26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/28(金) 22:30:54.77 ID:KMqItk17O
( ゚д゚ ) …
ミルナには悩みがあった。
幼い頃から可愛がってきた双子の妹の様子がどうもおかしいのだ。
元々内向的な妹ではあったが、最近は輪をかけて暗くなり、
休日など一日中部屋に閉じ籠って怪しげな儀式を行っている。
友人たちは然程気にしていないようだが、ミルナは心配でたまらない。
最近冷たくあしらわれても、口をきいてくれなくても、可愛い妹なのだ。
川д川 ウフフ…ウフフフ…
モワモワモワ…
│д゚;)
妹、貞子の部屋はミルナにとってさえ異様な空間だった。
奇妙な紋様の描かれた黒い絨毯、怪しげなタぺストリー、風変わりなランタン、
香炉からは脳を麻痺させるかのような香りの煙が立ち上ぼり、
早すぎる蝉時雨さえ聞こえるような気がする。
何が彼女をこうも駆り立てるのか、ミルナには見当もつかなかった。
( ゚д゚ ) なあ貞子…たまには太陽の光を浴びt
川д川 うるさい黙れこっちみんな
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/28(金) 22:32:36.54 ID:KMqItk17O
年頃の娘が気難しいことはミルナも知っていたが、兄として放っておけるわけもなく、
ミルナは友人に相談を持ちかけたのであった。
( ゚д゚ ) 年頃の妹にはどう接したら良いだろうか
(;´_ゝ`) 妹者はまだ小学生だぞ
( ゚д゚ ) 女の子ってのはどうすれば心を開いてくれるのだろう
( ゚∀゚)o彡゚ おっぱい! おっぱい!
( ゚д゚ ) 女の子の扱い方を教えてくれないか
('A`) それは毒男オブ毒男である俺に対する挑戦か
しかし所詮は皆高校生。
異性の気持ちを理解するほどの人生経験などあるはずもなく、
結局ミルナは貞子の様子を物陰から見守ることしか出来ずにいた。
川д川 ウフフ…無言電話で今日も寝かせないんだから…ウフフ…
貞子は今日も部屋に籠り何やら独りごちている。
ミルナはキリキリと痛む胃をさすりながら床に就いた。
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/28(金) 22:34:14.37 ID:KMqItk17O
川д川 今日も内藤くんとお話し出来なかった…誘惑の魔術は完璧にこなしたのに…
川д川 さては…トニーのやつがしくじったのね…
川#゚д川 あの下等精霊め…
ミルナの気苦労などつゆ知らず、しかし貞子にも悩みがあった。
貞子が幼い頃より密かに想いを寄せていた男性に、最近急接近している女がいるのだ。
男の名は内藤ホライゾン。
彼は決して美形ではないが、いつだって優しく、明るかった。
朗らかな彼を見ているだけで貞子の心は暖かくなる。
話しかける勇気は無く、話しかけられる接点も無かったが、
眺めているだけで貞子は満足だった。
だが、最近内藤は幼馴染みのツンと急速に親しくなりだした。
幼馴染みと言うこともあり元々親しい二人ではあったが、
最近はどうやら二人きりで街へ繰り出すこともあるらしく、
傍目には最早完全な恋人関係である。
ツンにだけ向けられる内藤の笑顔が、ツンにだけ向けられる内藤の優しさが、
貞子の中の淡い幻想を崩していった。
川д川 内藤くんに…振り向いてほしい…内藤くん…
そこで貞子は以前より興味を持っていた黒魔術の力を借りることにした。
黒魔術とは、太古より人の欲を満たす術として語り継がれてきた儀式。
誘惑することも、傷つけることも出来る。
およそ非現実的であり無意味な行為であることは貞子にもわかっていた。
それでも貞子はそれを選んだ。
臆病な自分を恥じながら。
仲睦まじく語らう二人を眺めながら。
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/28(金) 22:35:36.76 ID:KMqItk17O
川д川 明日こそは…きっと明日は上手く行くはず…
当然成果は何一つあがらず、貞子は内藤を想い自分を慰めた。
その折、クラスメイトの一人が貞子に話しかけてきた。
(*゚ー゚) ねえねえ貞子ちゃん。ミルナ君が心配してたよ?
川д川 …どうして?
(*゚ー゚) 最近元気が無いって、何かあったんじゃないか〜ってさ
川д川 …そう
彼女、しぃは貞子とそれほど親しいわけではなかったが、
人見知りせず世話焼きな性格で、孤立しがちな貞子を何かと気遣ってくれていた。
(*゚ー゚) …あ、その首飾り、恋愛成就の方陣だよね
川д川 え、ああ…うん
(*゚ー゚) なるほどなーるほど…そう言うことでしたか〜
しぃもオカルトの類が好きだったことを貞子は記憶していた。
貞子ほどマニアックではないにしろ、占い好きなどと言う一般的女の子でもなく、
伝承やファンタジー等の好きな隠れオタクだ。
護符や石、法陣の類は貞子が教えたものも多く、
今貞子のつけている銀細工の首飾りもまたその一つである。
(*゚ー゚) 貞子ちゃんも恋をするお年頃なのね…! うん、私協力しちゃうよ!
川; д川 そ、そんな…そんなことは…
しかし占いやら風水やら以上に、女性は他人の恋愛沙汰が好きなものだ。
直接関わりつつ傍観できる立場は、ゲーム感覚で疑似恋愛を楽しむことが出来、
成就しなかったとしても『残念だったね』と他人事にしてしまえるのだから。
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/28(金) 22:37:09.09 ID:KMqItk17O
だが当事者である貞子にとっては違う。
恋い焦がれるあまり黒魔術などと言う馬鹿馬鹿しいものに没頭し、
内藤がツンと親しく話す様子を見ては嫉妬に狂い、
気苦労ばかりで身を削る様な苦痛を伴うものだ。
叶う見込みが無いと思ってしまうものなら尚のこと、
細身な貞子でさえ二キロも痩せてしまった。
川д川 いいの…どうせ、無理だもん…
(*゚ー゚) …
(*゚―゚) 女は恋をして変わるものよ! 攻めなくちゃダメっ! 変わらなくちゃ!
川д川 えっ…
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/28(金) 22:39:21.26 ID:KMqItk17O
その日ミルナは二度驚いた。
一度目は貞子が家に友人を二人連れてきたこと。
そして二度目は、部屋から出てきた貞子の出で立ちである。
( ゚д゚ ) 貞子が友人を連れてくるとは…しかし、随分と賑やかだな…
部屋に入って行ったしぃと素直クーが貞子と親しかった記憶は、ミルナには無かった。
話したことくらいはあっただろうが、しぃはクラスの中心にいるタイプであるし、
素直クーは孤高を保つ、貞子とは違う意味で孤立したタイプである。
そんな三人が一つの部屋で賑やかに何かを行っている。
黒魔術の儀式とはまるで違う雰囲気に、ミルナは耐えきれず部屋のドアを開けた。
( ゚д゚ ) お茶がはいりまし…
从 ゚д从
从;゚∀从 ニヤッ
そこにいるのは鏡を持ったしぃと、散髪用のハサミとドライヤーを持った素直クーと、
ぎこちない笑みを浮かべた、見慣れない女だった。
川 ゚ -゚) 見ろ、ミルナでさえこの反応だ。君はまさに別人に生まれ変わった
(*゚ー゚) 生まれ変わった貞子ちゃん、どう思う?
その女の目鼻立ちや体型などは確かに貞子のものだった。
しかし、簾のように顔を覆っていた髪は今や現代的に切り揃えられ、
丈の長い黒装束は活発な印象のパンツルックに変わり、
十数年共に暮らしてきたミルナでさえ気付かぬほどの変貌ぶりであった。
恋をすると女は変わる…不意に脳裏を過った言葉に、ミルナは胃が震えた心地だった。
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/28(金) 22:41:36.31 ID:KMqItk17O
(;゚д゚ ) まさか…まさか…。…男か! 男が出来たのか!
从;゚д从 ち、ちが…、
从 ゚∀从 違ぇやい!
(*゚ー゚) うふふ〜これからだよね〜、月曜日にビックリさせるんだもんね〜
川 ゚ -゚) その姿に慣れるために、明日は街をうろつこうか
( ゚д゚ ) …
知らぬは亭主ばかりなり、女心と秋の空、
詰まる所、いつの時代も男は女について行けないと言うことなのだろう。
あまりに唐突な、急激な変化に、ミルナはただただ貞子を見つめるばかりであった。
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/28(金) 22:43:38.46 ID:KMqItk17O
从;゚∀从 ねぇ…私、変じゃない
川 ゚ -゚)*゚ー゚) 全然。完璧
从*゚∀从 ウフフ…
│д゚;)
街に繰り出した三人はどこから見ても普通の女子高生であった。
特に貞子の表情はミルナでさえいまだかつて見たことの無いほどに明るいもので、
生まれ変わった自分に心底満足しているように見えた。
ミルナとしては最近の沈み様を知っていただけに嬉しくもあったが、
ずっと見守ってきた妹が消え去ってしまった様で寂しくもあった。
( ^ω^) おっ、ミルナ何してるんだお?
(;゚д゚ ) ハウアッ
疲れたらちょっとそこの本屋にでも立ち寄ろう…ミルナがそんな事を考え始めた時、
不意に真後ろから声をかけられた。
振り向けばそこには見慣れたクラスメイト、内藤の顔が。
どうやら内藤も休日を利用して街へ遊びに来たらしい。
( ゚д゚ ) ああ…ちょっと本屋にな
( ^ω^) 奇遇だお! 入り口まで一緒に行くお!
ブーンに急かされながらミルナは辺りを見渡した。
そこには既に三人の姿は無く、見つかる心配は無かったが、
同時に見失ってしまったことを意味していた。
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/28(金) 22:46:17.12 ID:KMqItk17O
( ゚д゚ ) まあ…馬鹿げてるよな、監視みたいな真似なんて…
ミルナは溜め息と共に本屋へ入り、内藤と別れた。
从 ゚∀从 ちょっとあっち見てくるね
川 ゚ -゚) ああ、じゃあ一時間後に入り口で
三人もまた本屋の中にいた。
貞子の更なるステップアップのためそれぞれが別行動をとることにしたが、
今や貞子はすっかり普通の女の子だ。
しぃやクーに対して自然と話しかけるようになり、表情は明るく、
周囲からの視線が気にならなくなってきたのか、立ち振舞いも堂々としている。
│ー゚) これなら心配ないね
│ -゚) ああ
しかし、順風満帆と思える時ほど不足の事態にかち合うものだ。
从 ゚∀从 (あ、『アトランティスの秘宝』…なかなか売ってないのよね…)
エ? 从 ゚∀从つ⊂(^ω^ ) オ?
(;^ω^) おおおすみませんお!
从;゚д从 はっはわわわ内藤くん…
( ^ω^) え?
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/28(金) 22:48:55.78 ID:KMqItk17O
从 ゚д从 !
( ^ω^) なんで僕の名前を…
不意に訪れた想い人と、触れてしまった手の感触に動揺してしまった貞子は、
つい内藤の名を呼んでしまった。
他人の振りをしていたなら乗り切れただろうに、そんな余裕さえ無い。
かつて無い緊急事態に、貞子の頭脳はフルスピードで回転を始めた。
从;゚∀从 ああ、わ、俺もVIP高の生徒でな! お前の名前くらいは知ってるぜ
从 ゚∀从 それよりお前こういう本好きなのか、知らなかったぜ!
从 ゚∀从 中々売ってないんだよな! 人気あるんだか無いんだか
捲し立てるように話す影で、貞子はポケットに手を入れたままメールを打つ。
何しろ心の準備が出来ておらず、最早何をしたら良いのかわからなかった。
《たすけて、どうしよう》
│゚ー゚) まさか…
│゚ -゚) 内藤が相手だったなんて…
│゚д゚) …
そして、時は来た。
ξ゚听)ξ 内藤ー、おまたせー
( ^ω^) 待ったおー
从 д从
そうか、そう言うことか…貞子は理解した。
二人はここで待ち合わせをし、これから二人きりで遊びに行くのだと。
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/28(金) 22:51:07.46 ID:KMqItk17O
それを一般的にはデートと呼ぶ。内藤とツンは休日を利用してデート。
貞子は自分の中のリミッターが一つ吹き飛んだ音を聞いた。
ξ゚听)ξ あら? その子は?
( ^ω^) ちょうど同じ本に手をかけてしまったんだお
从 ゚∀从 おぅよ!だがこの本は譲らねえぜ! そのかわり、ただで占いしてやるよ!
从 ;∀从 俺の占いはな、プロより当たるって評判なんだぜ!
貞子は強引に二人を連れ本屋の中にある喫茶店に入り、
テーブルにつくなり呪符と石を幾つか取り出した。
生年月日を聞き、手相を見、
呪符と石と法陣で導き出した結論を回りくどく解説する。
その結論さえ、貞子の味方はしてくれなかった。
从 ゚∀从 いやぁ…よかったな、お前らは安泰だぜ
(*^ω^)////)ξ
从 ;∀从 俺の名前はハインリッヒ高岡…さすらいの占い師だ! あばよーっ!
貞子は勘定を済ませると、脇目も振らず駆け出した。
ほんの僅かに外見が変わっただけで、別人を演じてみたところで、
結局自分が自分であることを変えられるわけもなく、
自分と内藤の関係を変えられるわけでもない。
結局は、何もかも遅すぎたのだ。
浮かれてそんなことにさえ気付けなかった自分が、貞子は心底嫌になった。
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/28(金) 22:55:43.38 ID:KMqItk17O
川д川 …
走るうちに髪は乱れ、せっかく買ったジャケットはボタンが一つ取れてしまっていた。
しかし貞子にとってそんなことはもう気にする必要の無いこと。
日曜日にはしぃとクーが家に来、事の顛末を話して三人でしみじみ泣いたが、
気が晴れるわけでもなく、何をするでもなく朝まで過ごしてしまった。
( ゚д゚ ) 貞子…そろそろ起きないと、遅刻するぞ…
月曜日の朝、貞子は部屋から出ようとしなかった。
カーテンを閉めきった暗い部屋の中、ベッドの上で何をするでもなく俯く貞子は、
その部屋に住み着いた幽霊の様に微動だにしなかった。
( ゚д゚ ) 貞子…
川д川 …、学校行きたくない…
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/28(金) 23:02:22.61 ID:KMqItk17O
( ゚д゚ ) …
(#゚д゚#) オニーチャンパワー!!
ミルナはおもむろに貞子の手を掴むと、そのまま引っ張るように家を出た。
川;゚д川 ちょっ、痛い! 引っ張らないでよ!
川;゚( ゚д゚) 問答無用!
チチチチチコクダオ! ヤバイオ! ブーンブンブンブンブーンブ――――――
会いたくない者ほどタイミング良く現れるもので、
その男は特徴的な掛け声と共に迫ってきた。
交差点の右側から、両手を広げて。
⊂ニニ(;゚ω゚)二⊃ ブーン!
川;゚д川 あ
( ゚д゚ ) あ
( ゚ω゚)
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/28(金) 23:05:04.75 ID:KMqItk17O
川;( ゚д(⊂(゚ω゚ ) ドーン
川д(⊂(゚ω゚ )ドーン
川д川 キュウ
(;^ω^) しっかりするお!傷は浅いお!
( ^ω^) 仕方ないお…
川 д( ^ω^) ブーン!
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/28(金) 23:09:21.49 ID:KMqItk17O
貞子が目をさますと、そこは保健室だった。
川д川 私、たしか内藤くんにぶつかって…その後どうしたんだっけ…
川д川 なんか、あったかかった気がする…
川* д川 ポッ
・・・一ヶ月後・・・
そこには、以前と変わらない貞子の姿が…!
( ´ω`) ツンに嫌われたかもしれないお、もう黒魔術にでも頼るしかないお
(*゚ー゚) そんな時の貞子先生よ!
川д川 呪まーす
ちょっと変わった貞子かもしれない。
おわり
川*д川 <戻る