がいいんじゃねえのか?」

( ・∀・)「……」


ハインさんとは正反対に、僕は落ち着いていた。
この傷の高さに、何か引っかかるものがあったのだ。
どうやらそれはシャキンも同じらしく、腕を組んだまま考え込んでいる。



68 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 19:27:03.46 ID:cz+u61Nv0
 
( ・∀・)「……」

( ・∀・)「!」


まるで天啓の如く、一つの考えが浮かんだ。
というか、それしか考えられなかった。
そう、つまり……。


1:これは虫食いの傷なんだ
2:これはギコさんがつけた傷なんだ
3:これは幽霊の仕業だ
4:これはドッキリだ
>>70



69 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 19:27:56.81 ID:KW9iB3E0O
3

70 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 19:28:06.71 ID:bhfz1iNZ0


71 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 19:28:50.03 ID:pXZJ3LJhO




72 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 19:34:37.36 ID:cz+u61Nv0
 
( ・∀・)「ドッキリなんですよ」


きょとんとした2人の顔があった。それもそのはずだ。
突然こんな事を言われても、何が何だかわからないだろう。


( ・∀・)「よくある話です。バラエティ番組とかで、恐怖感を煽るような演出を入れるのは」

从 ゚∀从「それがこの傷と何の関係があんだよ」

( ・∀・)「ギコさんです。ギコさんがこの傷をつけたんですよ」

(`・ω・´)「……なるほどな」


シャキンは気がついたらしい。
ハインさんはまだわかっていないらしく、僕とシャキンを交互に見渡している。


( ・∀・)「ほら、さっき動物の足跡を見つけたでしょう?
      あれもそうです。僕たちを怖がらせる為の演出なんです。
      その証拠に、ほら。人がつけたような位置にあるでしょう?」


納得したようにハインさんが頷いた。
同時に顔を赤くし、声を荒げる。



73 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 19:39:43.10 ID:cz+u61Nv0
 
从#゚∀从「あの野郎ふざけやがって……」

(`・ω・´)「俺たちを怖がらせる為に、今回肝試しに誘ったんでしょうね」

从 ゚∀从「ひょっとしてくじ引きもやらせか? しぃとペアになったしな」

( ・∀・)「かもしれませんね」


ギコさんとしぃさんは、高校時代からの恋人同士である。
サークル内でも有名な熱々カップル。学校で見かける時は、いつも2人一緒だ。


从 ゚∀从「ち……このまま帰るのも面白くねえな」

(`・ω・´)「とりあえずルート通りに回りましょうか。後で聞けばいいし」

从 ゚∀从「だな」

( ・∀・)「……」


種が分かれば何も怖い事は無い。
僕たちはレストランを抜け、最上階を目指した。



75 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 19:47:56.83 ID:cz+u61Nv0
 







エレベーターは使えないので、階段で最上階を目指す。
運動不足がたたり、最上階に着く前に息切れを起こした。
そんな僕に構わず、2人はすたすたと進んでいく。
シャキンはともかく、女のハインさんに体力で負けるとは、ちょっと情けない。

最上階に着くと、1001の部屋番号を探した。
スウィートルームが並ぶ階なので、部屋の感覚が他の階よりずっと広い。
1001は、突き当たりの部屋だった。

ドアが外れている。中の様子は、レストランを越える悲惨さだった。
スプリングが飛び出したベッド。首一枚で繋がっているカーテンは、ただの布きれに等しい。
一歩歩く度に埃が舞う。部屋中にどんよりとした空気が漂っていた。



77 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 19:54:26.59 ID:cz+u61Nv0
 
从 ゚∀从「スプレー貸せ」

(`・ω・´)「うぃ」


渡されたスプレーを手に、しゃかしゃかと振る。
ハインさんは大きな円を描いた。緑色の円が、何かの魔法陣に見え、不気味だった。


从 ゚∀从「あとは……」

( ・∀・)「中庭です。西側の階段から」

从 ゚∀从「楽勝じゃねえか。全く怖くねえよ」

(`・ω・´)「よくいうよ……」


ハインさんのローキックが、シャキンのすねに当たる。
苦痛に歪む顔を見て、ハインさんが笑う。結構良いコンビなのかもしれない。

部屋を出た後、傍にあった階段を下りていった。
懐中電灯の明かりを下に向け、注意して進んでいく。
中庭を抜けた後は、ゴールまで一直線だ。確かに楽勝である。
ギコさんなら、もっと手の込んだ仕掛けをするのかと思ったが。



78 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 20:01:17.22 ID:cz+u61Nv0
 







階段を下りると、右手側に中庭への通路があった。
中庭は、おもての庭と比べると狭い感じがした。
それは四方を囲まれているからかもしれない。
生い茂った雑草が、その感覚を後押ししているように思われる。
それと何となく、嫌な感じがした。まるで、牢屋みたいだと、思ってしまったからだ。


从 ゚∀从「北側、だっけか?」

(`・ω・´)「うぃ。たぶんあれっす」


目的のドアはすぐに見つかった。
僕たちは背の高い草を避け、そのドアを目指した。
その間、僕は懐中電灯の光を振って、周りの様子を確かめていた。
もしかしたらギコさんが、何か仕掛けているかもしれないとふんだからだ。



80 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 20:09:00.77 ID:cz+u61Nv0
 
( ・∀・)「!」


その時人影のようなものがみえた。
一瞬ぎくっとなったが、全く動いていない。

どうやら中庭の銅像のようだ。
考える人、と似ているポーズで、石の台座の上に静止している。
他にも何か無いかと光を巡らせたが、目につくものは無かった。








北側のドアを抜け、最初のスタートを目指し、廊下を歩いていた。
正直な話、拍子抜けという感じだ。僕は何をびくついていたのだろうか。


从 ゚∀从「はい、ゴール」


カウンターの前に戻ると、ハインさんが床に腰を下ろした。僕とシャキンも同じようにする。
あと二組が戻れば、肝試しは終わりだ。旅館に戻って飲み会が始まる。
僕はそれが楽しみで、体がうずいた。



81 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 20:13:52.28 ID:cz+u61Nv0
 
从 ゚∀从「ギコの野郎は一発ぶんなぐらねえとな」

(`・ω・´)「手伝いますよ」

从 ゚∀从「よぉーし!」


ギコさんが不憫でたまらなかった。
よくよく考えれば、僕たちを楽しませる為の仕掛けともいえる。
まあ騙されるというのは、どんな形であれ癪なのだが。

ギコさんたちが戻ってきたのは、ちょうど五分後の事だった。
戻ってくるなり、ハインさんの鉄拳が飛んだ。


(;゚Д゚)「な、何すんだよ!?」

从 ゚∀从「自分の胸に聞きな」

(;゚Д゚)「訳分かんねえ……」

( ・∀・)「……?」


何か変だった。ギコさんは、本当に何も知らないように見える。
ハインさんがいくら問い詰めても、知らないの一点張りだった。
しぃさんとシャキンが止めるまで、ハインさんはずっとギコさんに絡んでいた。



83 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/14(月) 20:21:26.86 ID:cz+u61Nv0
 



背筋が凍るような絶叫が聞こえたのは




      それからさらに五分後の事である



壱の禍 『 始 』 完


続く


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