920 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/18(金) 14:24:10.73 ID:lCRpKLF90

('A`)「サイトカイニン・・・」

高等学校内の最高学年教室。
その前扉が隣席に座って
自身が纏めたノートへ目を落としている男がいる。

( ´∀`)「いやぁ、指定校推薦で某難関大学に受かってしまったモナ〜」

(#゚;;-゚)「私はAO入試で国公立大学に決まったわぁ〜。 ウフフフ〜」

男のクラスには早々と進路を決めた者達もいた。
進路の決まらぬ者の多い中で、はしゃぐのは良くないことだ。

しかし、指定校推薦もAO入試も弛まぬ努力を続けてきた証。
誰しも彼らの立場なってみれば、
浮かれたい気持ちも少なからず出てくるのではないだろうか。

('A`)「老化防止・・・」

最前席の男は周囲の明るい雰囲気を無視して
一心不乱に復習を続けていた。

この男、鬱山ドクオは国公立大学を狙っている。
母子家庭の鬱山家には私学へ進む余裕はない。
たとえ奨学金を考慮したとしてもだ。

ドクオは小中高と真面目に勉強してきたが
どこかの大学の特待生に選ばれる程の学力は身に付かなかった。
愚かしいほどに真っ直ぐな心を持つドクオは
物事を要領よくこなす器用さを持ち合わせていなかったのだ。



921 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/18(金) 14:26:32.95 ID:lCRpKLF90

('A`)「ただいまー」

アパートの扉を開け帰還の言葉を口にする。
だが帰ってくる言葉はない。
これはいつものことである。
今の時間帯、ドクオの母親にはパートの仕事があるからだ。

鞄を自室に放り、手を洗う。
そして何気なく冷蔵庫を開く。

('A`)「おお、ケーキ」

狭いダイニングにある冷蔵庫の中には
三角形にカットされたチーズケーキが載った皿が入っていた。

ふと振り返り、テーブルの上を見ると母親からの数行の手紙が残されている。
ルーチンワークとなっている帰宅後の動作中では気が付けなかったものだ。

その手紙は明日に迫る試験に向けて体調を崩さぬようとのことと
冷蔵庫にチーズケーキが入っているとの内容だった。

('A`)「カーチャン・・・」

母親の気遣いに感謝しつつ
ケーキをナイフで半分に切り、二つの皿に分けた。
さらに母の手紙に自分からも一言添える。
片方の皿は書き足した内容の通りに冷蔵庫に収めて、
もう片方の皿とフォークを持って自室へ勉強しに向かった。



922 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/18(金) 14:27:50.94 ID:lCRpKLF90

・・・

ドクオは帰宅した母親と夕飯を取り終えた。
暫し談笑した後、部屋に戻り勉強机へ向かう。

('A`)「さて、お勉強しますかね」

明日に備えて早々と眠ってしまうほうがいいのだろうが
試験の為に長く続けてきた習慣のせいで寝付けそうになかった。

('A`)「・・・明日の教科を重点的にっと」

ひたすらに記憶とノートの差異をチェックしていく。
具合の良いことに、全く狂いは見受けられなかった。

途中、母親がラーメンの丼の載った盆を持ちながら
まだ眠らないのかと心配するように聞いてきた。

ドクオは今夜はもう少し起きている旨と
自分には構わずに寝てしまって欲しいとのことを伝えた。
そして礼を言いながら夜食を受け取った。



924 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/18(金) 14:30:34.32 ID:lCRpKLF90

温かいラーメンで胃を満たしたドクオ。
しかし、眠気は一向に訪れてこない。
今夜は徹夜をするハメになるのだろうか。
ドクオがそんなことを考えていると。

( ^ω^)「よう、ドクオ」

('A`)「・・・ほえ?」

笑顔の男が部屋へ侵入してきた。
しかしドアを開けて入ってきたのではない。
男は鍵とカーテンの掛かった窓をするりと貫通してきたのだ。

( ^ω^)「決して怪しいものじゃない。
     名前は・・・ そうだなブーンと名乗ろうか。
     俺はお前らが言うところの天使だ」

くれぐれも大声を出すなよ?
近隣住民の迷惑になるし、ドクオのカーチャンが起きてしまうだろうから。
と、ブーンは自己紹介に続けて一般的な意見を出してきた。
天使のいる部屋という非常識な状況の中で。



925 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/18(金) 14:32:09.26 ID:lCRpKLF90

('A`)「俺、疲れてるんだな」

ドクオが回る椅子をクルリとブーンの方へ向けながら
この不可思議な場の原因を推測する。

( ^ω^)「そうだろうな、大学受験は大変だからな」

笑顔の男と自分の思考パターンの違いにドクオは少し笑った。

('A`)「まぁ、いいや。
    天使さんが俺に何の用があるんだ?」

ドクオは、力を与えるから戦えといった用件なら
試験があるから無理だとも補足した。

( ^ω^)「ふふ、そんなことではない。
      だが、試験に関わることだ」

ブーンはドクオへ大学に合格させてやろうかと尋ねてきた。



927 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/18(金) 14:43:58.76 ID:lCRpKLF90

('A`)「どういうことだ?」

ブーンの甘言に驚き、体を強張らせるドクオ。

( ^ω^)「どうもこうもない言葉通りのことだ」

ブーンは天界からドクオを見ていた。
不器用ながらも誠実なところが気に入ったそうだ。
そして、天使の持つ不思議な力を使えば
一人の人間を大学に合格させることは容易いらしい。

('A`)「まるで悪魔のようだな。
    いや悪夢だろうか?」

( ^ω^)「ふふ、魂など要らん。
      俺は、ただドクオを気に入っているだけさ。
      大学を出れば母にも楽をさせることが出来るぞ」



928 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/18(金) 14:45:15.72 ID:lCRpKLF90

('A`)「・・・」

確かにブーンの言い分には一理がある。
ドクオは女手一つで自分を育ててくれた母に対して
恩返しがしたいと常に思っていた。

('A`)「でも・・・ やめとくよ」

( ^ω^)「・・・本当にいいのか?」

('A`)「ああ、ひょっとしたら後悔するかもしれないけれど・・・
    俺は自分の力でカーチャンを幸せにしてあげたいんだ」

自らの強い意思を示すドクオの顔はとても凛々しかった。
その表情は3年間続けてきた努力とドクオ自身の誠実さから来るものであった。

( ^ω^)「ふふ、ふははは・・・ ならば、そうするがよい」

ブーンが静かに笑う。
ドクオが提案を断ったことがそんなにも可笑しかったのだろうか。
それとも他の感情があるのだろうか。



930 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/18(金) 14:46:25.18 ID:lCRpKLF90

( ^ω^)「俺はもう天国へ帰る。 用件は済んだしな」

母親と仲良くして、綺麗なお嫁さんを貰って楽しく過ごせとブーンがドクオへお節介をやく。

('A`)「言われるまでもないさ。 お互いに達者で暮らそう」

ドクオが椅子から降りて、外へ向かうブーンを見送る。

( ^ω^)「じゃあ、元気でな」

ブーンがカーテンに手を当てすり抜けていく。
だが、ブーンは体の半分が外へ出たところでドクオへ振り返った。

( ^ω^)「しかし・・・ 何もせずに帰るのもなんだな」

('A`)「んっ?」

・・・



931 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/18(金) 14:47:12.32 ID:lCRpKLF90

・・・
カーテンを通り抜ける日差しと
スズメの鳴き声でドクオは目を覚ました。

('A`)「何でベッドで寝てるんだ?」

昨晩のことは夢だったのかとドクオの頭に疑問が浮かぶ。

しかし、その思考は母親の朝食が出来た旨を告げる声により妨げられた。
部屋を出るために軽やかにベッドを降りるドクオ。

('A`)「んー、体調は絶好調だな」

弓なりになり、背筋を伸ばすドクオ。
普段は低血圧で起きるのが辛いのだが
この日は何故かすんなりと布団から出ることができた。

('A`)「何とも幸先の良いことだ」

味噌汁のいい香りがドクオの部屋まで漂ってきていた。
ドクオはそれに誘われるように、ドアノブに手を掛けてダイニングへと出た。

今日の試験はきっと上手くいく。
何故だかは分からないがそんな考えが浮かんだ。

('A`)のセンター試験前のようです

おわり



932 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/18(金) 14:48:41.48 ID:lCRpKLF90

『後日談』

ここは天界、天国、次の世界。
ふわふわとした乳色の雲の上。

( ・∀・)「お、鬱山じゃないか。
      昨晩は何処へ行っていたんだ? 」

( ^ω^)「よう、神じゃないか。
      なぁに、ちょっとそこまでってとこだな」

今度こそおわり



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