552 名前:('A`)ドクオは光の街へ向かうようです:2008/02/10(日) 01:14:15.93 ID:D3zzulV80

('A`)「久々に、あいつにでもに会うか……」

深夜3時、突然意味もなく思った俺の行動はそれはもう早かった。
大きな鞄を押し入れから取り出し、その中にとりあえず財布と電車の中で飲む酒と、あと滞在用に寝巻きと着替えも入れて。
新宿の駅から、俺は今日あいつの街へと向かう。

「これ下さい」
「はい、どうもね」

流石に新幹線の中じゃ暇だから、小説を買うことにした。
サスペンスでもラノベでもSFでもない、ありふれた日常の小説。
面白いかどうかなんて知らない。だってあらすじ読んで適当に決めただけだから。

都会に出てきて半年、ようやくこの大きな改札にも慣れてきた。
俺の住んでた街なんか、本当に小さいもので。
こんな大きい駅がこの国にはあったのかと、こっちに来てから驚いたもんだ。
なーんてことを思い出しながら俺は新幹線に乗る。

('A`)「あの、そこ俺の席なんですけど」

/ ,' 3「おぉ、すまんのう。この年になるとつい間違えてしまっての」

('A`)「いや、別に大丈夫ですよ。そろそろ出るんで席座ったほうが良いんじゃないですか」

/ ,' 3「ほっほっほ。ありがとうな、青年。君のような若者が居て嬉しい限りじゃ」

別に、と俺はひとり呟く。
きっとあの老人には聞こえていないだろう。



557 名前:('A`)ドクオは光の街へ向かうようです:2008/02/10(日) 01:22:05.60 ID:D3zzulV80


あぁ、失敗した。

この小説はつまらない。半分ほど読んで、ようやく気付く。
何が悪いって、日常を描いていると見せかけてまさかのサスペンス。
流石の俺でもこれじゃすぐに飽きてしまった。

車内販売が通る。

('A`)「あの」

ξ゚听)ξ「はい、何でしょうかー」



558 名前:('A`)ドクオは光の街へ向かうようです:2008/02/10(日) 01:22:54.17 ID:D3zzulV80


('A`)「ビール下さい」

ξ゚听)ξ「ビールですね」

ありがとうございましたー、と彼女の声が響いた後で俺は気付く。
あぁ、俺、酒持ってたじゃねぇか。

仕方ないから買ったビールを飲む。やっぱり酒は美味い。
そういえば俺、一睡もしてないな。
しばらく眠ろう。眠って起きたら、乗り換える駅に着くだろう。



559 名前:('A`)ドクオは光の街へ向かうようです:2008/02/10(日) 01:24:10.42 ID:D3zzulV80


「あの」

突然声を掛けられ、俺は目が覚める。

(´・ω・`)「そろそろ、降りたほうがいいんじゃ」

('A`)「あ、本当だ! ……でも何で、目的地がわかったんですか?」

(´・ω・`)「鞄から、見えてますよ。写真」

俺は慌てて鞄を見る。
俺とあいつの思い出の写真が、鞄から見えていた。

('A`)「良く、どこだかわかりましたね」



560 名前:('A`)ドクオは光の街へ向かうようです:2008/02/10(日) 01:25:02.94 ID:D3zzulV80

(´・ω・`)「僕、旅が好きなんですよ。それでたまたま行ったことがあって」

('A`)「でも、そんなに旅してたら忘れちゃうんじゃないんですか?」

(´・ω・`)「その写真の街が、凄く気に入ったんです」

('∀`)「へへ。良い街でしょう」

(´・ω・`)「えぇ、とても。それより、もう着きますよ」

('A`)「あ、有難う御座いました」

(´・ω・`)「また会えることを祈ってます」

('A`)「こちらこそ、また何処かで」



564 名前:('A`)ドクオは光の街へ向かうようです:2008/02/10(日) 01:35:41.92 ID:D3zzulV80

新宿の駅とはまるで違う世界のものであるような錯覚に捕らわれるくらい、この駅は小さかった。
木造の駅舎、少ない改札、時刻表には一時間に1本、2本あれば良い方。
東京じゃ、あまり聴かない声。カナカナカナカナ……と、ヒグラシが鳴く、懐かしい声。思い出の、声。

時間は見てあったから、10分程待つだけで電車はやってきた。
小さい二両電車に乗り込む。もう、夕方になってしまったな。
流石、人の少ない電車だ。車両には俺を含めて2,3人って所だろうか。
都会のラッシュアワーのような苦労は、ここには存在しない。あっさりと座席に着くことが出来た。



566 名前:('A`)ドクオは光の街へ向かうようです:2008/02/10(日) 01:37:31.94 ID:D3zzulV80

ゆっくりと進む電車と景色。新幹線と違って、窓の外が良くわかる。

あいつは今、どうなっているんだろう?
連絡も無しに突然尋ねて、怒られはしないだろうか。
忘れられては、いないだろうか?いや、それはきっと無いだろう。俺とあいつの約束だ。

あいつの髪、伸びちゃったかな。
それともあの頃のまま、ずっと変わってはいないのかな。
背、伸びただろうなあ。俺なんか通り越してしまっただろうか?
考えるだけで、胸が高鳴るのを感じた。
いや、考えただけが原因じゃない。窓の外の景色が、あいつの居る街に近づいているからだろう。

こうして居ると、どうしてもあいつとのことを、思い出す。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――



570 名前:('A`)ドクオは光の街へ向かうようです:2008/02/10(日) 01:42:41.57 ID:D3zzulV80


('A`)「クー」

川 ゚ -゚)「なんだ、ドクオ」

(*'A`)「その……だな、」

川 ゚ -゚)「早く言え、日が暮れてるんだ。夜になってしまうぞ」

(* A )「綺麗だよ、クー」

川 ゚ ー゚)「そうか? ドクオが言うなら本当だろう」

(*'A`)「あのさ」



573 名前:('A`)ドクオは光の街へ向かうようです:2008/02/10(日) 01:45:29.03 ID:D3zzulV80


川 ゚ -゚)「ん?どうした?」

('A`)「ふたりで……暮らさないか」

川*゚ -゚)「な、なんだいきなり! 冗談はよせ、驚くじゃないかっ!」

('A`)「あと、俺……ずっと言えなかったんだけど」



('A`)「……明日、東京、行くんだ」



576 名前:('A`)ドクオは光の街へ向かうようです:2008/02/10(日) 01:47:07.17 ID:D3zzulV80


川  - )「嘘、だろ? 全く、ドクオは……冗談が、上手いな……っ」

( A )「本当、なんだ」

川 ; -;)「行かないでくれ、なぁ、頼むから!」

( A )「それは……無理、なんだよ、クー」

川 ; -;)「私は、ドクオと、離れたくないんだ……」


('A`)「だから」



579 名前:('A`)ドクオは光の街へ向かうようです:2008/02/10(日) 01:50:20.09 ID:D3zzulV80



('A`)「一緒に、ふたりで暮らそう?」


川  - )「ドクオも、知っているだろう? 私の家が、厳しいことは」

('A`)「あぁ、重々承知だ。でも、俺は」

川 ゚ -゚)「私は、この街に残らなくてはならないんだ。家の跡取、だからな」

( A )「……そうか、無理言って、すまなかった……」

川  - )「見送り、行くからな。絶対に」

( A )「……有難う」



581 名前:('A`)ドクオは光の街へ向かうようです:2008/02/10(日) 01:54:36.29 ID:D3zzulV80

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

川 ゚ -゚)「ドクオ、東京でも上手くやれよ」

('A`)「そっちこそ、しっかりやれよ」

川 ゚ -゚)「私のことを忘れたら、承知しないからな」

('A`)「あぁ。その代わり、そっちも……忘れるなよ、俺のこと」


('A`)「電車、来たから」

川  - )「……あぁ」


('A`)「じゃあ、な」

川 ;-;)「またな、ドクオ」

(;A;)「おい、泣くなよ、クー……俺まで泣いてんじゃねぇかよ……」


('∀`)「最後は、笑って見送ってくれよ」

川 ゚ ー゚)「解った」


                  「出発しまーす」



582 名前:('A`)ドクオは光の街へ向かうようです:2008/02/10(日) 01:57:52.76 ID:D3zzulV80

(;A;) (……俺、そういえばお前に、気持ち、伝えてなかったな……はは)

川 ;ー;)「ドクオー!最後になるが!」

('A`)「おいお前!走ったって、電車に追いつく訳ねぇだろ!」



川 ゚ ー゚)「私は、お前のこと……大好きだ!これからも、ずっとな!」



(;A;)「全くずるいぜ、お前はよぉ……先に、言っちまうなんて」



('∀`)「俺も、俺も!お前が好きだ!ずっとずっと、大好きだ!」

               カナカナカナ……
カナカナカナカナ……           カナカナ……



583 名前:('A`)ドクオは光の街へ向かうようです:2008/02/10(日) 02:00:20.92 ID:D3zzulV80

(;A;)「……くっそ、思い出して……泣いちまったぜ……」


いつになっても、情けない俺だと思った。
本当にあいつは、こんな俺を今でも忘れてないんだろうか?


(*゚ー゚)「どうしたの?お兄ちゃん」

(;A;)「なんでも、ねぇよ」

(*゚ー゚)「嘘だ」

そりゃそうだよなぁ。子供にだって、バレるだろう。
俺、嘘吐くのが凄く下手だから。
いや、そういう問題じゃない。だって顔に思いっきり涙が流れてるのが自分でもわかるんだから。



589 名前:('A`)ドクオは光の街へ向かうようです:2008/02/10(日) 02:02:45.67 ID:D3zzulV80


(*゚ー゚)「うーんと、えーっと……あ、そうだ!お兄ちゃんに飴あげる!」

('A`)「いいのか?貰っちゃって」

(*゚ー゚)「うん、でもその代わり元気出してね!」

('∀`)「あぁ。約束だ」

(*゚ー゚)「わぁ、お兄ちゃん笑ってくれた!」

純粋な子だ。
出来るのであれば、俺もいつまでも子供のままで居たい。
未来にずっと、希望という夢を見ていたい、そう強く思った。



591 名前:('A`)ドクオは光の街へ向かうようです:2008/02/10(日) 02:07:40.81 ID:D3zzulV80


気がつけば、もうすぐ俺達の街だ。

夕暮れの西日、鳴くヒグラシ、懐かしい街並み。

低い太陽の反射で、光の街みたいだ……なんて、恥ずかしいことも容易く思えてしまう程。

そういえば持ってきた酒は飲まなかったな。
あいつと一緒に、ビルの屋上かなんかに忍び込んで飲もうか。
色々な話をしてやろう。そして、色々な話を聴こう。



593 名前:('A`)ドクオは光の街へ向かうようです:2008/02/10(日) 02:10:03.26 ID:D3zzulV80



光の街で、クーが待ってるから、


進むのが遅いこの電車に、俺は思う。


お願い、もう少しだけ

早く、急いで

僕らの街まで


     川 ゚ -゚) Fin ('A`)



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