- 1 名前:◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 12:54:25.16 ID:FNmnkrCs0
- その夜を今でも覚えている。
夕ご飯だからおりてきてー…と階下からおかあさんの呼ぶ声がした。
いつもより早い。…というか、さっきお父さんが帰ってきたばっかりだ。
それでも呼ばれたからには食べに行く。
別におかしいことじゃない。
私は読んでいた漫画を置き、部屋を後にした。
- 2 名前:◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 13:01:39.79 ID:FNmnkrCs0
- ζ(゚ー゚*ζ「今日ご飯はやいね。なんでー?」
ミセ*゚ー゚)リ「まぁ座って。食べながら話すから」
ζ(゚ー゚*ζ ?
おかあさんの様子は、今思うとやっぱりおかしかったと思う。
なんというか…落ち着きすぎていた気がする。
おとうさんとおねぇちゃんは普通だった。
ミセ*゚ー゚)リ「さ、食べましょ」
( ´∀`)
('、`*川 「「「いただきまーす」」」
ζ(゚ー゚*ζ
- 3 名前:◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 13:07:39.29 ID:GDCZa2ya0
- ミセ*゚ー゚)リ「…さぁ、話すから聞いて頂戴ね」
('、`*川 「なに? お父さんと旅行にでも行きたいとか?」
ζ(゚ー゚*ζ「おねぇちゃんの携帯料金払うのやめるとか?」
('、`*川 「ちょ、それは無理! 金ない! むしろ欲しいくらいなのに!」
ζ(゚ー゚*ζ「大学生なんだからバイトすればいいのにー」
ミセ*゚ー゚)リ「…家族をね、一人、増やしたいのよ…」
- 4 名前:◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 13:14:56.72 ID:nxEFEXGt0
- ( ´∀`)「……」
ミセ*゚ー゚)リ「…わたしがこの家に来くる前の、前の人との子なんだけど」
ミセ*゚ー゚)リ「…お父さんが入院しているから、一度だけで良いのできてもらえませんか?」
ミセ*゚ー゚)リ「…一週間くらい前に、連絡があったの」
ミセ*゚ー゚)リ「…お父さんと相談したわ」
ミセ*゚ー゚)リ「…そしたら、お前が決めていいって言ってくれた」
( ´∀`)「……」
ミセ*゚ー゚)リ「…私は会いに行った」
- 6 名前:◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 13:17:21.47 ID:nxEFEXGt0
- ミセ*゚ー゚)リ「二人には再婚の経緯を話したことはあったけど、離婚のことはちゃんと話したこと無かったよね?」
- 7 名前:◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 13:26:21.84 ID:cwDy6RmC0
- ミセ*゚ー゚)リ「離婚したのは…私が子供に暴力を振るっていたからなの」
('、`*川 「えっ!」
ζ(゚ー゚*ζ「えぇっ!?」
( ´∀`)「……」
ミセ*゚ー゚)リ「結婚してマンションに引っ越したとき、そのマンションで…いじめみたいなものにあって…」
ミセ*゚ー゚)リ「若いからあれもこれもって雑用みたいに役割押し付けられて、上手く役割をこなせなかったら陰口叩かれて…」
ミセ*゚ー゚)リ「そのうちわかったんだけど、新しく来た人がいびられるのがそこの慣わしだったみたい」
ミセ*゚ー゚)リ「私はイライラを子供にぶつけていたの…」
- 8 名前:◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 13:30:56.24 ID:cwDy6RmC0
- ミセ*゚ー゚)リ「でもね…一番嫌だったのは…」
ミセ*゚ー゚)リ「暴力をされても泣かないで、おどおどしながら私の様子を伺っている」
ミセ* ー )リ「…自分の…息子だったの」
( ´∀`)「……」
(' `*川 「……」
ζ(゚−゚*ζ「……」
- 9 名前:◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 13:40:33.09 ID:EnzI6MpG0
- ミセ* ー )リ「前の人は家事育児にてんで無関心だったから、そういう生活がずっと続いたわ」
ミセ* ー )リ「あの子も泣かないでいたし、私も夫にDVをばれたくなかったから三人のときは普通にしていたし」
ミセ* ー )リ「……」
ミセ* ー )リ「先に離婚の話を持ちかけたのは私の方」
ミセ* ー )リ「もう何もかも耐えられなくなって、DVのこともマンションのことも何もかも喋ったわ」
ミセ* ー )リ「そして、これ以上アナタたちといたら、私が死ぬか、息子を殺しちゃうかもしれないって言ったの」
ミセ* ー )リ「…楽になりたい一心で、そう、言っちゃったの…」
- 10 名前:◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 13:48:59.39 ID:i6pUqSOZ0
- ( ´∀`)「…おかあさんはそうとう追い詰められていたんだモナ」
( ´∀`)「…薬もいろんなものを飲んでいたモナ」
ミセ*゚ー゚)リ「…でも、私は自分から家族を切ったの」
ミセ*゚ー゚)リ「…そして離婚したわ」
ζ(゚−゚*ζ「…あ、あの…」
ミセ*゚ー゚)リ「なに?」
ζ(゚−゚*ζ「え!? あ、う、ううん…、なんでもない…」
ミセ*゚ー゚)リ「…ごめんね。今は全部話させて…」
ζ(゚−゚*ζ「…ウン」
- 11 名前:◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 14:03:18.08 ID:YQwv31wi0
- 本当のお母さんは私を産むのと引き換えに死んでいった。
お母さんがいる家が羨ましくて。
おねぇちゃんだけがお母さんを知っていて…。
おねぇちゃんだけがお母さんと一緒の写真を持っていて…。
小学校に入ったとき、お父さんが再婚した。
おねぇちゃんにとっては二番目のお母さん。
それは私にも言えるけど……おかあさんは初めてで…。
授業参観にもきてくれて…。
やさしくて、料理がおいしくて、私にはおねぇちゃんよりちょっぴり甘くて…、
…正直言って、わたしの知っているおかあさんとは別人すぎた。
- 13 名前:◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 14:10:32.62 ID:Y7e1GhIH0
- ミセ*゚ー゚)リ「離婚が成立して、私は実家に戻って、高校のときの友達と遊ぶだけの生活をしていたわ」
ミセ*゚ー゚)リ「でもね、やっぱり友達ももう、結婚して子供がいるのよ…」
ミセ* ー )リ「そうやって他人の家庭を見て気づくの。…ああ、やっぱり私は愚かだった…って」
ミセ*゚ー゚)リ「後悔したってもう連絡先だってわからない。そもそも連絡なんてできるはずもない」
ミセ*゚ー゚)リ「そんなとき、お父さんと出会ったの」
( ´∀`)「モナ」
- 19 名前:◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 14:23:20.04 ID:IgNmrrek0
- ミセ*゚ー゚)リ「お父さんは、早くに亡くした奥さんを思いながら、あなたたち二人を一生懸命育てていたわ」
ミセ*゚ー゚)リ「そして写真を見せてもらったの。父子家庭だけれども本当に幸せそうに見えた」
ミセ*゚ー゚)リ「私は泣いたわ。自分の愚かさに泣いた」
ミセ*゚ー゚)リ「そして全部話したわ。前の人以外誰にも言わなかった、後悔していること、すべて」
ミセ*;ー;)リ「そしたらこの人がね、言うのよ」
ミセ*っー;)リ
ミセ*゚ー⊂)リ
ミセ*゚ー゚)リ「今のアナタは世界中の誰よりいい母親になれます、って」
('、`*川「お父さんかっこぃー♪」
ζ(゚ー゚*ζ「うー…ちょっとジーンときた…」
(*´∀`)「モナモナ」
- 22 名前:◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 14:36:40.70 ID:pPJWUBZS0
- ミセ*゚ー゚)リ「それでもう号泣。バーみたいなとこだったんだけど、
全員こっち見るし、おかあさん泣き止まないし、あなたたちを家に残しているしで、
あのときのお父さんは本当に困ったと思うわ」
(;´∀`)「忘れられないモナ」
ミセ*゚ー゚)リ「その後は今の通り。私はこの家で、今でも良いお母さんを目指してがんばってる」
('、`*川「今だっていいお母さんだよ」
ζ(゚ー゚*ζ「ウン♪ おかあさんがお父さんの再婚相手でよかった!」
ミセ*っー;)リ「…ちょっと…もう、…まだ本題に入ってないのに…」
( ´∀`)「モナモナ。とりあえずご飯食べるモナ。続きはそれからモナ」
- 24 名前: ◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 14:46:01.70 ID:cwDy6RmC0
- −夕食後−
('、`*川 「そういえば本題って新しい家族ってことだよね?
最初お母さんが妊娠したのかと思ったよ」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、それ私もちょっと思った!」
ミセ*゚ー゚)リ「それは無理よ。お父さんが」
(;´∀`)「そそそ、それはどういう意味モナ!?」
('、`*川「ですよねー」
ζ(゚ー゚*ζ「ですよねー」
(;´∀`)「どういう意味モナ!!」
- 25 名前: ◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 15:03:23.03 ID:OiZgfRQ50
- ミセ*゚ー゚)リ「新しい家族っていうのは、前の人との子のこと」
(;´∀`)「話し始めちゃうモナか」
ミセ*゚ー゚)リ「あの子から電話がきて、私は病院に行ったわ。
入り口には一人だけポツンと立っている人がいて、その人が顔を上げた瞬間、
『ああ、この子だ。やっぱり父親似の顔になった』って思ったわ」
ミセ*゚ー゚)リ「こっちから挨拶しようと思ったら向こうからきて、
『母さんですよね?すぐわかりました』って言われちゃった」
('、`*川「お母さんぱっと見の印象が若いからねぇ。シワとかも少ないしあんま老けて見えないし」
ミセ*゚ー゚)リ「肌はひとえに努力よ」
ミセ*゚ー゚)リ「二言三言話して、お互い黙っちゃって、そのまま病室に行って」
ミセ*゚ー゚)リ「本当に久しぶりに三人になった…」
- 26 名前: ◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 15:15:05.59 ID:o7oLM/ye0
- ミセ*゚ー゚)リ「あの人は驚いていたわ。全部息子が内緒でやったことみたい」
ミセ*゚ー゚)リ「だから私も驚いちゃって。そしたら」
『父さんが自分のやりたいことをやっていいって言ってくれたから、母さんをここに呼びました。
先に言うと反対されるかもしれなかったから、全部隠してました。ごめんなさい。
俺、写真がほしいんです。家族三人の写真が』
ミセ*゚ー゚)リ「そう言って写真を撮ったの。たった一枚だけ。妙に型の古いデジカメで」
『ありがとう父さん母さん。正直こういうことをするのに意味あるか自分でもわかってないけど…
ある人に、今しかできないなら幸せか不幸か考えるのは二の次にしろ。
価値観なんて変わっていくもんだ……って言われて。
だからありがとう。今の俺はこの世に生まれて、また三人揃って、嬉しいって思ってます』
ミセ*゚ー゚)リ「あんなにひどい扱いをした子にそんなこと言われちゃった…」
- 28 名前: ◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 15:24:25.83 ID:SE+y9Ry+0
- ミセ*゚ー゚)リ「それから入院しているあの人と二人だけで話したの。
『笑えているなら安心した』
『モララーを頼む』
『幸せにしてやれなくてごめんな』……そんなようなことを言われたわ」
ミセ*゚−゚)リ「……もう助からないんですって。あの人の最後の願い、わたしも同じ気持ちなの」
ミセ*゚ー゚)リ
ミセ*゚ー゚)リ「どうかここの家族に私の息子モララーを迎えてもらえませんか?」
- 29 名前: ◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 15:33:23.18 ID:IgNmrrek0
- ζ(゚ー゚*ζ「うん。大丈夫だよ」
('、`*川「いいけど、その子って何才?」
ミセ*゚ー゚)リ「16歳よ」
ζ(゚ー゚;ζ「えぇっ!? 同い年なのっ!?」
('、`;川「お母さんの年齢から考えて小中学生かと思った…」
ミセ*゚ー゚)リ「できちゃった婚だったしねぇ。
ちなみに今年で17歳だからデレより学年は一個上よ」
- 30 名前: ◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 15:44:54.57 ID:OiZgfRQ50
- ( ´∀`)「デレは小さい頃、『おにぃちゃんがほしかったぅ』ってよく泣いてたモナ」
('、`*川「あー懐かしいーそれ。今でも傷つくわー」
ζ(゚ー゚;ζ「そ、それは昔の話でしょっ! ていうか言われるようなことしていたくせに!
何回私のお小遣い持ち逃げしたのよ!!」
('、`*川「どうどっちもに読むんだから漫画代は折半が基本でしょ」
ζ(゚ー゚*ζ「おねぇちゃんは昔っから人のお金を当てにしすぎなのよ」
ミセ*゚ー゚)リ
ミセ*^ー^)リ「…よし、洗いものしなくっちゃね」
- 31 名前: ◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 15:50:54.77 ID:6/Z7aD2s0
- 新しい家族。
そのことよりも、やさしいおかあさんの過去が私にとってすごすぎて、
ある意味冷静になれたのかもしれない。
ゴハン食べてるときになんとなく予想できてたし。
でも私よりも一コ上なんだーって思うと不思議な感じがした。
- 32 名前: ◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 15:59:26.53 ID:/rnIji7I0
- それから『モララー』さんのことがよく話題に上がるようになった。
写真はおかあさんもまだ受け取ってなかったのでどんな人かはわからないまま。
おかあさんの話だと磨けば光る、らしいけどあの人は親バカだから当てにならない。
今は高校を休学しているらしい。
すぐにこっちにくるのかと思ったけど、
『父さんが生きているうちは父さんのアパートに居たいです』
って言ってる。考えてみれば当たり前かも。
ていうかまだ部屋も無いもんね。
- 33 名前: ◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 16:10:16.84 ID:8IZhYal50
- おかあさんの前のダンナさんが亡くなった。
お葬式に行ったおかあさんは手に包帯を巻いて帰ってきた。
遺族の方たちと小競り合いになったみたいだモナって迎えに行ったお父さんは言った。
なんでそんなにあっさりしてるの?
そうお父さんに詰め寄ったけど、
『人を裏切るっていうのはこういうことなのよ』
おかあさんが呟くのが聞こえて何も言えなくなった。
『でもモララーがうちに来ることは変わりないから。あの人が周りを説得しておいてくれて、遺言にまで書いてくれた』
おかあさんは嬉しそうだった。
- 35 名前: ◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 16:19:06.89 ID:7zisgVco0
- おねぇちゃんがバイトを始めた。
理由はお小遣い全額カット。
私は高校生なので変わらない。
ただお金の管理をこれまで以上にちゃんとしないといけない。泥棒対策だ。
お父さんもお小遣いが減った。でも変わらずだ。
もしかしたら男一人だったから息子が嬉しいのかもしれない。
お父さんだけ先に顔合わせをした。
その夜は一人で嬉しそうにお酒を飲んでいた。
- 37 名前: ◆sJZmtVUczw 投稿日:2008/10/24(金) 16:23:38.46 ID:7zisgVco0
-
――――――そうして、私とおねぇちゃんの、モララーさん顔合わせが決まった
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