2 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/19(土) 21:58:58.98 ID:HY0/G8/l0
 
今のところ唯一の出入り口である木造のドアを目指す。
シャキンが体当たりで開けたから、完全には閉まらなくなってしまったようだ。
左右のドアが少しだけずれて、夜の闇が顔を出している。

やっと外に出られる。外に出られただけで、危険が無くなる訳ではない。
しかし閉塞的な空間から逃げられるというだけで、僕は心が晴れた。
外に出ようと、ドアに手をかける。その時だった。


( ;・∀・)「!」

(;`・ω・)「!」


足音がした。ドアの外からだ。
何か引きずるような音と共に、こちらに向かっている。



11 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/19(土) 22:11:17.81 ID:HY0/G8/l0
 
逃げよう。最初はそう思った。
しかしある考えが浮かび、思いとどまる。


(;`・ω・)「……警察か?」


そうだ。その可能性がある。
ギコさんたちが呼びに行った警察が、到着したのかもしれない。

もしそうなら大団円だ。この恐怖から解放される事になる。
ただしトカゲ男だった場合、今度こそ殺されるだろう。
でもこのまま逃げ続けるのも不可能だ。だったら、助かる可能性に賭けたい。
シャキンとデレも同じ考えだったのだろう。ドアの前で、緊張した面持ちで相手を待っている。


( ;・∀・)「……!」


ドアの隙間から、人の手が現れた。トカゲ男じゃない。
ただし、ドアを開けたのは、警察でも無かった。


(;゚−゚)「……みんな」

(;`・ω・)「しぃさん!」



20 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/19(土) 22:16:20.80 ID:HY0/G8/l0
 
うつろな目をして、血の気が引いた顔で、しぃさんは倒れ込むように入ってきた。
シャキンが受け止める。しぃさんの荒い呼吸に、泣き声が混じってきた。


(*;ー;)「……死んじゃった」

( ;・∀・)「え?」

(*;ー;)「ギコ君……死んじゃったよ……」


何を言っているのかわからなかった。
ギコさんが死んだ? 一体何が起こったっていうんだ?
思考が空回りする。考える事が億劫で堪らない。


(;`・ω・)「トカゲみたいな奴にやられたんすか!? ハインさんは!?」


シャキンが質問しても、しぃさんはずっと泣いているばかりだった。
僕たちはしぃさんを連れて、ロビーのカウンター前まで行った。



30 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/19(土) 22:20:54.12 ID:HY0/G8/l0
 
(*;ー;)「……」

(;`・ω・)「……話して下さい」

(*;ー;)「……うん」


嗚咽混じりの声で、しぃさんはゆっくりと語った。
ギコさんを殺したのは、トカゲ男では無いらしい。軍服を着た者たちだったそうだ。
ギコさんはその者たちに、助けてくれと声をかけ、マシンガンで蜂の巣にされたらしい。
説明されても、何が何だかわからない。人間に、殺されたっていうのか?


( ;・∀・)「……」

(;`・ω・)「……ハインは」

(*;ー;)「逃げてる途中ではぐれた……」

(;`・ω・)「……そうすか」


わからない。何もかもわからない。
化け物に襲われたかと思ったら、今度は、人間?
本当に、訳が分からない事ばかりだ。



41 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/19(土) 22:27:12.33 ID:HY0/G8/l0
 
(*;ー;)「……」

( ;・∀・)「実は……ドクオも殺されたんです。化け物みたいな……いや、化け物に」

(*;ー;)「みんな……死んじゃうのかなあ」

(;`・ω・)「そんな事、絶対にさせない。生き残るんす。絶対。絶対……」


シャキンの言葉は、まるで彼自身に言い聞かせているように聞こえた。
化け物に、軍人。こいつらは、何か関係性があるのだろうか。
考えても仕方のない事か。今は他にしなければならない事があるだろう。

1:僕はホテルから脱出しようと提案した
2:僕はホテルの中で隠れる場所を探そうと提案した
>>45



45 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/19(土) 22:35:53.06 ID:vbK1XuOk0




52 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/19(土) 22:42:53.17 ID:HY0/G8/l0
 
ホテルには、化け物がいる。
ここに留まっても殺されるのを待つだけだ。


( ;・∀・)「逃げよう! ここから逃げよう!」

(;`・ω・)「……」


シャキンは何も答えなかった。それが答えだと考えた。
僕はデレの手を取って、ドアを開けた。
生ぬるい風が吹き込み、舐めるように体を包む。

懐中電灯の明かりを消し、暗い闇に飛び込んだ。
月明かりだけで進むのは大変難しかったが、誰にも見つからないようにするにはこれしかない。
ホテルを壁沿いに周り、裏手に出る。破れたフェンスをくぐり、走った。


( ;・∀・)「……!」


すると、林の向こうから、眩しい光の点がいくつも迫ってくるのが見えた。
あれがギコさんたちを殺した、軍人たちなのだろうか。
しぃさんはシャキンの体にしがみつき、恐怖に震えている。



58 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/19(土) 22:47:11.73 ID:HY0/G8/l0
 
立ち止まった僕の肩を掴む者がいた。シャキンだった。
僕は強引に引っ張られ、近くの草むらに押し倒された。

すぐ隣にシャキンがしゃがみ込む。
しぃさんをかばうように腕の中で抱いている。
デレは僕の隣にいる。
月明かりに浮かび上がる青白い顔に、恐怖が表れていた。


( ;・∀・)「……」

ζ(゚、゚;ζ「……」

(;`・ω・)「……」

(;゚ー゚)「……」


明かりが迫ってくる。
ばれないように、体を小さくする。

大勢の足跡が聞こえてきた。規則正しく行進している。
影からそっと覗くと、軍服を着ている集団が光と共に目の前を進んでいった。
息を殺して、通り過ぎるのを待つ。



79 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/19(土) 23:00:29.77 ID:HY0/G8/l0
 
彼らの顔は、皆一様に無表情だった。
トカゲ男の目と同じ、爬虫類のような目をしていた。
簡単に人を殺す集団なのだ。まともな神経はしていないだろう。
彼らはホテルの壁際まで行くと、そこで立ち止まり、輪を作ってしゃがみこんだ。


「作戦確認を行う。目標は二匹。α-21タイプのフィアースと、K-01タイプのミミックだ。
 フィアースはあらゆる重火器に精通し、またゲリラの心得もある。
 遭遇時は合図を待たずに射殺しろ。爆薬の使用も許可する」



84 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/19(土) 23:02:21.00 ID:HY0/G8/l0

隊長らしき男が、輪の真ん中に立って何か説明している。
フィアース……ミミック……一体何の話だ。


「ミミックに関しては、戦闘能力はさほどでもない。
 ただし人間との区別がつかないので、個々の判断で判別し、射殺せよ。
 他チームと遭遇した時は、自分のIDナンバーを叫ぶ事だ。
 もし少しでもおかしな挙動を見つけた場合、見知った人間だろうと射殺する事。
 また先ほどあった通信で、一般人が近くにいると伝えられた。
 遭遇し次第、これも射殺する事。以上だ」


軍人たちは立ち上がり、片手を挙げて返事をする。
隊長は小さく頷くと、先陣を切って走り出した。
それに続いて、離れる事無く固まったまま走り出す。
まるであの小隊が、一つの生き物のようだった。



99 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/19(土) 23:11:58.98 ID:HY0/G8/l0
 
彼らが走り去っていくと、身を小さくしていたシャキンがそろりと立ち上がった。
近くに軍人たちがいない事を確認してから、その場に腰を下ろす。


(;`・ω・)「なあ」


小声で話しかけられた。


( ;・∀・)「何?」

(;`・ω・)「あいつらが話してた事、理解出来るか?」

( ;・∀・)「わからないよ。でもたぶん……」

(;`・ω・)「……奴の事だろうな」


トカゲ男が頭に浮かんだ。
あの化け物を退治する為に、奴らがやってきたんだろう。
でも奴らは味方ではない。
ギコさんを殺したし、堂々と一般人も射殺しろと言っていた。

自衛隊でも無いだろう。自衛隊が一般人を殺すはずがない。
では奴らは一体何なんだろうか。
何かの……特殊部隊のように思えたが、知識が無いので何とも言えない。



107 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/19(土) 23:19:19.69 ID:HY0/G8/l0
 
( ;・∀・)「……どうする?」

(;`・ω・)「どうするって……逃げるかどうかって事か?」

( ;・∀・)「うん」

(;`・ω・)「……」


考え込むシャキン。答えを決めかねているようだ。
先ほど軍人たちが、他にも軍人のチームがいることをほのめかしていた。

奴らはもっと大勢でここに来ている。
そしておそらく、このホテル周辺は、既に取り囲まれているだろうと想像がついた。
奴らはあの化け物をここに追い込んだ上で、殲滅しようと考えている。そう思えたのだ。
つまり僕らの逃げ道も無いって事だ。


ζ(゚、゚*ζ「……どこかに隠れていた方がいい」


珍しくデレが発言した。
デレも、このまま逃げれば奴らに捕まる、と主張しているようだ。
ただし隠れるといっても、せいぜい林の中で、息を潜めて身を隠す事くらいしか出来ない。
そんな事で、奴らから逃げられるのだろうか?



118 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/19(土) 23:28:24.34 ID:HY0/G8/l0
 
やっぱり逃げよう。僕がそう言おうとした時、ガラスの割れる音が言葉を遮った。
顔を上げると、最上階のガラス窓の一つが割れ、キラキラとひかる破片が宙を舞っていた。

地面に伏せて、息を殺す。何か飛び出してくるのかと思ったが、それ以上の事は起こらなかった。
銃弾だ。シャキンが小声でそう言った。銃声なんて全くしなかったが、僕もそんな気がしていた。
発砲したのは奴らだろう。つまり、例のトカゲ男と出会ったんだ。そして、撃った。


(;`・ω・)「……相打ちしてくれりゃ、万々歳なんだがな」


聞こえるか聞こえないかぐらいの微かな声で、シャキンが呟いた。
僕らが助かるには、そうなるしか無いだろう。

光が漏れないように、携帯をそっと開いた。
相変わらず圏外だ。デジタル時計の表示は、午前0時を過ぎている。
長い夜は、まだ終わりそうにない。


参の禍『 詰 』 完



続く

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