- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/19(金) 00:29:56.64 ID:+zHlGlBo0
- 朝目覚めると……やっぱり女だった。ズボンではなく、Tシャツに山が出来ている。
はあ、と溜息をつき、学校へ行く準備を始める。
ブラジャーの締め付け具合と、スカートの風通しのよさに慣れるには、まだ時間が掛かりそうだ。
支度を終える頃にチャイムが鳴り、二人が迎えに来たことを知らせる。
( ^ω^)ノ「おいすー」
('A`)「うぃーす」
二人と挨拶を交わす。
いつも通りの二人の顔に、少し安心した。そして思い出す、昨日のドクオの言葉。
ブーンは今の僕をどう見ているのだろうか。その胸の内は、僕には分からない。
少し歩いて、ドクオが妙な提案をしてきた。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/19(金) 00:32:30.70 ID:+zHlGlBo0
- ('A`)「なあショボン、今度俺の家に迎えに来てくれないか?」
何事だろうと思い、ドクオに返す。
(´・ω・`)「どうしたの一体? だいたい、学校とは反対方向じゃないか」
その疑問に、ドクオが見た事もないような真面目な顔をして言う。
('A`)「一度でいいから体験してみたいんだよ、俺は」
(;´・ω・`)「何を?」
(*'A`)「かわいいおにゃのこの迎えが来るっていうシチュエーションだ!」
……速攻で断った。それなんてエロゲ?
悔し涙を流すドクオを冷めた目で見ながら、僕とブーンは歩き出す。
その後、ドクオによる「このエロゲのこのキャラのどこがどう素晴らしいか」演説を延々と聞きながら歩く羽目になった。
こうなるとドクオは止まらない事を知っているので、耳を素通りさせて受け流す。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/19(金) 00:34:17.47 ID:+zHlGlBo0
- 僕とブーンがドクオの止まらない演説に飽きてきた頃、クラスメイトのツンとクーに会った。
ξ゚听)ξ「あら、珍しいわね」
川 ゚ -゚)「やあ」
それぞれ挨拶を交わした後に、演説をしていたドクオにドン引きする二人。
まあ自業自得、というかフォローしようがないので僕とブーンは特に慰めない。
話題にされるのは、やはり僕の事だった。
ξ゚听)ξ「しっかし見事な変身具合ねえ……無駄にカワイイのがムカつくわ」
とツンが僕の事をまじまじと見つめながら言う。そんな事を言われてもどうしようもないのですが。
川 ゚ -゚)「ツンより胸があるな……」
至って冷静な顔で、さらりと問題発言をするクー。あ、後ろからもの凄い殺気を感じる……。
背後にどんな鬼が立っているか、想像するのも恐ろしい。
(;´・ω・`)「クーさん、その発言はまずいんじゃあ……」
ξ#゚听)ξ「クー? 次言ったらどうなるか分かってるでしょうね?」
手遅れだったようだ。僕の背後には、クーの発言に青筋をピクピクとさせているツン。
只ならぬオーラを感じた僕達は、足早にその場から立ち去る。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/19(金) 00:36:32.65 ID:+zHlGlBo0
- しばらくして聞こえてきたのは、町内全体に響き渡るのではないかと思うほどの、ツンの怒声。
電線からは一斉に鳥が飛び立ち、犬は吠え始め、周りを歩く人間は、何事かとその声の方向を振り返っていた。
( ;^ω^)「近所迷惑だお……」
(;'A`)「あれを表情一つ変えずにやり過ごすクーもすごいけどな……」
(;´・ω・`)「通報されないように祈っておくよ……」
僕達は、サイレンの音が聞こえてこないように、心の中で祈る。
学校に登校するつもりだったのが警察に連行、だなんて洒落にならない。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/19(金) 00:38:08.82 ID:+zHlGlBo0
- 学校に着き、上履きに履き替える。廊下を歩いていても、話し掛けてくるのは同じクラスの生徒ばかりだ。
どうやら、本当に他のクラスには情報が回っていないようだ。
もともと、委員会にも部活にも所属していないから他クラスとの交流も無いため、情報が広がる可能性も無い。ギコに感謝しなくちゃ。
その反動と言っていいのかは分からないが、教室に入った僕を待ち受けていたのはクラスメイトからの質問責めだった。
それでも昨日よりは勢いが減って、随分と楽だった。主に男子からの性的な質問は、「エッチなのはいけないと思います!」ではぐらかしたのもあるけれど。
教師側には僕の事が連絡されているのか、担任以外がこの姿を見ても何も言われなかった。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/19(金) 00:40:00.33 ID:+zHlGlBo0
- 授業中に、昨日寝る前に考えた事を思い出す。友達のままでいるか、想いを伝えるかの選択肢。
僕の正直な気持ちは、後者だ。好きだと言えるのなら好きだと言いたい。ずっと前から思っていた事だ。
だけど、友達でいたい気持ちもあった。三人で過ごす時間はとても楽しい。それを変えてしまう事が、怖かった。
ずっと変わらないと思っていた三人の関係。
でも、僕の姿が変わった事によって、その関係も少なからず変わってしまうだろう。ドクオもそう言っていた。
「中身も変わってみようかな」、眠る前に考えた。でも、臆病な自分に出来るのだろうか。
隣の席で熟睡しているブーンを見る。
( -ω-)「……おー……焼き肉……」
(;´・ω・`)「まだ未練があったんだ……」
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/19(金) 00:42:14.11 ID:+zHlGlBo0
- 僕は、ブーンとどんな関係になりたい?今までの関係じゃ駄目なの?
そして、ブーンとどんな事をしたい?今までの関係では出来ない事なの?
この胸に感じ続けてきた気持ちは、ライク?それともラブ?どっちなの?
自分自身に問いかけ続けて、答えを出す。
――決まったよ、ドクオ。
教師に見付からないように携帯電話を取り出し、決意が揺らがない内にドクオにメールを送る。
もう逃げ道を作らないために。もう自分の気持ちを抑え込まないように。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/19(金) 00:44:14.88 ID:+zHlGlBo0
- (´・ω・`)『決まったよドクオ。僕は、ブーンに思いを伝えたい。だから、協力してくれるかな?』
送信。
しばらくして、前の席に座っているドクオが携帯電話を開く。そしてすぐに返って来た返信のメール。
('A`)『当たり前だ。俺が協力するからには失敗は許さねえぞ』
ドクオらしく、何とも心強い返答だ。……さあ、これから頑張ろう。
長い間続けてきた片想いを、ハッピーエンドにするために。そして、エピローグを楽しむために。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/19(金) 00:46:04.46 ID:+zHlGlBo0
- 放課後、いつも通り熟睡している二人を起こす。
昨日の事をふと思い出し、寝ている二人の耳元で囁いてみた。
(´・ω・`)「ブーン、ドクオがステーキ奢ってくれるってさ」
(´・ω・`)「ドクオ、すごく可愛いツインテールの幼女が迎えに来てるよ」
ドクオの方は自分なりにアレンジ。これで起きてくれるだろうか。
( ^ω^)「ドクオ! ごちそうさまだお! 早く食べに行くお!」
(*'A`)「幼女! 幼女どこ!? お兄ちゃんはここだよ!?」
椅子を後ろへ飛ばしそうな勢いで立ち上がる二人。ブーン、食べるのが好きなところがすごく可愛いよ。ドクオ、幼女って連呼するのはまずい。
ドクオはクラス中から浴びせられる蔑みの目線など全く気にせずに、いる筈のないツインテール幼女を探している。
あ、それはツインテールでもツンなんだけど……うわあ、あれ本気で殴ったよ……。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/19(金) 00:48:29.16 ID:+zHlGlBo0
- (#'A`)「てめえ……俺の必殺技を悪用しやがって……痛ってえ……」
( ;^ω^)「二日連続で引っかかってしまうとは不覚だお……ていうかドクオの顔がますます酷い事になってるお」
二人分の嘆きの言葉に挟まれて帰り道を歩く。
あの後、クラスに残っていた女子のほとんどから攻撃を受けたドクオ。クーなんかはかなり悪乗りしていたように思う。
そして現在、ドクオは絆創膏や包帯まみれの酷い有様だ。まあ僕達の手当てが下手なだけで、大した怪我ではなかったのだが。
(;´・ω・`)「ツンさんに突っ込んでいったのは自業自得でしょ……」
( ;^ω^)「そこは否定できないお」
(#'A`)「男の夢を踏みにじった恨みは恐ろしいぞ……次はお前に同じ手を使ってやるからな……」
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/19(金) 00:50:15.93 ID:+zHlGlBo0
- ( ^ω^)「そういえば、ショボンにはどんな事を囁けばいいのか分からないお」
とブーンが訊ねてきた。僕が嬉しくて飛び起きてしまうような事か……。何があるかな、と少し想像してみる。
( ^ω^)「ショボン! 大好きだお!」、これは寝ぼけていたら飛び起きてしまうかもしれない。
( ^ω^)「ショボン! デートするお!」、これも飛び起きてしまうだろう。
というか、ブーンが耳元で囁いてくれたらすぐに起きてしまうだろう。それを口には出さないけど。
( ;^ω^)「そんな真面目に考えなくてもいいお、ショボン」
ブーンの声で思考を中断させる。妄想の世界へ旅立っていたようだ。
ドクオの方を向くと、ニヤニヤしながら僕を見ている。
(#'∀`)「ショボン、お前が何考えてたか俺には丸分かりだぜ? 次は覚悟しろよ?」
……寒気がした。ドクオが起きているときに眠るのは止めよう、と決意する。
ブーンは、「いったい何だお?」なんて聞かないで、お願い。
――いつもより賑やかな雰囲気で、僕達はそれぞれの家路を歩いているのであった。
第四話 おわり
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