525 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 06:25:04.51 ID:0CF7YrKKO


 夜空を背に聳え立つ摩天楼。
 その頂点、二人の男女が向かい合う。
 不敵な笑みを浮かべながら喋り出したのは、男の方。

(`・ω・')「今日こそ終わりにしてやろう」

 女は、微笑んだまま何も言わない。
 それが男の気に障る。

(#`・ω・')「そのふざけた笑みを、俺好みに歪めてやる」

 苛立ちながらも、男は右手を掲げ叫ぶ。

(#` ゚ω゚ ')「さぁ我が手に収まるがいい、永力凍剣EFBよ!」

 瞬間、男の頭上には。
 閃光と共に、巨大な剣が現れていた。
 今では伝説でしかお目に掛かれない筈の、『相手は死ぬ』剣。

(`・ω・')「貴様に見せるのは初めてだったな……これを見てもまだ俺に勝つ気でいるのか?」

 最早自身の勝利しか見えていない男。
 そんな彼に、女は優しく言い放った。

('、`*川「ショボン君、授業はもう終わったよ?」



526 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 06:26:00.18 ID:0CF7YrKKO






(;´ -ω- `)「な、何だと!? それはもしや魔……」

(´ -ω- `)「……ん?」

(´うω- `)ゴシゴシゴシ

(´・ω- `)「……」

('、`*川「おはよう」

(´・ω・`)「……」

(´・ω・`)「やぁおはよう伊藤さん。ハハハ、僕としたことが授業中に寝てしまうなんて」

(´・ω<`)ヽ☆「実は昨晩、遅くまで数学をしていたんだ。夢の中にまでバルキスの定理が出てきたよ」

('、`*川「……」

 彼女の沈黙が、教室内の不気味な静寂をショボンに気付かせてくれた。

(´・ω・`)「……え?」

 彼の額に一粒の汗が浮かんだ頃、ようやく沈黙は破られた。
 それは、正しく爆笑というやつだった。



528 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 06:31:32.28 ID:0CF7YrKKO


( ゚∀゚)「今日こそ終わりにしてやろうwww」

('∀`)「そのふざけた笑みを、俺好みに歪めてやるwwwwww」

( ^ω^)「さぁ我が手に収まるがいい、永力凍剣EFBよwwwwwwwww」

(´・ω・`)「……」

(´ ゚ω゚ `)

 ショボンの脳は即座に停止した。

( ゚∀゚)「ゆ、ゆ、優等生で委員長のショボンが、中二病とはwww」

('∀`)「邪気眼持ちとか、流石の俺でも予想外だわwww」

( ^ω^)「さぁ我が手に収まるがいい、永力凍剣EFBよwwwwwwwww」



m9( ゚∀゚ )m9('∀`)m9( ^ω^ )プギャーwwwwwwwww



529 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 06:32:28.54 ID:0CF7YrKKO


(´ ゚ω゚ `)

 クラスメイトからの嘲笑の嵐、けれどどんな愚弄の言葉も彼の耳には届かなかった。
 彼の中にはただ、己の行為の恥ずかしさだけか渦巻いていた。

('、`;川「ちょ、ちょっと皆! やめなよ!」

 唯一彼を擁護する彼女の優しさも空しく。

(´ ゚ω゚ `)「うわああああああっ!」

 彼は突然叫び出し、奇声を発したまま教室の窓から飛び下りた。

('、`;川「ショボン君!?」

( ゚∀゚)「うは、窓から飛び下りるとかカーッコイーッw」

('∀`)「死んだな、あいつ間違いなく死んだなw」

( ^ω^)「もう学校来れないおw」

 相変わらずふざけ続ける級友たちに、遂に伊藤がキレた。

('、`#川「……いぃい加減に、しろぉっ!」

(;゚∀゚)(;'A`)(;^ω^)「!?」



530 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 06:35:55.11 ID:0CF7YrKKO


('、`#川「あんたたちだって普段散々バカなことばっかしてんでしょ!?」

(;゚∀゚)「バ、バカなこととは失礼な!」

('、`#川「おっぱいおっぱい言ってる奴が何言ってんのよこのド変態!」

(;'A`)「そ、そんなに怒るなよ伊藤……ちょっとふざけただけ」

('、`#川「やっていいことといけないことの区別もつかないのかこの童貞!」

(;^ω^)「童貞とか女の子の言う言葉じゃないお! ちょっと勃起したお」

('、`#川「デブでも喰ってろピザ!」

 彼女の辛辣な罵倒に、彼らはただ閉口していた。

('、`#川「あたしもこんな酷いこと言いたくなかった! でもあんたたちは、同じことをショボン君にしたのよ!」

(  ∀ )( A )(  ω )「……」

('、`#川「ちゃんとショボン君に謝りなさいよね!」

 すっかり俯いてしまった彼らを残して、彼女は教室から出ていった。



531 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 06:36:49.66 ID:0CF7YrKKO






 学校から程近い公園に、ブランコで揺れる少年がいた。

(´;ω;`)「うっ、うっ、ぐすん」

 教室が一階だった為、何も考えずに飛び出したものの。
 家にも帰れず学校にも戻れないショボンは、ただただ泣いていた。

(´;ω;`)「終わりだ……もう何もかも……」

 ショボンはこれまで、絵に描いたような優等生を演じてきた。
 親や先生から褒められたり、何人かの同級生に尊敬のまなざしで見つめられること。
 それが、彼は何よりも好きだったからだ。
 だが、彼はもう理想の自分には戻れない。

 今の彼は、妄想を垂れ流す痛い少年だ。

(´;ω;`)ブワッ

 考えれば考える程、涙が止めどなく流れる。
 穴があったら入りたい、いや今すぐ穴を掘って埋まっちゃおうかな、と彼が思った時。

「ショボンくーん!」

 今一番聞きたくない声がした。



533 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 06:40:05.81 ID:0CF7YrKKO


(´;ω;`)「な、何で伊藤さんが!?」

 ショボンは慌てて立ち上がり、その場から逃げ出そうとした。

('、`*川「こらぁっ、マラソン一位のあたしから逃げられると思ってんの!?」

(´;ω;`)「うっ……!」

 ちなみに彼は、真ん中よりは上の無難な順位だ。
 走って逃げ切れるなど到底無理な話だった。

(´うω;`)「……」

 ショボンは立ち止まり、諦めて涙を拭う。

(´・ω・`)「……」

 伊藤はすぐに彼の側へとやって来た。

('、`*川「もう、探したよ?」

(´・ω・`)「ごめん……」

('、`*川「ほら、教室帰ろう?」

 彼女がくいっと袖を引っ張る。



535 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 06:44:12.41 ID:0CF7YrKKO


(´・ω・`)「……戻ったって、また馬鹿にされるだけだよ」

('、`*川「もうしないよ! あたしがさせない!」

 彼女の頼もしい言葉も、彼には信じることができなかった。

(´・ω・`)「……君だって」

('、`*川「え?」

(´;ω;`)「君だって、僕のこと馬鹿にしてるんだろっ!」

 涙が再び、彼の目から零れて来た。

(´;ω;`)「僕のこと頭のおかしな奴だって思ってるんだろっ!」

('、`*川「思ってない!」

(´;ω;`)「嘘だっ!」

('、`*川「どうしてっ!」

(´;ω;`)「だって、だって……」



537 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 06:46:17.53 ID:0CF7YrKKO


 嗚咽が、ショボンの発声を妨げる。
 最早垂れ落ちる鼻水も彼には気にならなかった。

(´;ω;`)「ずびっ、ぐずっ」

('、`*川「……」

 伊藤はそっと、チリ紙を出す。

('、`*川「ほら、とりあえず鼻かもうよ」

(´;ω;`)「……」

 彼は無言で受け取った。

(´;ω;`)チーンッ

(´;ω;`)「……ありがとう」

('、`*川「どういたしまして」

 そして、伊藤は優しく語りかける。

('、`*川「ショボン君、ショボン君は夢を見てただけでしょ」



541 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 07:05:46.25 ID:0CF7YrKKO


(´;ω;`)「でも……すごく恥ずかしいやつで……おまけに口に出しちゃって」

('、`*川「いいじゃない、別に」

(´;ω;`)「!?」

(´;ω;`)「や、やっぱり君も僕を馬鹿に」

('、`*川「違うよ」

 彼女はハッキリと、よく通る声で言った。

('、`*川「誰にだってあることだよ。恥ずかしいし、馬鹿にする人もいるけど、でも」

('、`*川「いつかいい思い出になるよ、ね?」

(´;ω;`)「……」

 ポジティヴだなぁ、と彼はぼんやり思った。

('、`*川「それに、ほら、私もあるよ」

 そう言って、彼女は大きく息を吸う。



d('、`*川「ラ・ヨダソウスティアーナ!」



542 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 07:09:18.43 ID:0CF7YrKKO


 親指をびしぃと決める彼女を見ていると、ショボンの涙が段々と止まってきた。

('、`*川「……」

(´・ω・`)「……」

('、`;川「……えーとえーと、わ、私の寝言!」

 言うなり彼女は後ろを向いてしまった。

(/// *川「ね、ね! 意味不明でしょ!」

(´・ω・`)「うん……」

 先程までのポジティヴシンキングは一体何処へ行ってしまったのか。
 彼女はとても恥ずかしそうにしている。
 それを見て、ショボンは。

(´・ω・`)「……ありがとう」

(/// *川「え?」

(´・ω・`)「僕のこと、励ましてくれて」

 伊藤が真っ赤になって行くにつれ、彼の中の恥ずかしさは薄れていった。



543 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 07:12:21.40 ID:0CF7YrKKO


(´・ω・`)「学校、戻るよ」

('、`*川「本当!?」

 振り向いた彼女は、すごく嬉しそうで。
 ショボンは改めて、彼女への想いを確かめた。

(´・ω・`)「いつまでも気にしててもしょうがないよね。真の優等生は何事にも動じない筈だ」

('、`*川「うん、うん!」



 こうして、二人は学校へと戻っていった。

 そして、休み時間を狙って教室に入った彼らが見たのは、クラスメイトの土下座……よりも先に。

从#゚∀从「オマエラーーーッ!」

 鬼の形相をした先生、であった。

(;´・ω・`)「ごめんなさーいっ!」('、`;川

 そうしてショボンと伊藤が、既に屍と化していたクラスメイトの仲間入りをした後。
 皆で仲良く、ショボン合意のスーパー中二病タイムを始めたのだとさ。


 終わり



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