184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/06(木) 20:41:37.44 ID:usBIXruL0


見下ろし広がる世界。
絶え間なく行き交う人の流れは、止まる事を知らない。

('A`) 「――」

夜風が頬を撫でる。
長年見てきた風景も、これで見納めだ。

思うに、俺の人生は『ベリーハード』だった。
だからこれから行う行動は、ゲームのリセットボタンを押すのに等しい。

ただ一度、人生をリセットするだけ。

('A`) 「――さて、と」

『VIPタワービル』、屋上。
地面を遠く離れた、冷たい夜の中、

俺は、深い闇に向かって、身を投げた。




('A`) ドクオはニューゲームするようです




187 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/06(木) 20:42:07.08 ID:usBIXruL0


('A`) 「――」

――死後の世界。
この風景を形容するとすれば、それしか無いだろう。

空は赤色。
大地に犇く亡者の影は数知れず。

故にその風景は、あの世。

('A`) 「――いや」

むしろ、地獄と言うべきだろうか。
遠くから近づいてくる男は、差し当たりエンマサマからの使いだろう。

('A`) 「――で、俺はどうなるんだ?」

(´・ω・`)  「ほお、覚悟が出来ているのか」



191 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/06(木) 20:42:58.14 ID:usBIXruL0



('A`) 「まあ、天国に行けるとは思ってなかったし」

(´・ω・`)  「ふん、若いのに堂々と。
       しょうがねえ、コイツは特別厳しい罰を用意せにゃならん」

('A`) 「―っと、ちょっと待った」

(´・ω・`)  「?」

使者が、振り返る。

('A`) 「罰なんだけどさ、『ベリーイージー』にしてくれない?」

(´・ω・`)  「―は?」

('A`) 「いや、さ。
     もう散々生きてる内に『ハード』は体験したから、死んでからは楽したいな、って」

(´・ω・`)  「――……」



194 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/06(木) 20:43:36.21 ID:usBIXruL0


―― 罰の間 ――


案内された場所は、
一言で言えば気持ちの悪い部屋だった。

ウネウネと動く触手が、無数に生えている部屋。

他にも、俺と同じように地獄に落ちてきた奴等がいたのか。
そいつらの頭には、二、三本の触手が突き刺さっている。

(;'A`) 「え、ちょ、俺『ベリーイージー』って言ったよね?」

(´・ω・`)  「ああ」

(;'A`) 「何、俺地獄でもう一回殺されるの?」

(´・ω・`)  「あれは死んでいる訳では無い。
       触手を通じて、奴等に映像を見てもらってるだけだ」

(;'A`) 「――」

早い話が、PCにUSBケーブルをぶち込んでるだけらしい。

俺は今から、この触手を頭にぶち込まれて、
ここに横たわる奴等同様、なんらかの映像を流し込まれるのだ。



197 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/06(木) 20:44:23.41 ID:usBIXruL0




(;'A`) 「何を見させられるんだ、おい」

(´・ω・`)  「本当の地獄を見せてやるのさ」

反論の余地も無く、手足が触手に囚われる。

確実に『ベリーイージー』とは程遠い存在だ。
脳天に触手が刺さるだけでも、『アルティメットモード』に属するだろう。

(;'A`) 「ちょ、ちょちょwwwwwwww」

(´・ω・`)  「さあ、ご希望通りの『ベリーイージー』だ」

|||| <ドスッ
(゚A゚) 「アッー!」

衝撃。
俺の脳天に突き刺さった触手は、いとも簡単に、俺の意識を奪った。



199 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/06(木) 20:44:54.96 ID:usBIXruL0


―― 雪。


――雪だ、雪が降っている。


何処か遠い、でも世界中のどこかだろう。
人々は寒そうにオーバーコートを羽織り、道を歩いている。

('A`) 「――これが、地獄?」

なんて事は無い風景。
これが罰だと言うのなら、『ベリーイージー』なんてものじゃない。

むしろ『ボーナス』。
死んで初めてみれた、一面の雪景色。

('A`) 「おお!」

加えて、この体は誰にも見えないらしい。
それに伴って何者にも触れる事は出来ないが、それでも

('A`) 「へへへ、こんな美人に近づいたの初めてだぜ」

歩き行く女性に、格好だけでも抱きついてみせる。
俺の下種な喜びを満たすには、充分なスタンスだった。



200 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/06(木) 20:45:34.53 ID:usBIXruL0


そうして、俺は色々と楽しませてもらった。

女子トイレの覗きは勿論。
厚着だった女性が、家の中で一枚ずつ脱いでいく姿などもはや芸術。

風呂に一緒に漬からして頂いたり。(無論暖かくは無いが)

('∀`)  「エンマサマ、ありがとう!」

思わず、叫ぶ。

この叫びも誰にも聞こえないからして、誰にも迷惑はかけていない。

('∀`) 「さーて、次は何をしようかな!?」

次の暇つぶしを探す。
そして、たまたま目に付いた。

('∀`) 「おお、あんなところに暗い裏路地があります!
     ああいうところは、ちぃとばかし悪いおにゃのこの溜り場ですよね!」

ヘラヘラと笑いながら、裏路地へと入っていった。



202 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/06(木) 20:46:19.18 ID:usBIXruL0



そこで見たのは、
この雪景色には相応しく無い、儚げな少女だった。

ξ‐听)ξ 「――う」

上半身は裸で、下半身もボロ布を纏っただけ。
顔色は青白く、その片目は壊死したかのように閉じられている。

('A`) 「―おいおい、こりゃあ」

生まれ持ってのロリコン。
だがこの少女には、そういう気持ちは一切起きなかった。

あまりにも、哀れ。

この雪の中で、この格好。
あまりにも、あまりにも、可哀想すぎた。

('A`) 「―俺の服――……!」

脱ごうとして、気付く。
俺は、この世界の人間に触れられない。



204 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/06(木) 20:47:10.14 ID:usBIXruL0


( ^ω^) 「おお、ツン。
        お前、まだ生きてやがったのかお」

ξ‐听)ξ 「――う」

俺の体をすり抜けて、一人の少年が歩いてきた。
ツンと呼ばれた少女は、頼りない動きで頷く。

( ^ω^) 「は、死にぞこない。
        お前の親が、警察にお前の事を話したらしいお。
 
       『ウチの娘は学校で苛められてて、きっとどこかに連れて行かれたんだわ!』

        全く笑えるお。
        お前の家みたいに貧しい所は、社会のゴミだお。
 
        ゴミを捨てただけで、何で警察なんかに言うのかおね」


ξ‐听)ξ 「――マ、マ」

立ち上がろうとするツン。
それを、在ろう事か少年は、

( ^ω^) 「んでさ、バレたら進学に響くじゃん。
       だから、お前マジで死んでくれお!」

その雪に向かって、蹴り倒した。



205 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/06(木) 20:47:55.21 ID:usBIXruL0


(#'A`) 「―! テメェ!」

蹴り飛ばしてやりたい。
この生意気な少年の顔を、全部蹴り飛ばしてやりたい。

だけど、それは出来ない。

ξ‐听)ξ 「――う! ううう!」

( ^ω^) 「ははは、安心するお!
       テメェのママのところには、ジョルジュ達が行ってるから、あの世でまた会えるお!」

(#'A`)  「――!」

その言葉で、思い出した。

ここはあの世、俺が見る地獄。

この死に行く少女を救えない事が、俺の罰だったんだ。


(#'A`) 「畜生おおおおおおおおおおおおお!!」



209 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/06(木) 20:48:42.28 ID:usBIXruL0


―――
――

(´・ω・`)  「はい終わり、めでたくエーンディーング。
       お疲れ様、ご希望の『ベリーイージー』はどうだったかな?

       君もそれなりに楽しんでたみたいだし、ゲーム感覚で楽しめただろ」

('A`)    「――……。
       在り得ないだろ、常識的に考えて」

(´・ω・`)  「?」

(#'A`)   「何がベリーイージーだよ、趣味悪いんだよ! 
        あの子が何したってんだよ! ただ貧しかっただけじゃねえか、そう――」

そう、俺みたいに。
生まれ持った貧しさに絶望して、それでも頑張って、

どうしても変えられない、社会の怖さ。
弱者をあざ笑う社会に絶望して、俺は身を投げたんだ。

(´・ω・`)  「ふむ――」



211 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/06(木) 20:49:39.99 ID:usBIXruL0


(´・ω・`)  「君の頭に差し込んだ植物は、『未来草』と言ってね。
        今からそう遠く無い未来を、見せてくれる植物なんだ」

('A`)    「――?」

(´・ω・`)  「そうだね、分かりやすく言えば、
        君が見ていた少女は、まだこの時点では生きているんだよ」

(;'A`)   「何!?」

思わず、飛び上がりそうになる。
良かった、今ならまだ間に合う。

だけど

(´・ω・`)  「まあ君には何も出来ないよね、死んでるんだから」

(;'A`)  「!」

そう、俺は死んでいる。
もう少女を救う事も、あのクソガキをぶん殴る事も、

――何も、出来ない。



214 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/06(木) 20:50:31.15 ID:usBIXruL0


涙で、視界が歪む。
意識が、霧の向こうに消えていく。

( A ) 「畜生、畜生――」

体が、力を失っていく。
罰を経て、俺は地獄に沈んでいく。

(´・ω・`)  「――ふう、これで君ともお別れだ」

その言葉に、感情はこもっていない。
俺の体は静かに、赤い空へと昇って行く。



(´・ω・`)  「グッバイ、コンテニューおめでとう。
       せいぜいその救われた命を、大切に扱えよ人間」




赤い空の果てで、俺はその声を最期に聞いた。



215 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/06(木) 20:51:27.99 ID:usBIXruL0


―― エピローグ ――



痛い、痛い。
なんで私が、こんな目に合うの?

貧しかった。
だけど、ママと二人なら楽しかった。

なのに、なのに、

ξ‐凵G)ξ 「――うう、ううう」

( ^ω^)  「ははっ、死ねっ、死ねお!」

なんで、死ななきゃいけないの?

貧しい事は、そんなに行けない事なの?



219 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/06(木) 20:52:17.12 ID:usBIXruL0



( ゜ω゜) 「ゲフゥ!」

と、その時。
私を蹴っていたブーンの体が、大きくとんだ。

先ほどまでブーンが立っていた場所には、
表通りから差し込む光を背に受けて、一人の男の人が佇んでいる。


「――間に合った」


男の人は、嬉しそうに。
本当に嬉しそうに、そうやって笑って


「『シベリア特急特別線、ペンタゴン行き』――ただ今到着!」


親指をグッと立てて、私の細い体を抱き寄せた。


                                               『 おわり 』



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