24 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/26(土) 14:28:39.72 ID:cvMxCUfc0
 
('、`*川「皆さん、こちらをご覧下さい」


テレビの中で、マイクを持ってリポートする若手のリポーター。
綺麗に整った顔が、緊張に歪んでいた。

周りには大勢の野次馬と、他局の報道陣が集まっている。
人をかきわけながら、リポーターとカメラは悲劇の中心地へ近づいていった。


('、`*川「あそこです!」


リポーターが指さした先、断崖絶壁に犬が宙づりになっている姿があった。


(,,;Д;)「俺のわんぽがああああああ!!!」


崖の下、警察や消防隊員に囲まれて、大絶叫している男がいる。
犬の飼い主だ。



28 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/26(土) 14:32:11.27 ID:cvMxCUfc0
 
('、`*川「インタビューしてみましょう。こんにちわ飼い主さん」

(,,;Д;)「こんちわああああ!!!」

('、`*川「大変な事になりましたが、現在の心中は?」

(,,;Д;)「私のぉぉぉぉお墓のぉぉぉまぁぁえでぇぇぇ!」

('、`*川「泣かないでくださぁぁいぃぃぃ! とても混乱しておられる模様です」


絶体絶命の犬。しかし助けようにも、下手に犬を刺激すると落下しかねない。
どうすることも出来なかった。救急隊員は、諦めてPSPに熱中している。


(,,゚Д゚)「ん?」

('、`*川「あれは……?」


その時、崖の上に何かが見えた。



31 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/26(土) 14:35:49.79 ID:cvMxCUfc0
 

野次馬たちが、突如現れた何かに向かって口々に叫ぶ。


「鳥だ!」

「飛行機だ!」

「いや、違う……あれは……」




     (´・ω・`)


「「「ハードボイルドだ!!!」」」



第3話「ハードボイルドは例え動物が相手でも命をかける」



35 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/26(土) 14:40:51.74 ID:cvMxCUfc0
 
('、`*川「何という事でしょうか! この危機的状況に、救世主が現れました!」


ハードボイルドは野次馬たちに向かって親指を立てる。
わっと歓声が沸いた。


(,,゚Д゚)「やったぜ! ハードボイルドが来てくれたらもう大丈夫だ!」

「ククク……それはどうかな」

(,,゚Д゚)「誰だ!?」

「野次馬Dさ……特に誰って事は無いぜ」

(,,゚Д゚)「ああ……そうなんだ」


野次馬Dは、口の端を持ち上げて笑うと、飼い主をあざ笑うように言った。


「この崖は恐ろしく脆い。少しでも力を加えたら、あの犬は真っ逆さま」

(;゚Д゚)「う……」

「いくら奴がハードボイルドでも、助けるのは不可能ってもんさ」



40 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/26(土) 14:46:53.89 ID:cvMxCUfc0
 
('、`*川「それでもハードボイルドなら……ハードボイルドならきっとなんとかしてくれる!」

「ふん……つたない希望にしがみつく。それが人間というものなのかい?」

('、`*川「お前顔無い癖に言う事は大ボス並だな」

(,,゚Д゚)「お、おい、見てみろよ!」


飼い主が見上げている先で、ハードボイルドが命綱をつけて崖を下りようとしていた。
ハードボイルドは自らの命をかけて、犬を救おうとしているのだ。
犬一匹の為に命をかける。それがハードボイルド。誰よりも優しい生き物なのだ。


  |
  |
(´・ω・`)



(,,;Д;)「うう……たった命綱一本でこの崖を下りるなんて……それも他人の俺の、飼い犬の為に……」

('、`*川「飼い主さん。それがハードボイルドというものなのです」



42 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/26(土) 14:49:57.99 ID:cvMxCUfc0
 
「認めないぞ……ハードボイルドなんて俺は認めない!」

('、`*川「黙っていて下さい! あの犬が助かるかミンチ肉になるかの瀬戸際なんですよ!」

(,,゚Д゚)「リポーターなんだから言葉を選んで欲しかった……」


ハードボイルドは、するすると崖を下りていく。
犬が宙づりになっている所まで、あと少しであった。


  |
  |
(´・ω・`)


  |
  |    (゚<゚ ) カーカー
(´・ω・`)



('、`*川「あ……」

(,,゚Д゚)「カラス……」



47 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/26(土) 14:53:51.62 ID:cvMxCUfc0
 
  |
  |(゚<゚ )カーカーシネー
(´・ω・`)


  |
  * ブチ
(´・ω・`)



('、`;川「ああああああああ!」

(;゚Д゚)「切れた! 切れた! ていうかあのカラス死ねって言った!」


命綱が切れ、ハードボイルドは空中に投げ出された。
誰もが終わりだと思った。しかし、ハードボイルドはここからが違う。


「な……馬鹿な!!!」

('、`*川「嘘……ありえない!」

(,,゚Д゚)「おおおおおお!?」



54 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/26(土) 14:58:26.01 ID:cvMxCUfc0
 

(゚<゚; )
   ∩
   (´・ω・`)


「「「カラスに掴まってるぅぅぅ!!!」」」


大自然の脅威すら味方につける事が出来る。
これぞ真のハードボイルドなのだ。
ハードボイルドとカラスは、ゆっくりと降下していった。
無事に犬の元に辿りつき、手を差し伸べる。


(´・ω・`)「さあ、おいで」

▼・ェ・▼クゥーン

(´・ω・`)「怖がらないで。ただのハードボイルドさ」



60 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/26(土) 15:03:52.32 ID:cvMxCUfc0
 
▼・ェ・▼クゥーンクゥーン

(´・ω・`)「ククーンクゥクゥーン」

▼・ェ・▼「クークゥクー?」

(´・ω・`)「クンクークゥゥ」

▼・ェ・▼「クー!」


言葉が通じたのか、彼らは心を通わせた。犬がハードボイルドの胸に飛び込む。
助かった。誰もがそう思った。しかし、大自然の驚異が再び牙を剥く。



(゚<゚#)
   ∩
   (´・ω・`)
       ∪
    ▼・ェ・▼



65 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/26(土) 15:05:55.58 ID:cvMxCUfc0
 

(゚<゚#)彡 バタバタバタバタ
   ∩
   (´・ω・`)
       ∪
    ▼・ェ・▼



(゚<゚ )

   ∩
   (´・ω・`)  <あ
       ∪
    ▼・ェ・▼



(゚<゚ )



   ∩
   (´・ω・`)  <あーあ……
       ∪
    ▼・ェ・▼



71 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/26(土) 15:11:36.86 ID:cvMxCUfc0
 
ハードボイルドの重みに堪えかねたカラスが、彼らを振り落とした。
息を呑む野次馬。今度こそは駄目かと思った。




駄目だった。彼らは下の地面に激突した。
落ちた衝撃で粉塵が舞い上がり、視界を奪う。


('、`;川「きゃあああああ!」


リポーターの悲痛な叫びが全国に届けられる。
救急隊員が急いで彼らに駆け寄った。


「……な、何!?」


しかし、そこにあったのは、ミンチ肉では無かった。


  ▼・ェ・▼
 ⊂(´・ω・`)⊃


「「「助かってる! しかも犬をかばって!」」」



74 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/26(土) 15:17:04.07 ID:cvMxCUfc0
 
彼らが何故助かったか説明しよう。


 ▼・ェ・▼
⊂(´・ω・`)⊃
         空気抵抗
  ↑↑↑風


こんな感じだ。


(,,゚Д゚)「わんぽー!!!」

▼・ェ・▼「クゥーン……」


('、`*川「ご覧下さい。無事生還した犬と飼い主の感動の対面です」


仕事を忘れていたリポーターも、笑顔でリポートを始める。
その光景を、野次馬Dは遠くから見ていた。


「へ……俺の負けだぜ、ハードボイルドさんよ」


そう言い残し、彼はその場から離れていった。



78 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/26(土) 15:19:51.29 ID:cvMxCUfc0
 
('、`*川「今回の救出劇には、一人のハードボイルドが多大な貢献をしてくれました。
     今からインタビューの方を行いたいと思い……あれ?」


ハードボイルドは、既に影も形も無かった。
犬の命が助かれば、それで満足なのだ。

欲しいのは名声ではない。欲しいのは賛辞の言葉ではない。
ハードボイルドが欲しているのは、誰もが納得する秩序ある世界のみ。


それが、ハードボイルドなのだ。



('、`*川「また……会えるよね」


済みきった青空に、彼女は呟いた。





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