216 名前: 从・∀・ノ!リ人は( ゚д゚ )に見られているようです 投稿日: 2008/08/07(木) 10:19:31.03 ID:X3hGco4BO
太陽が西に傾いた。
たいして広くない公園に少女が一人、悲しそうにブランコを揺らしている。
小柄で幼い顔。
つぶらな瞳には悲しみが映り、太陽と共に消えてしまいそうな、儚げな姿だった。
从・∀・ノ!リ人「兄者たち、おそいのじゃ」
ぽつりと呟いた声は、寂しく夕闇に溶けていく。
それが少女の恐怖心に拍車をかけた。
从・∀・;ノ!リ人「さ、さびしくなんかないのじゃ!妹者はしっかりものなのじゃ」
从・∀・。ノ!リ人
从・∀・;ノ!リ人「泣いてなんかないのじゃ!」
一人虚しく声を張り上げる。
ほんの少しの間に太陽はまた沈んでいた。
从・∀・ノ!リ人「ん? あれは……」
気付くと公園の入り口に人影があった。ここからではよく見えないが、男であることは分かる。
从・∀・*ノ!リ人「兄者!」
ブランコから立ち上がった妹者は、不気味な気配に一瞬身をこわばらせた。
向こうからゆっくりと、しかし着実に距離を詰めてくる。
男はキョロキョロと、なにかを探している風だった。
その動きは機械的で、挙動不審、という言葉がしっくりとくる。
217 名前: 从・∀・ノ!リ人は( ゚д゚ )に見られているようです 投稿日: 2008/08/07(木) 10:25:40.38 ID:X3hGco4BO
从・∀・ノ!リ人「なんなのじゃ?」
( ゚д゚)
(゚д゚ )
( ゚д゚ )
从・∀・;ノ!リ人「こっちみんななのじゃ」
妹者は言ってからすぐに口を閉じた。
言わなきゃいけない義務感に駆られて言ってしまったとはいえ、失礼かもしれない。
もっとも男は聞こえているのか、気にしていないのか分からなかったが。
从・∀・ノ!リ人「ちっちゃな兄者が言ってたのじゃ。
『人が傷つくことを言ってはいけない』と。
流石一家の一員たるもの人を傷つけてはいけないのじゃ!」
妹者はひとしきり自分に渇を入れると、勇み足で男に向かっていく。
219 名前: 从・∀・ノ!リ人は( ゚д゚ )に見られているようです 投稿日: 2008/08/07(木) 10:28:32.58 ID:l3nglzu90
从・∀・;ノ!リ人「な、なにをしてるのじゃ?」決意とは裏腹に上擦った声が出てしまう。
(゚д゚ )
( ゚д゚)
( ゚д゚ )
無言で妹者を見つめる男。
妹者と向かいあって立つと、まるで別の生き物のように身長が違う。
妹者の二倍近い長身に、やや筋肉質な体。さらに生気のない、見つめられるとイライラする顔だ。
从・∀・;ノ!リ人「な、なにか捜しているのじゃ?」
威圧されながらも妹者は聞いた。
( ゚д゚ )ミス、しかし反応はなかった。
从・∀・;ノ!リ人「手伝ってあげるのじゃ」
(゚д゚ )
( ゚д゚)
( ゚д゚ )
222 名前: 从・∀・ノ!リ人は( ゚д゚ )に見られているようです 投稿日: 2008/08/07(木) 10:30:37.00 ID:l3nglzu90
会話が成り立たない。
まるで未知の文化と邂逅している気分になった妹者は、一歩後ずさりした。
从・∀・;ノ!リ人「な、なんか言ってほしいのじゃ」
空はもう夕日を失い、大地は月光に照らされる。
妹者は男とのコミュニケーションを放棄することにした。
( ゚д゚ )「探し物」
从・∀・ノ!リ人「へ?」
( ゚д゚ )「なくし物」
从・∀・;ノ!リ人(最初と後で少し言葉が変わった気がするのじゃ)
男がようやく発した声は低く、唸るようだった。
从・∀・ノ!リ人「ここでなくしたのじゃ?」
( ゚д゚ )
224 名前: 从・∀・ノ!リ人は( ゚д゚ )に見られているようです 投稿日: 2008/08/07(木) 10:31:20.64 ID:l3nglzu90
急にぴたりと喋るのをやめる男。新手の精神攻撃なのかもしれない。
男の不可解な行動パターンに妹者の瞳に涙が溜まりだす。
从・∀・。ノ!リ人「む、無視しないでほしいのじゃ」
(゚д゚ )
( ゚д゚)
( ゚д゚ )
( ゚д゚ )「分からない」
一々奇怪な動作をとってから喋る。
その長身と相まって怪しさはトップレベルだ。
从・∀・ノ!リ人「じゃあなんでここにきたのじゃ?」
( ゚д゚ )
( ゚д゚ )「呼ばれた」
男はそれだけ伝えると、また辺りを散策し始めた。
妹者はブランコを離れると、男に駆け寄る。
225 名前: 从・∀・ノ!リ人は( ゚д゚ )に見られているようです 投稿日: 2008/08/07(木) 10:33:27.67 ID:l3nglzu90
妹者を見向きもせずに辺りを見回す男。それに追従するように見回す妹者。
奇妙な二人組が誕生した。
从・∀・ノ!リ人「なにを探してるのじゃ?」
(゚д゚ )
(д゚ )
(゚ )
( )
( ゚)
( ゚д)
( ゚д゚)
( ゚д゚ )
ゆっくり、イライラするような速度で一回転した男は、口を開こうとしなかった。
妹者の口からため息が漏れる。
229 名前: 从・∀・ノ!リ人は( ゚д゚ )に見られているようです 投稿日: 2008/08/07(木) 10:34:20.47 ID:l3nglzu90
从・∀・ノ!リ人「お話してくれないとつまらないのじゃ」
( ゚д゚ )
( ゚д゚ )「人はいずれ死ぬ」
男の口から出た話題は、幼い子供との会話には不似合いなものだった。
( ゚д゚ )「それは必然的なこと。
しかし死の訪れは偶発的」
从・∀・;ノ!リ人「よく分からないのじゃ」
( ゚д゚ )「分からない」
从・∀・ノ!リ人「分からないお話はつまらないのじゃ」妹者は素直に呟いた。
( ゚д゚ )「俺の悪い癖だ」
とりたてて感情の変化も見せずに、男は述べた。
从・∀・;ノ!リ人「悪いとは思わないのじゃ」
( ゚д゚ )「人によって正義は多種多様に変化する。悪もまた然り」
从・∀・;ノ!リ人「分からないのじゃ」
从・∀・ノ!リ人「おじさんは頭がいいのじゃ。むずかしいことをいっぱい知ってるのじゃ」
232 名前: 从・∀・ノ!リ人は( ゚д゚ )に見られているようです 投稿日: 2008/08/07(木) 10:37:56.54 ID:l3nglzu90
( ゚д゚ )「戯れ言だ」
从・∀・ノ!リ人「カッコいいのじゃ!」
( ゚д゚ )「死についてどう思う」
突如、起伏のない声で男は聞いた。
妹者は疑問系であることに気づくのに30秒ほどかかる。
从・∀・ノ!リ人「……よく分からないのじゃ。
でも妹者は、みんなといっぱい笑っていられたら幸せなのじゃ」
( ゚д゚ )
( ゚д゚ )「なくしものはない」
男は唐突に結論づけた。
妹者は首を傾げながら男を見上げる。
从・∀・ノ!リ人「見つかったのじゃ?」
( ゚д゚ )「見つからない。
ここにあった」
从・∀・ノ!リ人「意味はよくわからないけど、よかったのじゃ」
233 名前: 从・∀・ノ!リ人は( ゚д゚ )に見られているようです 投稿日: 2008/08/07(木) 10:38:43.59 ID:l3nglzu90
( ´_ゝ`)「おーい、妹者」
(´<_` )「遅れて悪かった」
向こうから顔のよく似た双子が歩いてくる。
妹者は嬉しそうに微笑んだ。
从・∀・*ノ!リ人「兄者たちがきたのじゃ、バイバイなのじゃ」
妹者が双子のもとへ走りだそうとしたとき、
( ゚д゚ )「ありがとう」
男は静かに呟いた。
从・∀・*ノ!リ人「どういたしましてなのじゃ!」
从・∀・*ノ!リ人ノシ
一度後ろを振り返って大きく手を振る。
234 名前: 从・∀・ノ!リ人は( ゚д゚ )に見られているようです 投稿日: 2008/08/07(木) 10:39:37.18 ID:l3nglzu90
从・∀・ノ!リ人「兄者たち遅いのじゃ」
( ´_ゝ`)「すまんすまん。弟者が漫画立ち読みしようと言い出してな」
(´<_`# )「それは兄者だろうが」
( ´_ゝ`)「ところで妹者よ、お前は誰と話していたんだ?」
从・∀・ノ!リ人「あの人なのじゃ」
妹者はもう一度振り返った。
しかし公園にはあの長身の姿はない。
妹者は無人の公園にもう一度手を振った。
了
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