1 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/26(土) 13:58:05.94 ID:cvMxCUfc0
 
( ゚∋゚)「犯人に告ぐ! 武器を捨てて大人しく投降しなさい!」


銀行前は、警察と野次馬がごった返していた。
その中心に、拡声器を使って大声でまくしたてる警部が一人。
彼は銀行に立て籠もった犯人に説得を試みていた。

  _
(#゚∀゚)「うるせえ! さっさと金と車を持ってこい」


窓から顔を出した犯人は、マシンガンで威嚇射撃をしてきた。


( ;゚∋゚)「うお! マジかこいつ!」


慌ててパトカーの影に隠れる。どうやら説得は無理そうだ。
かといって人質もいるので、突入は出来ない。



3 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/26(土) 13:59:11.25 ID:cvMxCUfc0

( ゚∋゚)「うーん困った……」


八方ふさがりであった。時間が長引くと人質の命が危ない。
もはや要求を呑むしかないと、警部が諦めたその時。


「どうやら、俺の出番のようだな」


野次馬の中から、レザージャケットに身を包んだ男が現れた。


( ;゚∋゚)「あ、貴方は……!」

「ククク……あとは」



(´・ω・`)「このハードボイルドに任せな」



第1話「ハードボイルドはいつも突然現れる」



5 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/26(土) 14:01:40.40 ID:cvMxCUfc0
 
「ハードボイルドだ!」

「ハードボイルドが来てくれたぞ!」

「凄いハードボイルドだ!」


野次馬達が嬉々として声をあげる。
歓声に応える事はしない。彼はハードボイルド。
いつだってクールなのだから。

警部から拡声器を奪い、ハードボイルドな男は言った。


(´・ω・`)「犯人に告ぐ! 大人しく武器を捨てて投降しなさい!」


全く同じセリフで説得を試みる。
これぞハードボイルド。諦めない心が武器となるのだ。



6 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/26(土) 14:03:12.42 ID:cvMxCUfc0
  _
(#゚∀゚)「黙れ!」


犯人はハードボイルドに向かってマシンガンを撃った。
ハードボイルドは逃げる事もせず、犯人を睨み付ける。


(´・ω・`)「お前に質問がある!」
  _
( ゚∀゚)「……?」



(´・ω・`)「コーヒーに砂糖は何杯入れる?」



質問の意図がわからず、場がざわめいた。



9 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/26(土) 14:05:46.18 ID:cvMxCUfc0

「俺……三杯かな」

「俺も……」

「私女だけど、砂糖は四杯入れるよ」


先に質問に答えたのは野次馬たちだった。

  _
( ゚∀゚)「砂糖か……へへ。俺は甘いのが駄目でな。一杯しか入れないぜ」


再び場がざわめく。コーヒーに砂糖を一杯しか入れない。
その事実は簡単に信じられるものでは無かった。
しかし、ハードボイルドは慌てない。



10 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/26(土) 14:06:50.37 ID:cvMxCUfc0
 
(´・ω・`)「ぬるいわ」
  _
( ;゚∀゚)「何だと?」



(´・ω・`)「俺は、砂糖を入れずに飲めるぜ」



ハードボイルドはブラックコーヒーを飲む。
それがハードボイルドで在るが故のさだめなのだ。


「砂糖を入れずに……だと?」

「何てハードボイルドなんだ!」

「全く、あの野郎ハードボイルド過ぎるぜ……」



11 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/26(土) 14:10:42.83 ID:cvMxCUfc0
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( ;゚∀゚)「くそ……俺は絶対に投降しないぞ!
     さっさと金を持ってくるんだ! 人質を殺すぞ!」


あまりのハードボイルドさに、犯人の興奮は高まる。
ハードボイルド的に考えて、このままでは人質の危険が危ない。


(´・ω・`)「では質問だ」
  _
( ;゚∀゚)「またかよ!」



(´・ω・`)「お前……替え玉は何回する?」



「俺……一回だな」

「私はしないわ……」

「俺多い時で三回……」



13 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/26(土) 14:13:48.85 ID:cvMxCUfc0
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( ;゚∀゚)(……奴のペースに呑まれてはいけない)
  _
( ゚∀゚)「俺は五回だ!」


ハードボイルドさで負ける訳にはいかない。
犯人は嘘をついた。しかし、ハードボイルドはさらに上をいっていた。


(´・ω・`)「俺も五回だ」
  _
( ゚∀゚)「ほう……俺と同じか」

(´・ω・`)「だが、替え玉はした事がない」
  _
( ;゚∀゚)「な……!」



(´・ω・`)「俺はいつも、同じものを五回頼む」



場が静まりかえった。その男の、あまりのハードボイルドさに。
犯人は、もはや対抗出来るような相手では無いと悟った。
マシンガンを降ろし、両手を上げる。



15 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/26(土) 14:15:04.10 ID:cvMxCUfc0
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( ゚∀゚)「俺の負けだ……投降しよう」


事件発生から1時間23分。
ハードボイルドのおかげで、事件は無事に幕を下ろした。
犯人逮捕の際、ハードボイルドの姿は既に無かった。
ハードボイルドは現れる所も、去る所も見せてはいけないのだ。

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( ゚∀゚)「警部さん……」

( ゚∋゚)「何だ?」
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( ゚∀゚)「俺も……あんなハードボイルドになれるかな」


警部は優しく笑って、そっと背中を叩いた。
感極まって、犯人が落涙する。
それを見ていた野次馬たちの目にも、熱い涙が浮かんだ。





第2話

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