752 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/05(土) 21:54:29.16 ID:QYbF6uvi0

( ´・_ゝ・`)「んで? 何をお探しで?」

ξ゚听)ξ「媚薬よ」

カランカラン、と夕暮れ時に呼び鈴を鳴らして入ってきた制服姿の少女は、率直にそう告げた。
柱時計がゆったりとした音を刻む店内で、デミタスは読んでいた新聞をカウンターの上に置いた。

( ´・_ゝ・`)「お嬢さん、ウチは薬局だよ。前のアレ、見れば分かるだろ」

軒先に出していたオレンジ色のケロタン人形を指さして、デミタスはそう告げる。

( ´・_ゝ・`)「そういう怪しげな物は取り扱ってないから、帰ってくれ」

ξ゚听)ξ「売ってるでしょ? 性的に興奮させる薬」

不機嫌そうにデミタスの事を睨み付けると、少女は持っていた手提げカバンの中から手帳を取り出した。
パラパラ……とめくって、その中の1ページをデミタスの前に差し出す。

『ツン・デレ殿 乙種魔法薬取り扱い免許状 魔法大臣発行』

とルーン文字で書かれたプラスチックのカードが、クリップで手帳のページに留められていた。



756 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/05(土) 21:55:34.16 ID:QYbF6uvi0

( ´・_ゝ・`)「お嬢さん、一体何モンだ……?」

デミタスはカウンターの下に手を伸ばすと、備え付けてあるダイヤルの数字を合わせた。
カチッ、と歯車の回る音がして、それまで色々な物を並べていた薬局の棚が、床に沈んでいく。

ξ゚听)ξ「あんたの噂は聞いてるわ、デミタス。元はマジカルキングダムの魔法薬剤師だったけど、
      嫌気が差して人間界に引っ越して、売れない薬局を開いてるって」

( ´・_ゝ・`)「売れないという事もない。お嬢さんみたいな客が、ときどき来てくれるからね」

完全に棚が床に沈み終わったことを確認すると、デミタスは隣のダイヤルを回した。
かすかな機械音が響いて、天井から無数のブロックが降りてくる。

それは、棚だった。ただし並べられている物は怪しげな生物のミイラや、瓶に入った緑色の液体、
そして地獄の底からやってきたような金切り声を上げる液状の魔法生物だが。

( ´・_ゝ・`)「媚薬が欲しいって事はあんた、淫魔か。不感症の男に悩むサキュバスってところかな?」

ξ゚听)ξ「少し違うわ。あたし、女の子専門なの」

ツンは棚からピンク色の液体が入った小瓶を取り出すと、軽くウインクしてみせた。



757 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/05(土) 21:56:31.25 ID:QYbF6uvi0

「おはようございます、お姉さま」

「おはよう、皆さん」

春には桜の花が咲き乱れる並木道で、その少女は大輪の花のように微笑んだ。
冬枯れの木立を透かして差し込んでくる陽光が、長い黒髪をきらきらと輝かせる。

すらりとした白い肢体を包み込む、漆黒のスカート。
長い睫毛の下の美しい双眸が、自分を慕って周りに集まってくる下級生たちを見つめる。

気品ある顔立ち――美少女と呼んでも差し支えない彼女に、ツンは木陰から熱いまなざしを送っていた。

ξ゚听)ξ「うけけけけけ……」

昨日デミタスの店で買った例の小瓶が、その手には握られている。

ξ゚听)ξ「あとはこいつを使って汚し、蹂躙し、しゃぶりつくしてやるだけ! もちろん性的な意味で」



759 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/05(土) 21:57:07.74 ID:QYbF6uvi0

「んっ……」

唇から熱っぽいため息がこぼれたのを感じて、少女は思わず口元を押さえた。
はるか前方の黒板では、教師がバルキスの定理について説明を続けている。

スカートの下の両腿がひくりとわななく。
わずかにお尻をよじらせるように身体を動かすと、切ないような快さが下半身に広がった。

「あんっ……」

くぷっ、と何かが身体の内側から溢れたような感触が伝わって、少女は唇を噛みしめる。
擦り合わせた太腿の奥で、湿っていた下着がじゅくじゅくと音を立てたのが分かった。

「ど、どうして……」

少女は端正な顔を羞恥に染めて、伺うように辺りを見回す。
他の生徒はみな、バルキスの定理に集中している。切ない疼きが下肢から伝わってくるのを感じて、
少女は喘ぎ声を噛み殺すように机の上に顔をうずめた。

何を感じているのかは分かっている。どうすれば鎮められるのかも――。
少女は荒い呼吸を落ち着かせるために深呼吸すると、教師に向かって手をあげた。



760 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/05(土) 21:58:11.64 ID:QYbF6uvi0

ξ゚听)ξ「さすが超高級媚薬……2000円近くしただけのことはあるわ……」

女子トイレの鏡に少女の教室の様子を映しながら、ツンはほくそ笑んでいた。
手にしていた小瓶は、すでに空になってしまっている。

ξ゚听)ξ「あの子のお昼のお弁当に入れたのよね……ウケケケケケ」

廊下を近づいてくる足音が聞こえて、ツンは鏡の状態を元に戻した。
何食わぬ顔で髪をセットし直しているふりをする。

ξ゚听)ξ「るったら〜♪」

何しろ、久しぶりの食事なのだ。
女淫魔であるサキュバスは通常、男性の精を糧に生きているが、
ツンの場合なぜかそれは女性の愛液だった。

ξ゚听)ξ「媚薬でも使わないと、ノンケを落とすのは辛いのよね……」

女子トイレの入り口に人影がみえたのを見ると、ツンは鏡の前から一歩を踏み出した。
そして、ゆっくりとそのまま歩き出そうとして……。



761 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/05(土) 21:59:05.82 ID:QYbF6uvi0

( ´・_ゝ・`)「……お客さん」

カウンターに寄りかかってむにゃむにゃと寝言を呟いているツンに、デミタスは声をかけた。

ξ゚听)ξ「……ああ……次はお前、あたしの前でションベンしろ……」

幸せそうな寝顔で突っ伏している女淫魔の手には、空になった小瓶が握られている。
そう、それは確かに媚薬だった。飲んだものに性的に興奮する夢を見せる……。

( ´・_ゝ・`)「……やれやれ、起こすのもアレだしなあ」

呟いたデミタスは、すっかり暗くなった薬局の前の通り道に、一人の少女の姿を見つけた。
ツンと同じ学校の制服を着た、長い黒髪の少女。

カランカラン、と呼び鈴が鳴って、少女は薬局の中に入ってきた。
カウンターで寝ているツンを見つけて、呆れたように肩をすくめる。

( ^ω^)「ツン、こんなところで寝てたのかお、探したお」

( ´・_ゝ・`)「お嬢さん、この子の知り合いかね?」



765 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/05(土) 22:00:25.18 ID:QYbF6uvi0

( ^ω^)「そうだお。ボクとツンは学校のルームメイトだお」

少女は元気に答えると、ツンの肩を優しく揺すりはじめた。

( ^ω^)「ほらツン、早く起きてお部屋に帰るお。今日はパジャマパーティーだお」

ξ゚听)ξ「……むにゃ……ブーン?」

眠たげに目を擦った女淫魔が、同室の少女の顔を見てほのかに頬を赤らめたのがデミタスにも分かった。
髪を少し整えると、淫魔は弾かれたようにカウンターから立ち上がる。

ξ*゚听)ξ「お、おじゃましたわね!」

そのまま、少女と連れだってそそくさと店を出て行くツンの後ろ姿を見て、デミタスは苦笑した。

( ´・_ゝ・`)「ま、せいぜい頑張ることですな……性的な意味で」

窓の外には月が、弧を描くようにして昇りはじめていた。



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