- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/20(土) 22:04:20.60 ID:1utaKVnA0
- 家に帰って寛いでいると、ドクオから「作戦会議だ、俺ん家こい」とメールが送られてきた。
随分急だなあ、なんて事を考えながら私服に着替えてドクオの家へ向かう。
やっぱりスカートよりもズボンの方が落ち着く。自転車に乗る時に風を気にしなくていいから。
それに、男として行動すると座った時などにパンツが丸見えになってしまう。
ツンから「あんた誘ってるつもりなの?」なんて注意されたので、急いで直したけれど。女の子は大変だ。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/20(土) 22:06:09.85 ID:1utaKVnA0
- ドクオの家に着き、インターホンを鳴らすとドクオがすぐに出て来た。
男物の服装をしている僕を見て、「男装僕っ子萌え」とか言い始めたので、一発殴った。
壁一面のゲームのキャラクターらしきポスターや、棚に並べられているフィギュア類にはもう慣れているので特に驚かずにドクオの部屋に入る。
なんだかここに来るたびに生活スペースが狭くなっていると感じるのは、僕の気のせいだろうか。
('A`)「気のせいじゃねえよ。毎週のように増えてるからな」
そうですか。この部屋を見てドクオの母親は何を思うのだろうか。それとも、何か思うのを既に止めてしまったのだろうか。
少しだけ気になり、ドクオに訊いてみると、遠い目をし始めたのでそこで会話を打ち切った。表情だけで察するのが友達だよね。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/20(土) 22:08:01.50 ID:1utaKVnA0
- (;´・ω・`)「で、作戦会議って何?」
取りあえず本題に入る。
('A`)「当たり前だろ、お前のブーン攻略作戦だよ」
攻略って……。そんな、女の子がいっぱい出て来る、ドクオの大好きなシュミレーションゲームみたいな表現でいいんですか?
彼はもう、ディスプレイの向こうへ旅立つ準備を始めているのではないかと、心配になった。
しかし、僕がドクオに向ける心配の目線を、彼は素敵に勘違いしたようで、
('∀`)b「大丈夫だ! 攻略なら任せとけ!」
親指を立てながら自信溢れる笑みで言い切る。余計心配になった。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/20(土) 22:09:51.77 ID:1utaKVnA0
- (;´・ω・`)「……まあ何を会議するかは分かったけれど、具体的にどういう作戦を立てればいいの?」
('A`)「ああ、そりゃまずはブーンにお前を意識させるところからだろうな」
と言い、僕の事をビシッと指さす。
('A`)「見た目は可愛いが、中身は男だ。ブーンはまだ、お前を男として見てるだろ?」
(´・ω・`)「まあ、それはそうだろうね」
('A`)「だからお前を女の子として見るようにブーンにアピールする」
こっからは少し真面目な話だ。と言い、ドクオが続ける。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/20(土) 22:11:07.14 ID:1utaKVnA0
- ('A`)「先に言っておくが、お前とブーンが結ばれるっていう事は、ブーンがお前の事を女として見るって事だ。それでいいのか?」
それ位は分かっていた。それに、僕はブーンと結ばれるのならそれでいいと思っている。
あからさまな女言葉を使ったりするのには抵抗があるが、口調に関してはこのままでいいだろうし。
見た目は女なので、女物の服を着るのもそこまで抵抗は無い。慣れるまでには時間が掛かりそうだけど。
(´・ω・`)「僕はそれでもいいよ。自分で言うのもなんだけど、もともと中性的な性格だったしね」
(*'A`)「確かにそうだな。……僕っ子として見れば違和感無いし」
何か危なげな事を呟いた後、ドクオが再び僕の事を指さす。
('A`)「まずはその服装からだな。おにゃのこが男の服着てるってのは萌えるが、ブーンの趣味じゃない」
そんな事を言われても、僕は男物の服しか持っていない。
流石に毎回姉から借りるのもどうかと思うので、週末にでも買いに行こうと思っていたところだ。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/20(土) 22:13:05.27 ID:1utaKVnA0
- ('∀`)「それだ!」
いきなり大きな声を出したドクオ。一体何事だろう。
(;´・ω・`)「な、何が?」
('A`)「ブーンと週末にデートしてこい」
……え?何を言い始めているのだろう、この人は。
デートだなんてそんな……いや、出来るなら凄く嬉しいけれど。
('A`)「お前男物の服しか持ってないだろ? だからさ」
とそこで区切り、ニヤニヤしながら続ける。
('∀`)「二人でショッピングでもしてこい。『これ似合うかなあ? ブーンはどう思う?』なんて言っちまえよ」
(;´・ω・`)「なんとまあベタなデート……」
ベタすぎて、もう二次元的な臭いすら感じさせる作戦だ。いや、ドクオの事だし本当にゲームか何かを参考にしたような気がする。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/20(土) 22:15:01.97 ID:1utaKVnA0
- ('A`)「あいつは色恋沙汰に関しては超が付くほどの鈍感だからな。ベタすぎても問題ないさ。むしろベタじゃないと効果がない」
ブーンの鈍感さには同意するが、いくらなんでもあからさま過ぎやしないだろうか。
その事をドクオに言うと、「俺を信じろ、お前を信じる俺を信じろ」などとよく分からないまま言いくるめられてしまった。
(;´・ω・`)「デートするのはいいけど……どうやって誘うのさ?」
いきなり「二人で買い物に行こう」なんて言ったところで、「ドクオも一緒に連れてくお!」なんて言われるだろう。
その点はどうするつもりなのか、聞いてみる。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/20(土) 22:16:59.80 ID:1utaKVnA0
- ('A`)「んな事は簡単だ」
とドクオは言い、作戦内容を話し始めた。ドクオの考えた作戦はこうだ。
まず、僕とブーンとドクオで買い物に行く予定を立てる。場所は郊外のショッピングモールでいいだろう。
そして当日、ドクオが「急用で行けなくなった」と僕とブーンに連絡する。
その後は僕とブーンでショッピング、まあデートだ、をする。
女の子らしく可愛らしい服を一緒に選んだりして、ブーンはドキドキ。嫌でも僕の事を女の子として見てしまう。
……やっぱりベタだ!ベタすぎる!
('∀`)「完璧な作戦じゃないか! さすが俺!」
(´・ω・`)「で、どのゲームを参考にしたの?」
('∀`)「ん? ああ、これだよこれ」
と言って、床に転がっていたゲームの箱の中から一つを選び、僕に手渡すドクオ。
描かれているのは、髪色がピンクやら緑やらカラフルな女の子。
やっぱり参考資料はこういうゲームだったのか……。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/20(土) 22:18:38.83 ID:1utaKVnA0
- (´・ω・`)「捨てよう」
(;'A`)「ま、待て! 早まるな! それは初回限定ば……」
(´・ω・`)「ドクオは未成年だからこんなの持ってちゃいけないよね? 捕まる前に捨てておくね?」
(;'A`)「鬼畜! らめえ! ひぎぃ!」
流石にそこまでするのは可哀想だし、協力してくれる事への感謝も込めて、それは冗談に留めておいた。
口調に問題があったから、一発殴っておいた。女の子の力なら大丈夫だよね、うん。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/20(土) 22:20:26.54 ID:1utaKVnA0
- 僕が誘うのは色々と問題があったので、ドクオからブーンにメールをしてもらう事にした。
('A`)「『ショボンの着せ替え衣裳買いに行くから、土曜日空けておけ。女性物下着も見放題だ。』と。これでいいか?」
(;´・ω・`)「………………」
もはや突っ込む気力も起きない。投げやりに、それでいいよ、と僕は言った。
しばらくして返信が来る。ドクオが見せてくれた。
( ^ω^)『ドクオが女性物売り場にいたら捕まりそうな気がして不安だからおkだお。ブーンがいれば大丈夫だお』
ドクオは静かに涙を流していた。たぶん男泣きと言うやつだ。
とにかく、これで作戦の第一段階は成功となった。
自分を傷付けてまで僕に協力してくれるドクオはなんていい男なんだろう。惚れないけど。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/20(土) 22:22:15.86 ID:1utaKVnA0
- (;A;)「なあ、俺ってそんなに不審者!? いるだけで捕まっちゃうの!?」
(;´・ω・`)「ま、まあ幼女幼女連呼する人だしねえ……」
(;A;)「別に襲わないもん! ただ愛でたいだけだもん!」
世間はそれをロリコンと言う。
(;´・ω・`)「えーと……とりあえず帰るね、僕」
泣き叫ぶドクオを尻目に、僕は帰る。いや、逃げる。ありがとね、と呟いて。
あんな所もあるけれど、ドクオは僕にとってかけがえの無い友達だ。
何だかんだ言って、僕達三人の中では一番物事をよく考えているし、頼りになる。
今まで何度も助けられてきた。
(´・ω・`)「何かお礼でもしなくちゃな……」
そう思いながら、僕は家路を行くのであった。
五話 おわり
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