1 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 18:57:03.40 ID:NLU4KEF60
 
地図に示されている道順に従い、路地裏を歩く。
そこは昼間でも薄暗かった。
通りにはたくさんの人がいたが、その路地裏を歩く者はその男一人だった。


('A`)(……ここか)


何度目かの角を曲がった先、くすんだ灰色をしたビルの裏口が、目の前に現れた。
男は重い金属のドアを開けて、中に入った。
入ってすぐの所に、女が一人、男を待っていた。



2 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 19:00:16.50 ID:NLU4KEF60

川 ゚ -゚)「……三階です」

('A`)「……はい」


女は無表情だった。
男は女の横を抜けて、階段を上っていった。
階段の壁には、落書きがしてあった。
『神はいなかった』そう書かれていた。


('A`)「……」


三階につくと、目当ての部屋を探し始めた。
部屋は三つあり、その内の二つはドアが開いていなかった。



3 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 19:01:28.03 ID:NLU4KEF60

最後のドアの前で、男はそっと携帯を開いた。
待ち受け画面には、笑顔で映る夫婦と、その娘らしき人物が映っていた。


('A`)(必ず、帰ってくるからな)


男は深呼吸を一つしてから、ドアノブに手をかけた。



4 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 19:01:47.15 ID:NLU4KEF60


‡ ゲームが ‡ 始まる ‡ ようです ‡


6 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 19:05:48.03 ID:NLU4KEF60
 
部屋の中は、むき出しのコンクリートに囲まれた、寂しい場所だった。
真ん中にぽつりと、机と椅子が二つ、置かれている。


( ;^ω^)「……」


椅子には小太りの男が一人、座っていた。
その後ろにもう一人、黒服の男がいた。

  _
( ゚∀゚)「ドクオさん、ですね」

('A`)「はい」


返事をすると、男はもう一つの椅子のところへ行き、少しだけ後ろに引いた。
ドクオは『座れ』という意味と受け取り、重い足取りで椅子まで歩いていった。



8 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 19:09:01.90 ID:NLU4KEF60
 
ドクオが椅子に座るのを確認してから、黒服の男は言った。

  _
( ゚∀゚)「私はジョルジュと言います。どうもよろしくお願いします」


黒服の男、ジョルジュは、小太りの男に視線を送った。
男はうろたえながらも、ジョルジュの意を汲んだ。


( ;^ω^)「僕はブーンです……」


震えた声で、彼は言った。
ジョルジュの視線がドクオに移った。ドクオは小さく頷いた。


('A`)「ドクオです。今日はよろしくお願いします」



9 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 19:12:00.67 ID:NLU4KEF60

沈黙が流れた。
ドクオとブーンは、向かい合って座っている。
どこに視線をおけばいいのか、二人とも迷っていた。

  _
( ゚∀゚)「ゲームのルールを、簡単に説明致しましょうか」


ブーンは椅子を引いて、ジョルジュの方を振り返った。
ネクタイを直しながら、ジョルジュは先を続けた。

  _
( ゚∀゚)「といっても、単純な事です。『生き残った者に、一億』。
     事前に聞かされているでしょうから、ご存じですよね」


応える代わりに、二人は俯いた。
その顔は二人とも青白かった。



10 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 19:19:21.78 ID:NLU4KEF60

ドクオとブーンは、超多重債務者だった。どれだけ働いても、返せるのは利子だけ。
そんな状態にあっても、二人は金を借りる事をやめなかった。
病気だったといえるかもしれない。少なくとも、正常とはいえない精神で二人とも生きていた。


(;'A`)「……」

( ;^ω^)「……」


首をくくるしか無い。二人とも、そう考え始めていた。
そんな時、VIP金融が声をかけてきた。
多重債務を一本化し、さらにある程度金を工面してやると。

それには条件があった。
死の危険を伴う『ゲーム』に参加する事、であった。



13 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 19:22:42.58 ID:NLU4KEF60
  _
( ゚∀゚)「突然ですが」


ジョルジュは懐に手を入れ、金属の物体を二つ取りだした。
二人とも初めて見る物である。それは、リボルバー式拳銃だった。

  _
( ゚∀゚)「ロシアンルーレット、というものをご存じでしょうか?」


二人は黙って首を縦に振った。

  _
( ゚∀゚)「そうです。あの有名な、拳銃を使ったゲームです。
     通常は一つの拳銃を用いて行います。
     二人で行えば、必ず一人は助かる。そういうゲームです」



14 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 19:25:49.15 ID:NLU4KEF60
  _
( ゚∀゚)「で、す、が」


ジョルジュはリボルバーを、二人の前に一つずつ置いた。
二人は奇妙な物を見る目で、リボルバーを見つめていた。

  _
( ゚∀゚)「二つで行えば、両方死ぬ事もあり得る。わかりますか?」

(;'A`)「……」

( ;^ω^)「……」
  _
( ゚∀゚)「……」


ジョルジュは二人の返事を待っているようだった。
重い沈黙が流れる。空気が固まってきたように感じてきた。



16 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 19:29:28.06 ID:NLU4KEF60

(;'A`)「二人で」


絞り出すような声で、ドクオが言う。


(;'A`)「……自分の拳銃を、使って、順番に、一回ずつ、引き金を引く
    例え相手が死んでも、まだ、撃っていなかったら、撃つ。その時、自分も死ぬ可能性が、ある」
  _
( ゚∀゚)「……」


ジョルジュは薄く笑った。
年齢不詳の顔が、少しだけ人なつっこくなった。



17 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 19:33:07.87 ID:NLU4KEF60
  _
( ゚∀゚)「弾を入れます」


今度はポケットから、銃弾を二つ取りだした。
二人の前に置いてあるリボルバーを持って、弾を装填する。

装填し終わったら、弾倉を回転させ、元の場所に戻す。
それを二回繰り返したら、ジョルジュは机の横に立ち、二人の顔を見比べた。

  _
( ゚∀゚)「……それと、ゲームは、もう始まっています」


部屋の中は無音が支配していた。
ドクオとブーンには、自分の心臓の鼓動だけが聞こえていた。

その時ドクオは、部屋に窓が無い事に気がついた。
何故だろうと考えていると、ジョルジュが喋った。



19 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 19:38:22.83 ID:NLU4KEF60
  _
( ゚∀゚)「この部屋は、完全防音になっています。例え爆弾が爆発しても外には聞こえません」

(;'A`)「……外の奴らは、この部屋で何が起こっても、気付かない。そういう事か」
  _
( ゚∀゚)「そうです。反応してくれてありがとうございます。
     あ、ちなみに、雑談は有りです。制限時間もありません。
     なるべく早く済ますようにと、下にいた女性に言われていますが……」


男の口ぶりは、どこか奇妙な感じがした。
それは『下にいた女性』という表現だった。

このゲームはVIP金融が関わっている。
当然ジョルジュと、下にいた案内人は、VIP金融の者だろう。
二人はそう思っていた。
しかし『下にいた女性』などという表現を使う辺り、二人は知り合いでは無い気がした。



20 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 19:42:09.50 ID:NLU4KEF60

(;'A`)「……!」

( ;^ω^)「……」


ドクオがリボルバーから目を離したとき、ふとブーンと目が合った。
気まずくて、ドクオはすぐに目を逸らした。
このゲームで自分が助かるには、目の前の者の死を祈るほか無いのだから。


( ;^ω^)「……あの」

(;'A`)「え?」


ドクオは目を丸くして、ブーンを見た。
話しかけられるなんて、全く想定していなかった。



21 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 19:45:24.58 ID:NLU4KEF60

( ;^ω^)「……おいくつでしょうか」

(;'A`)「……」


平凡な質問だった。いつもの状況なら、何の抵抗もなく、即座に答えられるものだ。
だが今は違う。全てに警戒しているドクオは、簡単には喋らなかった。


( ;^ω^)「……僕は28です。たぶん、貴方の方が年上だと思うのですが」


ドクオが喋らないとわかると、ブーンは一人で喋り始めた。
無職である事、ギャンブルがたたって借金まみれになった事、親に勘当された事。
聞けば聞くほど、ブーンは駄目人間だった。



23 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 19:48:43.20 ID:NLU4KEF60

( ;^ω^)「……」

(;'A`)「……」


ブーンの話が終わった。
部屋には、今までよりずっと重い沈黙が流れた。


(;'A`)「……俺は」


沈黙に堪えきれず、ドクオが話し始めた。
大体は、ブーンと同じであった。
違うのは、彼が結婚している事。子供がいるという事。
ブーン以上に、せっぱ詰まった状況であるという事だ。



26 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 19:53:47.65 ID:NLU4KEF60

( ;^ω^)「……ジョルジュさん」
  _
( ゚∀゚)「何でしょうか」

( ;^ω^)「……途中で辞退する事は出来ませんか?」


ジョルジュの張り付いたような笑みが、一瞬強ばった。
表情の変化に、ブーンとドクオはびくっと肩を揺らした。
しかしすぐに元の顔に戻り、ジョルジュは答えた。

  _
( ゚∀゚)「可能ですよ。ただし一人でも抜ければ、ゲームは中止になります。
     賞金はお流れ。あなた方のこれからの人生も、お流れになりますね」


言葉の裏に、強烈な悪意を感じた。
『続けろ』と彼は言っている。二人はそう思った。



27 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 19:56:46.78 ID:NLU4KEF60

(;'A`)「……」

ドクオは何としても金が欲しかった。
彼の借金は、今や賞金を全額当てても返せない程になっていた。
それでも、一億が手に入れば、そこから先は何とかなる。
彼はそう考えていた。だから、一億が欲しかった。


(;'A`)「辞退、する、つもりですか」


言葉の端々で、荒い息が漏れた。
少しだけ考える素振りを見せたが、ブーンははっきり言った。


( ;^ω^)「しません」


二人は見つめ合った。そして二人とも悟った。
自分たちは崖の上に立たされている。そして今、選別が行われていると。



30 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 20:01:40.57 ID:NLU4KEF60
  _
( ゚∀゚)「勝ち組と、負け組。人間は常にそのどちらかの区分で生きている。
     あなた方は、今現在どちらにいますか?」

(;'A`)「……」

( ;^ω^)「……」
  _
( ゚∀゚)「どこかで覚悟しなければいけないのです。勇知を持った決断が必要なんですよ。
     逃げ続けていれば、いずれは必ずゴミに埋もれた人生を送る事になる。
     そしてゴミの中に、歪んだ安らぎを見いだし、その者はゴミと化す。
     今あなた方は、ゴミの中から抜け出すチャンスを与えられたのです」


ジョルジュの冷たい笑みが、二人の焦燥を煽った。
空気が張り詰めてくる。そして、ぴんと張った糸が切れたように、動き出した者がいた。



31 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 20:04:34.31 ID:NLU4KEF60

(;'A`)「お、れ、は……」


膝の上で固まっていた手が、机の上に伸びた。
リボルバーを掴み、頭の横に持っていく。
ブーンは呆けた顔で、じっと彼を見つめていた。

  _
( ゚∀゚)「こめかみを撃つと、失敗する可能性があります。
     確実に死ぬには、こう」


ジョルジュは人差し指と親指をぴんと立て、銃の形にした。
銃口の代わりの人差し指を、口の中に入れる。


(;'A`)「か、ち、ぐ、み、に……」


ジョルジュがやったのと同じように、ドクオは拳銃をくわえた。



33 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 20:09:39.61 ID:NLU4KEF60

カチン、という撃鉄が空の弾倉を撃った音がした。
ドクオは即座に銃を机の上に置き、椅子から立ち上がった。
顔中が脂汗で濡れている。


(;'A`)「ああ……ああ……助かった……助かった……!」

( ;^ω^)「……」

(;'A`)「お前の番だぞ! 早くしろ! 早く!!」

( ;^ω^)「うう……うぅ……」


ドクオはあまりの興奮で、もう座っていられないようだった。
ブーンを指さして、早く早くと責め立てる。
するとゆっくりと、非常に緩慢な動作で、ブーンがリボルバーに手を伸ばした。



34 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 20:13:32.35 ID:NLU4KEF60

(;'A`)「……」

( ;^ω^)「……あ」


緊張のあまり、手が滑って銃を落とした。
三人ともびくっと体を揺らした。
ブーンは泣きそうな表情で、床に落ちた銃を拾う。
引き金に指をかけ、自分の口の中に持っていった。


( ;^ω^)「……」

(;'A`)「……」


くわえた銃に、ブーンの歯がかちかちと当たっている。
顎や手だけでなく、今やブーンは全身を震えさせて、死の恐怖に怯えていた。



36 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 20:18:15.72 ID:NLU4KEF60

(;'A`)「……」


ドクオは、もう撃てなんて言えなくなっていた。
ブーンの想像を絶する恐怖が、机を挟んで伝わってきていた。

  _
( ゚∀゚)「もうすぐ夜になりますね」


まるで蚊帳の外という風に、のんびりした口調でジョルジュが言った。

  _
( ゚∀゚)「ゲームが終わったら、すぐに金が手に入ります。
     近くに美味しいお店があるんですよ。イタリアンのお店なんですけどね。
     良かったら場所を教えますよ。パスタも美味しいんですが、私が一番好きなのは……」


ジョルジュの話は、全く二人の耳に入ってこなかった。
ただ一つだけ伝わったのは、死んだら何も食べられなくなるという、当たり前の事実だった。



37 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 20:22:59.42 ID:NLU4KEF60
  _
( ゚∀゚)「……自殺を考えていたのでしょう?」

(;'A`)「え……」

( ;^ω^)「……」


ドクオはブーンを、ブーンはドクオを見た。
その事でジョルジュのセリフが、二人を指しての事だとわかった。

  _
( ゚∀゚)「死んだら、終わり。当然ですよね。小学生だって、いや保育園児だって知っている。
     仮にこのゲームが中止になるとしましょう。
     そしたらあなた方、どうやって生きていくおつもりなんです?」


芝居がかった仕草で、二人をからかうような口調だった。

  _
( ゚∀゚)「後がないのは、百も承知でしょう。今日、この場に来ている時点で、選択肢なんて無いのですよ。
     早いか、遅いか。それしかありません。その中で、何を迷っておられるのですか?」



39 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 20:27:46.99 ID:NLU4KEF60

( ;^ω^)「……」


哀願するような目で、ブーンはジョルジュを見る。
ジョルジュはそれを真っ向から、柔らかくはねのけた。

  _
( ゚∀゚)「死は怖くない。死を見据えた人生こそが、何よりも恐怖な事です。
     自ら死を受け入れようとしたあなた方なら、きっとわかるはず……」


撃鉄が叩く音で、ジョルジュの言葉は途切れた。
ブーンの手から、リボルバーがこぼれ落ちる。


( ;゚ω゚)「ハァ――ハァ――……」


ブーンは椅子から転げ落ちた。目にはうっすらと涙を浮かべている。



41 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 20:31:58.35 ID:NLU4KEF60
  _
( ゚∀゚)「……お二方、どちらも助かったようですね」

(;'A`)「……」

( ;゚ω゚)「ハァ――……や、やった、お……」

(;'A`)(……ちくしょう)


これでロシアンルーレットは続行される事となった。
ドクオにとって、再び死の恐怖が巡ってきた事になる。
それはブーンにとっても同じ事であった。

  _
( ゚∀゚)「まあ、のんびりやりましょうよ」


ジョルジュに応える者はいなかった。
部屋にはブーンの荒い息だけが響いていた。



43 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 20:43:29.70 ID:NLU4KEF60

――――――――


ブーンが引き金を引いてから、一時間が経過していた。


(;'A`)「……」

( ; ω )「……」


ブーンは机の上に突っ伏して、ぴくりとも動いていない。
そんな彼を、ドクオは力の無い目で見つめていた。

  _
( ゚∀゚)「……」


ジョルジュは基本的に何も喋らなかった。
椅子に座っている二人と同じように、動かずにじっと待っている。



45 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 20:48:32.15 ID:NLU4KEF60

(;'A`)「……」


ただ時間だけが過ぎていった。


( ; ω )「……」


その内二人は、ゲームを放棄して、家に帰りたいと思うようになってきた。

  _
( ゚∀゚)「辞めたいですか?」


まるで心を見透かしたかのようなジョルジュの声が、二人に降りかかった。

  _
( ゚∀゚)「ゲームを辞めて、一億円を諦めて、家にノコノコと帰るおつもりですか?
     目の前にある……手を伸ばせば届く距離にある宝を諦めて」



48 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 20:52:11.64 ID:NLU4KEF60

(;'A`)「何のために、こんな事をやらせるんだ」


ドクオは俯いたまま、低い声で言った。
力が入っておらず、今にも消え入りそうな声だった。

  _
( ゚∀゚)「理由を知って、どうなさるおつもりです?
     貴方の何かがそれで変わるとでも?」

(;'A`)「……いや」
  _
( ゚∀゚)「考えている事はわかります。
     貴方はただ何かと理由をつけて、ゲームから逃げようとしているだけだ。
     本質から目を逸らし、保身に逃げようとしているだけ。そうでしょう?」

(;'A`)「……もういい」



49 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 20:56:13.44 ID:NLU4KEF60

遂にドクオは、ゲームを辞める決意を固めた。
家に帰って、別の手段を考えようとした。


( ;ω;)「僕は……」


いつの間にか、ブーンは顔を上げていた。
目から惜しげもなく涙を流し、震える手で銃を握っている。


( ;ω;)「もう……逃げたくない……」


銃を顔の前まで持ってきた。
唇が細かく揺れている。流れ出た涙が横を通り、顎からしたたり落ちた。


( ;ω;)「逃げ……ない……だお!」



51 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 20:59:13.50 ID:NLU4KEF60

かじりつくように銃をくわえた。
ドクオもジョルジュも、その様子を呆気にとられて見ていた。
間もなく、乾いた鉄の音が聞こえてきた。


( ;ω;)「……」


全身がぐにゃっと脱力し、ブーンは銃を床に落とした。
天井を見上げ、狂ったような顔で薄ら笑っている。

  _
( ゚∀゚)「勇敢です。戦う者の姿勢は、いつ見ても清々しいものです」


ジョルジュの言葉は、ブーンを褒め称える反面、ドクオを責めていた。
その事がわかるから、ドクオは怒りを覚えた。



56 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 21:05:26.52 ID:NLU4KEF60

(;'A`)「何なんだよ……何なんだよちくしょう!」


ドクオは目の前に転がっている鉄の塊を、鋭く一瞥した。
はぎ取るようにリボルバーをつかみ取ると、一気に口にくわえた。
しかし引き金を引けない。死を恐れる本能がそうさせてくれなかった。


( ;ω;)「撃てよ……撃ってみろよ……」

(;'A`)「ふぅ……ふう……ふぅ……ふぅ……ふぅ……」

( ;ω;)「撃てよおお!! 僕は撃った!! 撃ったお!!! 撃ったお!!!!」

(;'A`)「ひくひょお……ひくひょおお!!!」
  _
( ゚∀゚)「……」


引き金を引いた。今まで聞いたそれと同じ、鉄が鉄を叩く音がした。
銃を口にくわえたまま、ドクオは泣き出した。
ブーンはそれを見て、さらに量を増やし、泣き続けた。



58 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 21:08:17.48 ID:NLU4KEF60

――――――――


さらに時間は過ぎていった。
二巡目が終わってから、もうどのくらい時間が過ぎたか、わからなくなっていた。


('A`)「……」

(  ω )「……」


二人とも携帯電話は持っていた。しかし時間を確認する事はしなかった。
そうしてしまえば、一気に現実に戻されてしまいそうで、怖かったからだ。



59 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 21:10:11.03 ID:NLU4KEF60
  _
( ゚∀゚)「――ん」


ジョルジュがドアの方を見ていた。
その場から歩き出し、部屋のドアを開けた。


川 ゚ -゚)「……」
  _
( ゚∀゚)「……」


下にいた案内人だった。
二人は数瞬見つめ合っていたが、女の方が先に口を開いた。


川 ゚ -゚)「どのくらいで、終わりそうですか」


こちらの状況など、全く知らないような口ぶりだった。



61 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 21:14:00.68 ID:NLU4KEF60
  _
( ゚∀゚)「さあ――分かりかねます。
     六発入りの銃で、今二発目までしか終わっていませんから」

川 ゚ -゚)「……そうですか」
  _
( ゚∀゚)「急ぐんですか?」

川 ゚ -゚)「……いえ」

('A`)「……」

( ^ω^)「……」


ドクオと顔を上げたブーンは、二人のやりとりを黙って見ていた。
その視線はやがて、女に固定される。
スーツ姿の女は、年齢は分からなかったが、抜群に美人だった。



62 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 21:18:20.68 ID:NLU4KEF60

川 ゚ -゚)「お邪魔してしまったようで、申し訳ありません」
  _
( ゚∀゚)「いえ、お気遣い無く……」

('A`)「!」


その時ドクオは、女が後ろ手に隠しているものを見つけた。
端しか見えなかったが、アタッシュタイプのケースだとはっきりと分かった。


( ^ω^)「金……」


ブーンがドクオにしか聞こえない声で、小さく呟いた。
彼もそのケースに気がついているようだ。そして、ドクオと同じ事を考えている。
あのケースに、一億が入っていると。



63 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 21:22:30.89 ID:NLU4KEF60

川 ゚ -゚)「それでは私は、これで」
  _
( ゚∀゚)「はい」


女は小さく礼をした。長い髪が、さらさらと肩の上を流れた。
そのまま後ずさりして、女の方からドアを閉めた。

  _
( ゚∀゚)「気にしないで下さい。あなた方は、ゲームに集中してさえいれば良いのです」


言われなくてもそうする、と二人は思った。
ジョルジュと女のやりとりによって、二人の緊張はほぐれた。
それでも依然死の恐怖は、心臓を内側から焦がすように這い回っている。
しかしいくらか余裕が出来た分、二人の表情に生気が戻っていた。



65 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 21:29:43.35 ID:NLU4KEF60
 
('A`)「あんた……どうやってこのゲームを知ったんだ」


ドクオがいつもの調子で尋ねた。
ブーンは耳に手を当てて『電話』をポーズで示した。


( ^ω^)「携帯電話にかかってきたんですお。
      VIP金融から呼び出しを受けて、今日のゲームを教えて貰って……」

('A`)「前金は?」

( ^ω^)「貰いましたお。百万円。それがあったから、信用したんです」

('A`)「俺と同じって訳か……」


ドクオは急に煙草を吸いたくなり、ポケットに手を伸ばした。
煙草の箱を取りだしてから、ジョルジュの方に視線を送る。
ジョルジュは薄く笑っていた。ドクオは肯定だと受け取り、煙草に火をつけた。



67 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 21:33:11.42 ID:NLU4KEF60
 
( ^ω^)「あ……一本貰えますかお」

('A`)「いいよ」

( ^ω^)「……ふう」

('A`)「……」


煙が立ち上り、天井の白色灯に集まっていった。
ゆらゆらと空中をさまよう煙が、部屋に充満していく。
何となく居心地が良くなった。煙が、人と物体の境界線をぼかしていくような。
そんな不思議な感覚を、二人とも覚えていた。


( ^ω^)「最初は……」

('A`)「……」

( ^ω^)「最初は参加するつもりは無かったんです。百万円だけ貰って、逃げようかって……」



68 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 21:36:54.38 ID:NLU4KEF60

('A`)「……俺も、同じ事を考えた」

( ^ω^)「でも考えたんです。一体どこに逃げればいいのか……。
      答えは見つかりませんでしたお。今までずっと、逃げ続けていたから。
      もう、逃げる場所は無かったんですお」

('A`)「……」

( ^ω^)「……」
  _
( ゚∀゚)「……」


煙がゆれる。
ゆらゆら、ゆらゆらと。


( ^ω^)「ずっと……逃げてましたお。高校を辞めたのも、いじめが怖かったから。
      働かなかったのも、人が怖かったから。ずっと、ずっと、逃げてきたんですお」



69 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 21:39:26.56 ID:NLU4KEF60
 
( ^ω^)「行き着いた先が、ここだったんですお」


ブーンは机の上に煙草を押しつけた。
彼の話を聞き入っていたドクオは、自分の膝の上に灰が落ちているのに気がついた。


('A`)「俺もな」


灰を膝から落とした。
ブーンと同じようにして煙草をもみ消し、二本目に手を伸ばす。


('A`)「……ふう……俺も、お前と似たようなもんさ」



70 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 21:44:37.01 ID:NLU4KEF60
 
( ^ω^)「……」

('A`)「ガキの頃から、危険を回避する能力だけは優れててな。
   それで、いじめの標的にこそはならなかったが、まるで空気のような存在になった。
   誰も俺を知らないんだ。同級生だった奴も。近所の奴も。親戚だってそうだった。
   まるで最初からいなかったみたいに。俺は、生きながらに死んでたんだ」


ドクオは咳き込んだ。
その拍子に、口内に溜まっていた煙草の煙が飛び散った。
煙草を乱暴に机にこすりつけ、火を消した。


('A`)「……でも、そんな俺も、結婚出来た。
   何度目かのお見合いで、十歳年上の女に気に入られてな。
   いや、気に入られてたってのは俺の幻想だろう。
   向こうもせっぱ詰まってたに違いない……へへ」

( ^ω^)「……」



72 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 21:46:52.45 ID:NLU4KEF60
 
('A`)「……」

( ^ω^)「娘さんは、おいくつでしたっけ」

('A`)「まだ幼稚園を出てねえ」

( ^ω^)「……」

('A`)「学費を稼がなきゃってのに、俺はリストラにあっちまった。
   そこから先はお前と同じさ。借金でギャンブルをして、また借金をして……」

( ^ω^)「聞きましたお」

('A`)「耳が痛いか?」

( ^ω^)「ええ、とても」


二人は見合いながら笑った。



73 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 21:50:28.75 ID:NLU4KEF60
  
('A`)「……」

( ^ω^)「……」


そのまま数分間、彼らは黙ったまま見つめ合っていた。
共にしたのは数時間、交わした言葉はまだ数えられるくらいに少ない。
それでも二人は、お互いをまるで親友に近い感覚で見ていた。
必ずどちらかが死ぬ。そんな状況で、二人は強固な連帯感を感じていた。


( ^ω^)「じゃあ……」

('A`)「……そうだな」


二人は同時にリボルバーを握った。
今まで上の空だったジョルジュが、二人に鋭い一瞥を送った。



75 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 21:52:49.95 ID:NLU4KEF60

('A`)「ジョルジュ」
  _
( ゚∀゚)「何でしょう」

('A`)「死体はどうするんだ」
  _
( ゚∀゚)「永遠に見つからない場所に捨てられる、と聞いております」

('A`)「……そうか。そいつは良い」

( ^ω^)「最後くらい、人に迷惑かけたくないお」

('A`)「まあな」
  _
( ゚∀゚)「……」



77 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 21:54:14.96 ID:NLU4KEF60

('A`)「もしも」

( ^ω^)「……」
  _
( ゚∀゚)「……」

('A`)「……もしも、来世とかあるんだったらさ」

( ^ω^)「……」

('∀`)「もうちょい、まともな人生を送ろうぜ」

( ^ω^)「ええ。きっと」


二人は微笑み合って、引き金を引いた。



78 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 21:55:55.82 ID:NLU4KEF60
 












                          ターン――。







二つの銃声が、重なった。



80 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 22:00:18.41 ID:NLU4KEF60
 
――――――――

  _
( ゚∀゚)「……」


ジョルジュの前に、二つの肉塊が横たわっている。
一つは机に突っ伏し、赤黒い液体で机に水たまりを作っている。
もう一つは椅子に座ったまま、背もたれにぐったりと体を預けていた。

  _
( ゚∀゚)「……やった」
  _
( *゚∀゚)「やったぞ……! 俺が勝者だ……一億は俺のものだ!!」


感極まったジョルジュは、両手を振って大声で叫んだ。



84 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 22:03:46.83 ID:NLU4KEF60
 
ジョルジュはドアに駆け寄り、廊下に飛び出した。
廊下には、ケースを持ったあの女が待っていた。


川 ゚ -゚)「どうしました」
  _
( *゚∀゚)「終わりました! 二人は死にました! 俺が勝者です!」

川 ゚ -゚)「……確認します」


女はケースを片手に、部屋へ入っていった。
血にまみれた二人を一瞥すると、ジョルジュの方を向き直って言った。


川 ゚ -゚)「確かに死んでします」


ジョルジュはもう一度だけ、歓喜の声を上げた。



87 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 22:07:27.88 ID:NLU4KEF60
  _
( *゚∀゚)「いやあ苦労しました! 条件がきつくって……思い切った事は出来ませんでしたから」


ジョルジュは一人で喋り始めた。
女はケースを持って、死体がある机の向こう側まで歩いていった。
その後ろに、ジョルジュはぴったりとくっついている。

  _
( *゚∀゚)「嘘をついてはいけない。それが第一のルールでしたよね?」

川 ゚ -゚)「ええ」
  _
( *゚∀゚)「だから言葉を選ぶのに苦労しましたよ。最後に生き残った者が勝者。
     これは嘘じゃない。ではどうやって二人を殺すか。
     考えに考えました……それで思いついたのが」

川 ゚ -゚)「ロシアンルーレット」
  _
( *゚∀゚)「ザッツライっ!」



88 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 22:13:08.62 ID:NLU4KEF60
  _
( *゚∀゚)「殺し合いじゃ駄目だ。一人残る。ではどうやって二人同時に殺すか?
     最初にもらった百万円を見て、考えたんです。これで拳銃を買って、ゲームを偽れば良いと」

川 ゚ -゚)「……」
  _
( *゚∀゚)「第二のルール。命令してはいけない。これは楽にクリア出来ました。
     だって見て下さいよこの格好! このスーツ高かったんですよ!
     これは余った金で買ったんです! 中々決まっているでしょう」

川 ゚ -゚)「お似合いです」
  _
( *゚∀゚)「俺は最初から部屋にいる。そして生き残った者が勝者と説明する。
     それからロシアンルーレットの事を説明し出せば、誰だってそれがゲームだと勘違いする。
     これを思いついた時自分を天才だと思いましたよ!」

川 ゚ -゚)「……」
  _
( *゚∀゚)「まあ、そんなこんなで、第三のルール。直接自分の手で殺してはいけない、はクリアです。
     いやあ清々しい。こんな気分は産まれて初めてだ! あ、どうです?
     近くに美味しいパエリアの店があるんです。この後お暇でしたら行きません?」

川 ゚ -゚)「……いえ」



92 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 22:18:14.00 ID:NLU4KEF60
  _
( *゚∀゚)「二人は俺の事を何だと思ったんでしょうね。
     はははは! きっとゲームマスターだと勘違いしたはずだ。
     俺が参加者の一人だという事にも気がつかずに……ひゃはははははは!!!」

川 ゚ -゚)「……」
  _
( ゚∀゚)「……と、そうだ。お金お金。それに入っているんでしょう?」

川 ゚ -゚)「それ、とは、このケースの事でしょうか」
  _
( ゚∀゚)「そうですよ。一億は俺のものだ。さっさとケースを渡してくれ」

川 ゚ -゚)「良いですよ。どうぞ」
  _
( *゚∀゚)「ひひひひひ!! やった!! やった!!」


差し出されたケースをひったくるようにして、ジョルジュはケースを手に入れた。



95 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 22:21:28.40 ID:NLU4KEF60
 
川 ゚ -゚)「中をお確かめ下さい。鍵はこれです」
  _
( *゚∀゚)「よこせ!」


鬼気迫る目で鍵をもぎ取る。
その際、女の掌をひっかき、小さな傷が出来た。
女は一瞬だけ、ジョルジュを鋭く睨み付けたが、すぐに無表情に戻った。

  _
( *゚∀゚)「一億……一億……一億……!!!」


鍵を回す手が震えている。中々入らないようだ。
それでもねじ込むように鍵を入れて、くるっと一回転させた。

  _
( ゚∀゚)「一億!!!」



96 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 22:21:55.32 ID:NLU4KEF60
 











  _
( ゚∀゚)「……え?」







99 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 22:25:17.03 ID:NLU4KEF60
 
中に札束は入っていなかった。
代わりにタイマーと、それに繋がれた妙な物体が鎮座していた。


「私の条件は一つ」


女の声が遠くから聞こえた。
ジョルジュが目をやると、いつの間にか女はドアを開けて、外に出ようとしていた。


川 ゚ -゚)「急かさない事……です。びくびくしていました。
     この爆弾が、いつ私の手の中で爆発するか、わかりませんでしたから」
  _
( ゚∀゚)「……爆弾?」


タイマーの数値は、規則正しく動いていた。
しかし急速に数値が変動を始める。めまぐるしく動いていく数は、やがて零で止まった。



102 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/05/09(金) 22:27:59.97 ID:NLU4KEF60



川 ゚ -゚)「安心して下さい。ここは防音です」



ドアが、ゆっくりと閉められる。



「例え爆弾が爆発しても、外には聞こえませんから」


  _
( ;゚∀゚)「……待っ」



ドアが閉められた。タイマーが、小うるさい警告音を発している。
そして、ジョルジュは目の前で、急速に熱が膨れあがるのを感じた。






解説

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