724 名前: ( ^ω^)ブーンはあっち向いてホイ番長のようです 投稿日: 2008/10/26(日) 11:43:23.78 ID:cG9C9FG8O

【幼き日の追憶】

( ^ω^)「とーちゃん、とーちゃん!」
『ん? なんだ、ブーン』
僕の上から低い声が降って来る。
父の背中は大きかった。
( ^ω^)「あっちむいてホイするお!」
『ハハッ、ブーン』
( ^ω^)「じゃーんけーん!」
「ぽん!」と声が重なる。
僕はグー。父もグー。
( ^ω^)「あーいこーで……」
『――シッ!!』
物凄い速度でパーに入れ替える父。
(;^ω^)「えっ……」
『あっちむいてホイィ――――――ッ!!』
そのときのことは忘れない。
振り抜かれた父の人差し指は、息子である僕の首を右90度の方角に容赦なく薙払っていた。
(ω<)「と、とーちゃ……」
誰かが嘲った気がした。
『ハハッ、ブーン』
しかし無理矢理あさっての方へ曲げられた視線は、眩しいほど夕日を映すだけだった。
薄れ行く意識。
それが父との最後の記憶になった。



725 名前: ( ^ω^)ブーンはあっち向いてホイ番長のようです 投稿日: 2008/10/26(日) 11:47:49.05 ID:cG9C9FG8O

その男は俯きがちに入って来た。
喧騒が耐えなかった教室内は既に、しんと静まり返っていた。
男が顔をあげる。
瞬間、閃光が辺りに舞い、雷鳴が轟いた。

( ^ω^)「転校生のブーンだお……よろしくだお……」

ゴロゴロと余韻に浸るかのような稲妻を無視し、男は陰鬱な声で言った。
誰もが思わされた。
一体どんな人生を歩んだならこんな声色が出せるのだろう、と。
そしてその顔つきは犯罪者か英雄のどちらかに違いなかった。
(;・∀・)「あの……。ぶ、ブーン君?」
( ^ω^)「なんだお……」
(;・∀・)「出席簿には、内藤ホライゾンってあるんだけど……」
空気の読めないことでよく知られる教師が言った。
二度目の雷光がブーンの表情をかき消した。
こいつァ、消される。
そんな確信が辺りに満ち、クラスを影が支配した。
( ^ω^)「……先生……」
(;・∀・)「な、なにかね?」
突き出されるブーンの右拳。
石の形状を模したその形は、一般的に言われる“グー”であった。( ・∀・)「ジャンケンかね? いいだろう……」
こう見えても教師、モララーはジャンケンに自信があった。
過去、女生徒のブルマ窃盗を発覚された折、ジャンケンで乗り切った経験さえある。
所謂、ジャンケンのプロフェッショナルなのだ。



726 名前: ( ^ω^)ブーンはあっち向いてホイ番長のようです 投稿日: 2008/10/26(日) 11:50:22.06 ID:cG9C9FG8O

( ・∀・)「よし行くぞ。じゃーんけーん……」
( ^ω^)「待った」
モララーの本能が警笛を鳴らす。
まさか、そんな。
この男は、ジャンケン必勝の極意“起”をためらいなく“待った”した。
明らかに素人ではない。
( ^ω^)「ブーンが、音頭を執りますお……」
( ・∀・)「くっ! 好きにしたまえ!」
教師が目上、生徒が目下。
ならば生徒が音頭を執るのは道理だ。
故にそこに異論の余地はなく、譲る他に選択肢の在りようもない。
( ^ω^)「邪ッ!!」
( ・∀・)「なんだと!」
異質な発声に驚愕しない者はいなかった。
――邪はジャに通ず。そう誰かが理解したのが早かったのか。
( ^ω^)「拳ッ!!」
それよりも早くブーンが継いだのか。
拳はケンに通ず。
だが教師モララーとて、仮にもジャンケンの使い手。
( ^ω^)『翻ッッッ!!』モララー
彼が手を出せたのは驚愕と言う他例えようもない。
スクール水着姿でのあのバトル。
学費を着服したときの校長とのバトル。
修羅場が一人の教師を成長させ、悪魔の速度で繰り出される掛け声にも屈さない身体にしたのだ。
だが言い換えれば、出すのが精一杯でもあった。
それはつまり腹を空かせたワニが巣くう泉に、裸で飛び込むがごとき愚行。



727 名前: ( ^ω^)ブーンはあっち向いてホイ番長のようです 投稿日: 2008/10/26(日) 11:53:21.53 ID:cG9C9FG8O

( ・∀・)「……君がグー。僕がチョキ。敗北、か」
敗者の苦渋、口内にその味が染み渡った。
( ・∀・)「……まさか、一般生徒に敗れるなんてね」
( ^ω^)「……」
( ・∀・)「わかった。君の名前はブーンだ。出席簿も偽造しておこう」
苦々しさと裏腹に、妙に晴れた気持ちですらあった。
教師は思った。
――あぁ、鍛え直してみよう。
久しく忘れていた、ジャンケンへのひたむきさを思い出したのだ。
その高揚感がため、彼は致命的なミスを犯すことになる。

( ^ω^)「あっちィィィ……」

気付かなかったのだ。

( ^ω^)「向いてェェェ……!」

教師モララーに背を向けるように捻られた、ブーンの姿。
強靱な下半身を砲台に、上半身という砲身からまさに放たれようとする、砲弾。
それに構えることが出来なかったのが、彼の人生最大の不幸だった。

( ^ω^)「ホイィ――――――――――――ッ!!」

次の瞬間、教師はグラウンドの遥か上空をきりもみしながら舞っていた。



729 名前: ( ^ω^)ブーンはあっち向いてホイ番長のようです 投稿日: 2008/10/26(日) 11:55:46.13 ID:cG9C9FG8O

( ^ω^)「お前はジャンケンに固執するあまり、あっち向いてホイの可能性を失念した……」
星となった教師を見ながら静かに言った。
その最後にアディオスと呟くと、もはやブーンの興味は教師から離れていた。
( ^ω^)「さて……」
じろりと教室を一瞥する。
( ^ω^)「邪魔者は消えた。このクラスはブーンが仕切らせて貰うお……」
川 ゚ -゚)「待て」
立ち上がったのは黒髪の女生徒だった。
彼女の隣席に座る男子生徒が怯えたように言った。
(;'A`)「お、おい! 止せって!」
川 ゚ -゚)「そういうわけにはいかない」
決然とした物言い。
川 ゚ -゚)「私は認めない」
( ^ω^)「何をだお……」
川 ゚ -゚)「今のはあっちむいてホイではない、と言ったんだ」
( ^ω^)「続けろ……」
川 ゚ -゚)「凌辱するかごとき指先で、強姦のように頬を打つ! そこまではいい!」
( ^ω^)「ほう……」
川 ゚ -゚)「私と勝負しろ!」
( ^ω^)「いいだろう……」
川 ゚ -゚)「よし!」
相対する二人。
再び教室に緊迫感とそれに伴う恐怖感がのしかかった。
無音の世界に、

('A`)「クー!!」

と叫びにも似た毒男の声が、ただただ響き続けていた。



731 名前: ( ^ω^)ブーンはあっち向いてホイ番長のようです 投稿日: 2008/10/26(日) 11:59:33.02 ID:cG9C9FG8O

( ^ω^)『邪ッ!!』川 ゚ -゚)

ジャは寸分狂わず同時。('A`)「クー!!」
クールは事ここに至り、実感していた。('A`)「クー!!」
この威圧感、拳から繰り出される風圧、恐ろしいまでの語気。('A`)「クー!!」
全てが彼女の華奢な身体を吹き飛ばさんと襲い来るのだ。
( ^ω^)『拳ッ!!』川 ゚ -゚)
ケンに意志を込める。
もはや常人には目視出来ないで('A`)「クー!!」あろう高速。
クールは星となった教師を想起した。
こんな化け物と戦っていたのか。
畏敬の念が浮かび、かつてブルマを盗まれたことは許すことにした。
( ^ω^)『翻ッッッ!!』川 ゚ -゚)
かまいたちが教壇をばらばらにした('A`)「ク……ゲジョバッ」。
破片が毒男の額に突き刺さった。
互いにチョキの場合、ままあることだ。
川 ゚ -゚)「相……」
相呼でしょ!?
眼前の男ならそう言うはずだと、クールは思った。
――なんという見当外れ。
( ^ω^)「――ショッ!!」
川; ゚ -゚)「馬鹿な!」
“あいこで”を無視する。
それは小学生達が好む、リズミカルジャンケン。
その上ブーンの“ショ”は、ポンと重なるタイミングで行われていた。
一歩間違えればルール違反。
だがクールは見とれてしまっていた。
この男はなんて鮮やかなんだろう、と。



733 名前: ( ^ω^)ブーンはあっち向いてホイ番長のようです 投稿日: 2008/10/26(日) 12:04:01.34 ID:cG9C9FG8O

( ^ω^)「あっちィィィ……」
我に返ったのはそのときだ。
背筋に伝う汗を不快に思う間も無く、思考を始める。
脳内でジャンケンプロセスからシフト、あっちむいてホイプロセスで行うべき行動を予測。
最も愚かなのは左方向へ首を回すこと。
大体の人間が本能的に向きやすく、故に読むのは容易だ。
被害が少ないのは、上方向への回避。
だが傷を恐れれば、あっちむいてホイに勝つなど夢よりも儚い幻となる。
特に、相手は教師を躊躇なく吹き飛ばす、この男なのだから。
以上二つを除外したならば右か、はたまた下か。
( ^ω^)「向いてェェェ……!」
ブーンは先程と同じく右腕を振るってくるつもりだ。――ならば右に。
( ^ω^)「ホイィッ――――――――――――――ィィ」
水平に振り抜かれる剣に似た指先。
川; ゚ -゚)「くっ……」
頬を掠める裂かれた空気が、クールの頬を浅く斬った。
黒板を紙屑のように粉砕していくブーンの指。
クール自身も、左目で通過を確認した。――勝った。
川; ゚ -゚)「何っ!?」
クールの柔らかな頬に、衝撃が走る。
何故ここに指があるのか。
可能性はたった一つだけ。
この男は躱された勢いを殺さず、一回転した。
そうやって荒ぶる龍のごとき爪を今一度振るったのだ。
( ^ω^)「ィィィ――――――――――――――――ッ!!」
頬から強引に回転させられ、教室内を竜巻のようにくるくる回るクール。
生徒達の机に置かれていた教科書やノートが舞い上がったのも致し方ない。
クールはさながら神風だった。



734 名前: ( ^ω^)ブーンはあっち向いてホイ番長のようです 投稿日: 2008/10/26(日) 12:06:13.06 ID:cG9C9FG8O

( ^ω^)「他に、異議がある者は……?」

竜巻を傍らにブーンは言った。

ξ゚听)ξ「……一つだけ、いいかしら?」

吹き荒ぶ風に舞う金髪を抑えている女生徒が手をあげた。
毒男は死んでた。

( ^ω^)「どうぞ……」
ξ゚听)ξ「アンタ、最低よ!」

威勢の良い台詞に、ブーンはにやりと笑みを漏らした。

( ^ω^)「楽しい学園生活になりそうだお……」



735 名前: ( ^ω^)ブーンはあっち向いてホイ番長のようです 投稿日: 2008/10/26(日) 12:07:03.23 ID:cG9C9FG8O

こうして暫定的にではあるが、VIP学園二年B組はブーンの配下となった。
三年D組の伝説の男、あいこ番長。
悪魔のホイを操る学園長。
ブーンは並み居る強豪を倒し、いずれVIPのあっち向いてホイ番長となるだろう。
だが未だ彼らは知らなかった。
忍び寄る暗黒あっち向いてホイ委員会の手先達。
この世の終焉と共に古から甦る魔王、インジャンホイ。
そして現れる……。

『ハハッ、ブーン』

ブーンの戦いは終わらない。
――これはジャンケンから始まり、ホイに終わる物語なのだから……。







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