278 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 01:37:03.31 ID:8Qu11RNEO
宇宙の最果てに、まだ誰にも知られていない惑星がある。
279 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 01:38:08.67 ID:8Qu11RNEO
地球人が住むことができないくらいに、汚染された星であるが、その星には生命があった。
そこに生きる生命は、人間に酷似した容姿の動物のみであった。
後の世界で彼らが発見された時、その人種は“オクトピアン”と呼ばれるが、これはまた関係のない話だ。
その惑星には、争いはない。
“圏外第137惑星”では、争いで得られるものなど一つもないからである。
更に、“オクトピアン”は、その種としての特性から、男女がそばに居なければ、生命を維持できない事もある。
そしてもう一つ、常に砂が嵐と共に舞うこの星の大地では、小さな村が賽の目のように点在していること。
この為、単に隣村へ軍を動かすだけでも死者が出る。
そんな大地で今、旅を始めようとする青年がいた。
_
( ゚∀゚)ジョルジュがシヤワセを探すようです
280 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 01:39:02.24 ID:8Qu11RNEO
“惑星137”の赤い湖のほとりに、小さな石造りの家が建っていた。
植物の育たないこの星では、石以外の建築資材は無いため、全ての建物が石造りだ。
_
( ゚∀゚)「暇だなぁ……」
その家の中には、ろくな物は何一つない。
強いて挙げるならば、衣服も身につけない男女と、小じんまりとした石テーブルがあるのみだ。
男は、ため息をつきながらでこぼこの冷えた床に寝転ぶ。
_
( ゚∀゚)「おい、デレ。何か面白い話ないのかよ?」
ζ(゚ー゚*ζ「ありません」
デレと呼ばれた女は、ひどくさっぱりと返した。
対する男も、特に期待はしてなかったようで、冷たい返答にため息を漏らすこともなかった。
282 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 01:40:01.29 ID:8Qu11RNEO
_
( ゚∀゚)「……どうしてまぁ、人生ってこんなにつまらないのかねぇ」
それぞれの指先に吸盤がついた異質な手を、男はわきわきと動かした。
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( ゚∀゚)「ご先祖様も、よくこんな世界を存続させようと思ったもんだね」
男はイライラした様子で毒づく。確かに、この世界はまことつまらない。
ここで出来る事と言えば、石切をして家を建てるか、女と生殖に及ぶかしかないのだ。
ζ(゚ー゚*ζ「退屈すぎて、する事が生殖のほかに無かったんじゃないですか?」
_
( ゚∀゚)「俺はもう生殖も飽きたよ……」
男は、ふわぁと口を開いてあくびをする。寝転んだ彼の姿は、なんとも退屈そうだ。
283 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 01:41:07.90 ID:8Qu11RNEO
_
( ゚∀゚)「いっそ、死ぬか?」
ζ(゚ー゚*ζ「駄目ですよジョルジュさん、戒律違反は」
この村では、戒律によってある程度の行動の制限がある。
それに縛られて生きるのも、また一種、退屈しのぎにはなるのだが――。
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( ゚∀゚)「つまんねえなぁ……」
ジョルジュと言われた男はまた、あくびをした。と、彼は伸ばしかけた体を急に止めた。
_
( ゚∀゚)「……デレ、吸収させてくれ」
ζ(゚ー゚*ζ「はいはい。……ほら」
デレは、胸部の膨らみを持ち上げて、半身を起こしたジョルジュに近付く。
それに呼応するように、ジョルジュの吸盤付きの左手が本能的に乳房に伸びる。
ζ(゚ー゚*ζ「ん……」
この行動は、ここでは男がエネルギーを得ることに他ならない。
ここで、惑星137に暮らす人間の特徴を記しておく。
284 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 01:42:04.82 ID:8Qu11RNEO
まず男は、ただ呼吸をしたりするだけで、地球の人間のようにエネルギーを消費する。
対して女は、生きているだけでエネルギーが体内から生成されていく。
このままだと、この星は女の支配下に置かれる事になるだろうが、現在ではそうなっていない理由がある。
女たちは、生成されたエネルギーを消費する術を持たない。
すると、溜まったエネルギーが熱となり、一週間保たずに死ぬのだ。
だから、男が吸盤を付けるという進化をし、エネルギーの塊たる乳から、その受け渡しをしているのだ。
こんな習慣から、未来でここは“おっぱい星”とされ、そこに住まうは“おっぱい星人”である。
_
( ゚∀゚)「はー……エネルギー不足って急に来るなぁ……」
ジョルジュはしばらくデレのおっぱいを掴んで動かなかったが、やがて安堵のため息をついた。
285 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 01:43:24.51 ID:8Qu11RNEO
_
( ゚∀゚)「……なんか面白いことないのかよ、デレ」
ζ(゚ー゚*ζ「その台詞、今日二回目ですよ」
する事と言えば、建築、生殖、エネルギーの授受におしゃべり。
こんな退屈な星で、人々は面白いこと探しに没頭する。
ζ(゚ー゚*ζ「……あ、そういえば。一つだけありました」
_
( ゚∀゚)「お、なんだよあるじゃないか。聞かせてくれ!」
ジョルジュはパッとデレのほうを見て、目を爛々と輝かす。
ζ(゚ー゚*ζ「なんでも、イの村のブーンさんって人が、新しい感情を見つけたそうですよ」
287 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 01:44:04.69 ID:8Qu11RNEO
_
( ゚∀゚)「新しい……感情? なんて言うんだ?」
あまりパッとしない話だが、聞かないよりはましだろう。ジョルジュは相槌を打つ。
ζ(゚ー゚*ζ「たしか、シヤワセとか言いましたかね。まぁ、嬉しいとあまり変わらない感情らしいですけど」
_
( ゚∀゚)「シヤワセ……か」
ジョルジュは、更にその目の輝きを強くした。シヤワセという言葉の響きが、突然彼の心を魅了した。
_
( ゚∀゚)「ふふ……ふふふふ……「シヤワセ」か! 面白いな、そりゃあ! 俺ちょっと、イの村に行ってくるぜ!」
ζ(゚ー゚*ζ「はいはい、晩までには帰ってきて下さいね」
これが、長い旅になるとは、ジョルジュもデレも、想像がつかなかった。
ジョルジュは駆け出すと、そう離れていない村へと一直線に走った。砂煙も、この星の住人なら慣れたものだ。
あっという間に彼はイの村に到着してしまった。
293 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 02:06:49.85 ID:8Qu11RNEO
_
( ゚∀゚)「ブーンという奴はいるか!?」
目当ての男は、村の入り口に仁王立ちしていた。
( ^ω^)「おっおっ、僕も有名人になったおw」
_
( ゚∀゚)「お前がブーンか? シヤワセを見つけ出した、ブーンなんだな?」
( ^ω^)「まさにそうだお! お兄さん、「幸せ」について聞きたいんだおね? こっちに来るお!」
ブーンは気さくな男だった。ジョルジュは案内された家に上がり込むと、正座してブーンを見据えた。
_
( ゚∀゚)「それで、シヤワセってのはどんな感情なんだ?」
勿体ぶろうとするブーンに、ジョルジュは質問を浴びせた。
少し不機嫌な顔をしながら、珍妙な石帽をかぶったブーンは答える。
( ^ω^)「幸せとは、基本的に喜びの絶頂のことだお。嬉しくて仕方ない時、人は幸せだお」
294 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 02:08:42.48 ID:8Qu11RNEO
_
( ゚∀゚)「……ちんぷんかんぷんだな」
( ^ω^)「え、ここで?」
ジョルジュは、残念なくらい馬鹿だった。
_
( ゚∀゚)「もっとよ……シヤワセってのはこんな気分だっ! ってのを感じれると思ったんだが……」
( ^ω^)「あぁ、幸せを感じる方法? それならあるお。暇つぶしにはちょうどいいお!」
_
( ゚∀゚)「マジか!? 教えてくれ!」
一度沈みかけたジョルジュが、再浮上してくる。
( ^ω^)「旅をするんだお。この世界の、全ての村々を!」
_
( ゚∀゚)「おっしゃあ! ちょっとシヤワセを探しに、行ってくるぜ!」
そして、阿呆のジョルジュはまた走り出してしまった。自分の阿呆さも知らぬままに。
( ゚ω^)「……頼んだお、名も知らぬ人……僕の研究を、君が完成させてくれると信じるお……。
大丈夫、幸せはこの世のどこかに、きっとあるんだお……」
295 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 02:10:18.44 ID:8Qu11RNEO
リの村の外れで、砂嵐に巻かれた少女が、涙を流していた。
彼女はここに放置されて何日経つだろうか。はじめは緩かったのであろう手錠と足枷が、
生成されたエネルギーで膨らんだ各部をギチギチ締め付けていた。
( ・∀・)「誰がお前のエネルギーなんて吸ってやるか! バーヤバーヤwwwwww」
(*;ー;)「や、やめて……」
そんな少女を、石靴を履いた一人の少年が蹴る。容易に皮膚が裂け、ホカホカ湯気を出すほど熱い血が吹き出た。
<ヽ`∀´>「ウェッwこいつ熱暴走起こしかけてるニダwww」
少年たちの一人が、飛んできた血から慌てて離れて、濁った笑い声を上げる。
( ・∀・)「よっしゃ、真昼の花火お願いしまーす!」
少年たちは、少女から数歩離れて、腕組みをした。
次第に、少女の様子がおかしくなる。
296 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 02:11:31.14 ID:8Qu11RNEO
(;゚−゚)「だ、やぁ……からだが熱い……」
少女は身を捩るが、そんな事では熱は収まらない。滲んだ汗もすぐに蒸発する。
そして少女は、血が沸騰しているのだろうか、突然体を震わせ出した。
(((*゚々。)))「あ……が、phろnヴぁrthw;くあmt」
(*゚々。)「……s」
その振動が一瞬だけ止まった。次の瞬間、少女の腹が爆発し、五臓六腑がズタズタになりながら吹き上がった。
( ・∀・)「たーまやー!!」
<ヽ`∀´>「かーぎやー!!」
( ・∀・)「おまwwww鍵屋派かよwwwwww死ねwwwww」
<ヽ`∀´>「ウヘヘwwお前が死ねwwwwww」
二人の少年は、笑い合いながら少女の骸を放置して、どこかへ歩いていった。
297 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 02:12:30.42 ID:8Qu11RNEO
数十分後。ジョルジュが少女の遺体の横に佇んでいた。
_
( ゚∀゚)「……お前は、熱暴走したのか?」
少女は既に息絶えていたから、何も答えなかったが、ジョルジュは勝手に頷いた。
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( ゚∀゚)「旅の途中じゃ、エネルギーを捨てることも得ることも出来ないからな……すまない、あんたのエネルギーもらってくぞ」
ジョルジュは、血まみれの少女の胸に手を当て、しばらく目を閉じていた。
やがて、手を離すとともに、目を開け、一滴の涙を零した。
_
( ゚∀゚)「……デレには、何も言って来れなかったな。……何も言わないほうが良かったか」
屍を跨ぎ、ジョルジュは目前に見える、リの村に向かって歩き出した。
ありがとう、と小さな声が聞こえた気がした。
298 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 02:13:40.60 ID:8Qu11RNEO
_
( ゚∀゚)「リの村には、確か学校とかいう教育施設があったんだよな……」
ジョルジュはぶらぶら歩きながら、独り言を呟く。
_
( ゚∀゚)「そこに行けば、シヤワセについて知ってる人間がいるかも知れんな」
学校の位置は、すぐに分かった。村の中心にあって、一番大きな建物だったし、何やら人だかりが出来ていたからだ。
_
(;゚∀゚)「おいおい、なんじゃこら?」
一番近くにいた男の肩を叩いて、訊く。振り返った顔は、なんだか不機嫌そうだった。
('A`)「モララーっていうガキが、女の子を村外れに放置して、熱暴走させたみたいでな。
だが、それに対する学校の対応がまた臆病でな、それに怒った奴らが集ってんだ」
_
( ゚∀゚)「村外れに……女の子?」
299 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 02:14:47.60 ID:8Qu11RNEO
_
(;゚∀゚)「つか、何だよそれ。殺しは戒律違反だろ?」
ジョルジュの言葉に、男は「そら来た」と嬉しそうな顔をする。
('A`)「この村じゃあ、モララーの父親が権力持っててな。あいつが、戒律を自由に操ってる」
_
(;゚∀゚)「な……」
愕然とした。
こんなに文明が発達した村を、そんな屑が支配しているだと?
('A`)「まぁ、世間じゃ珍しくもない話さ……おい、どこ行くんだ?」
_
(#゚∀゚)「モララーとかいうのをぶち殺す!」
ジョルジュが叫ぶと、学校前に集まっていた民衆が拳を突き上げて叫んだ。石斧を手にしているものもいる。
_
( ゚∀゚)「……よし、行くぜえ!」
301 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 02:15:49.99 ID:8Qu11RNEO
_
(;゚∀゚)「ぬわーっ!」
数分たたずに、権力者は処刑され、その一族の血は絶たれた。
結果的に村は救われたし、ジョルジュはもう村の英雄的存在になっていた。
だからこそ、ジョルジュは今後役立ちそうな石斧と、材質不明のマントだけ頂いて、村をあとにしていた。
_
(;゚∀゚)「やばいって俺! 戒律破っちまったって!」
人を殺した。それだけで天罰が下るには十分な理由がある。絶望に打ちひしがれ、ジョルジュは膝をついた。
_
(;゚∀゚)「……あれ? えーっと確か、戒律を破った人間を殺すのは良いんだったか?」
暇つぶしに記憶した十戒を思い出す。ジョルジュはしばらく指でこめかみをつついて、やがて立ち上がった。
_
( ;∀;)「よかった……天罰回避ktkr……」
302 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 02:16:50.15 ID:8Qu11RNEO
ジョルジュはゴワゴワするマントを羽織って、また歩き出した。
_
( ゚∀゚)(……しかし、あの女の子はいじめられた末に、あんな目に遭ってたんだな)
_
(#゚∀゚)「くそっ、何が「いじめ」だ。汚ねぇ響きの言葉だぜ」
ジョルジュは小石を蹴ってから、思案に耽った。
_
( ゚∀゚)(でも、俺がガキで……どうしようもなくヒマだったら、同じ事をしてたかも知れないな)
_
( ゚∀゚)(……何なんだよ、この世界……本当にシヤワセなんてものは、存在すんのか?)
半信半疑のまま、ジョルジュは歩き続ける。次の村、ワの村へと。
303 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 02:18:00.75 ID:8Qu11RNEO
_
( ゚∀゚)「……なんだ、ここ……変な形の石がいっぱいある……」
今までの人生でジョルジュは、リの村にまでしか来たことはなかった。
だから、ワの村が少し寒いことも、交通の拠点として乗り物が発展していることも知らなかった。
_
(;゚∀゚)「うー、さみぃ……そろそろエネルギーもないし、誰か有り余るおっぱいを探さないと……」
だが、その村は気温と同様に、皆冷たかった。
結局、道端に寝転んでエネルギー乞いという恥ずかしい真似をして、ようやくジョルジュはエネルギーを得た。
_
(;゚∀゚)「はぁ……まさか殺した挙げ句に死にかけるとはな……」
ともあれ、ジョルジュはここから出ているらしい石車に乗り、出来るだけ遠くを目指すことにした。
311 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 03:00:53.11 ID:8Qu11RNEO
_
( ゚∀゚)「おい、ねーちゃん。この石車とやらは、どこまで行くんだ?」
川 ゚ -゚)「この世界の最果てと言われる、スの村まで行ける。金さえ寄越してくれればな」
_
( ゚∀゚)「カネ? なんだよそれ?」
繰り返すが、ジョルジュはワの村に来たことはない。
だから、この先の村では流通している「カネ」の存在も、知らなかった。
川 ゚ -゚)「なんだ、田舎者か? カエレ……と言いたいところだがちょっと待て!」
石車から突き落とされた挙げ句に待てとか言われましても。
ジョルジュは内心苛立ったが、世界の果てに行くには彼女が必要だ。
_
( ゚∀゚)「なんすか?」
川 ゚ -゚)「その石斧……よもや、リの村の名工、ショボンの作ではないか?」
女は石斧を指差して、目をぎらぎら輝かせて言う。
312 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 03:03:41.10 ID:8Qu11RNEO
_
(;゚∀゚)「まぁ、これは確かにリの村で手に入れたもんですけど」
その反応に若干引きながらジョルジュは答えた。
川 ゚ -゚)「よし来た、スの村に行くんだろう? 乗れ!」
女はぽんと手を叩くと、ジョルジュを引っ張り上げ、石車に乗せると発進させた。
川 ゚ -゚)「いやぁ、ショボンの石斧をほしがっている奴が途中の村にいてな。100万コールド出すって言ってるんだよ」
_
( ゚∀゚)「はぁ」
金の話はまるで分からないジョルジュだったが、長い旅路、エネルギー交換をしたこともあって、女とは親しくなった。
女は名前をクーと言って、長い黒髪が印象的だった。
_
( ゚∀゚)「そういえばクーさん、シヤワセってご存知ですか?」
ある村で、約束の100万コールドを手にいれ、ホクホク顔のクーに、ジョルジュは訊いてみた。
クーは、世界を旅している。知らない事はないだろうとジョルジュは踏んでいた。
313 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 03:05:56.46 ID:8Qu11RNEO
川 ゚ -゚)「シヤワセ? ……そう言えば、そんな話を聞いたこともあるな」
_
(*゚∀゚)「ほんとですかっ!? 教えてください!」
ここに来て、ようやく手掛かりが掴めた。ジョルジュはいきり立って、クーに詰め寄る。
川 ゚ -゚)「……スの村に、シヤワセとやらを見つけた人間がいるらしい。話を聞いたことはないが、
何でもシヤワセとやらは身近に潜んでいるものらしいな」
_
( ゚∀゚)「身近に……?」
ジョルジュは首を直角に傾げた。その様子に、クーは珍しく頬を緩ませた。
川 ゚ー゚)「まぁ、行って、直接話を聞けば分かるだろう」
楽観的すぎるとは思ったが、ジョルジュには従うほかない。石車はなおも走った。
314 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 03:08:01.92 ID:8Qu11RNEO
スの村は、道中クーから聞かされたように、何もない村だった。
二三個石造りの家がぽつんとあるだけで、他は何もない。
川 ゚ -゚)「私はここで待っているよ。シヤワセだかに興味はないからな」
クーは石車の窓から顔を出して、ジョルジュを見送った。
なるほど、下手に付いてきて「つまんね」とか言われるよりは余程いい。
_
( ゚∀゚)「シヤワセが何か分かったら、すぐ戻ってきますから」
川 ゚ -゚)「待ってるぞ」
たかが三つの家、適当に当たれば、シヤワセを見つけた人はいるだろう。
ジョルジュはとりあえず、一番大きな家に上がった。
/ ,' 3「幸せを探しに来たのかね?」
いつだかのジョルジュのように、寝転んでいるおじいさんは言った。
若干驚きながら、ジョルジュは答える。
_
( ゚∀゚)「はい。遥かイの村から、シヤワセを探しに、やって参りました」
315 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 03:10:05.03 ID:8Qu11RNEO
/ ,' 3「ほっほっ……そうか、イの村か。これは難儀じゃのお」
_
( ゚∀゚)「……え?」
ジョルジュの眉がぴくりと動いた。まさかの釣りか? という考えが浮かんだが、それも違った。
/ ,' 3「少年よ。お主の幸せはここには無いし、幸せの見つけ方などは存在しないのじゃよ」
_
(;゚∀゚)「ど、どういう事です!?」
ジョルジュは石卓を叩いた。打ち付けられた掌が、赤くなってじんじん痛む。
/ ,' 3「そうじゃの、ヒントをやろう。ワシの幸せはここ、スの村にあった。お主の幸せはどこにあるのかのう?」
ジョルジュはすぐさま、きびすを返した。おじいさんの言葉に、胸がざわついた。
デレは今頃何をしているだろうか? まさか、自分を待って家に籠もり、熱暴走を起こしたりしていないだろうか。
ジョルジュは急に不安になり、クーに、石車を全速力でイの村まで飛ばすよう言った。
316 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 03:13:26.20 ID:8Qu11RNEO
スセモイゑシミメユキサア
テエコフケマヤクオノゐウ
ムラナネツソレタヨカワ
ヲルヌリチトヘホニハロイ
ζ (。々゚*ζ
_
( ∀ )「……ははっ」
317 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 03:17:25.12 ID:8Qu11RNEO
_
( ∀ )「クーさん、俺、解りましたよ」
川 ゚ -゚)「……そうか」
家の中にあったものを確認して、ジョルジュはすぐに出て来た。その顔は、一瞬でひどく痩せこけていた。
_
( ;∀;)「……こんな目にあったら、誰でも解りますよね……シヤワセって何なのか……何だったのか」
ジョルジュは、小石を赤い湖に叩きつけた。まるで、デレのその瞬間のように、赤い飛沫が空に弾ける。
川 ゚ -゚)「……これから、どうするんだ?」
_
( ;∀;)「……さぁ。ぜんぜん分からないな……」
ジョルジュは、ゆっくりと顔を上げて、絞り出すような声で言った。
クーは涙でぐちゃぐちゃになったジョルジュの顔を指で拭く。
川 ゚ -゚)「……分からないなら、ヒントをやろう」
318 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/06/30(月) 03:20:44.55 ID:8Qu11RNEO
川 ゚ー゚)「私のシヤワセはそこの家にあった。ジョルジュ。君の、次のシヤワセはどこにある?」
おわり
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