155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 22:55:17.57 ID:mvkFJZFb0

ペキンに行きたいと脈絡もなく言われたらどうしたらいい。

どうして?とストレートに訊くと、さして表情を変えず静かに呟いた。僕に言ってるように聞こえなかった。

('A`)「月食が見たいんだ」



156 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 22:58:18.59 ID:mvkFJZFb0



('A`)ドクオはペキンで月食を見たいようです



158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 23:03:10.87 ID:mvkFJZFb0

そんなわけで僕は彼のためにいそいそと資金を集め、次の月食までにペキンに行く準備を進めるわけだ。
バイトの量も三つから四つに増やして、生活も切り詰めた。
彼の食事に対し、圧倒的な貧しさを誇る僕の食事を見ても彼は何とも言わなかった。
僕は、食欲がないんだ、とか、ダイエット中なんだ、とか色々言葉を用意していたのに全て空回りに終わってしまった。
僕が毎日バイトから帰ってきても、彼は部屋の隅で朝と同じように膝を抱いて、ぼんやりと外を見ている。
僕が服を脱いでパンツ一枚になろうと、そのままごろんと寝転がったりしても彼は何の反応も見せなかった。

横になってしまうと、そのまま眠ってしまいそうだったので、いそいそと立ち上がり、晩ご飯の支度をしようと思った。
流しに彼のコップが置いてあると、そこに彼の一日を見つけたようで、どこか安心してしまう。
僕はよかった、と思いながらそれを洗い、とうに壊れた冷蔵庫から野菜と豚肉を取り出した。
久々にきれいな野菜とお肉が手に入った。
普段目にかかっている僕の前髪を、輪ゴムを使っておでこの上で一つくくりにして、錆びかけの包丁を握った。
きゃべつをとすんとすんと切っていく。



160 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 23:06:37.04 ID:mvkFJZFb0

彼とペキンに行くにはまだまだ足りない。
次の月食までまだ日があり、滞在やら何やらの期間を考えるともっともっと金がいる。この身はもう少し、粉に出来る。
考えごとをしながら包丁を握るものではない。ゴリッと指先を切ってしまった。
痛い、と反射的に声を漏らし、包丁を落としてしまう。カラカラとアスファルトの床をすべる。

('A`)「どうしたの?」

部屋の隅から細い、彼の声が聞こえた。
大丈夫、とだけ返してぼたぼたと流れ続ける血をどうしようかと考える。
止血、止血か。心臓よりも高い位置に、指を持ち上げて、いや、まずは洗浄か。
なんて考えて、溢れでる水の中に指を突っ込む。血は絹のようにちりぢりに溶けて、円を描いて流れていく。



161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 23:10:37.90 ID:mvkFJZFb0

('A`)「だめだよ。それじゃあ血は止まらない」

自殺するんじゃないんだから、と彼は僕の手をとり水から引き抜く。
蛇口を閉め、少し混乱していた僕をさらに混乱させる。食器拭き用の布巾をとると包むようにして僕の手を拭いた。

('A`)「深く切ってるね。血は止まらない」

三人称で語らないでほしかった。
しかし、久々に彼に触れられて僕は不覚にも舞い上がってしまい、カチコチにその場で固まっていた。
体中が熱くなっていく。
血もそれに呼応して、ごぽごぽと溢れる。指先から、どばどば流れる。
血は僕の指を流れ落ち、僕の手を持つ彼の右手を伝っていく。
ああ、だめ。だらしなく肘までズレた彼の白い長袖がじんわりと赤色に染まっていく。
放してよ、と僕は言う。これ以上汚れて欲しくないから。
放さない、と彼は言う。今の君は落ち着きがないから。



162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 23:14:39.56 ID:mvkFJZFb0

('A`)「…………」

川 ゚ -゚)「やっ…放して」

僕は、これ以上彼に触られていると気が変になりそうで、どうしようもなくなる。

彼はそんな僕の態度を知ってか、静かに指先をくわえた。
彼の舌が、僕の傷口の周りをうねうねと舐め回し、数度血を味わうと、ゆっくり口を離した。
だらしなく涎が指先から彼の唇へと伸び、少しいやらしい気持ちになる。
唾でぬるっと光る指先を二人で見つめた。



164 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 23:19:34.51 ID:mvkFJZFb0

('A`)「よくない味がする。病院へ行こう」

切り口なんだからよくない味なんてするわけないのに。
なのに僕は声を出すのも忘れて頷いて、服を着替える。彼はいそいそと僕の指先に絆創膏を貼ってくれた。

さ、行くよ。と手をひかれた。

川 ゚ -゚)「あ、そと、外……」

彼が外に出るのは何ヶ月ぶりだろう。もしかして何年ぶりかもしれない。
僕が躊躇っていると、彼からは信じられないくらい強く手を引かれた。
よろよろと転びそうになりながら、ついていく。



168 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 23:22:47.21 ID:mvkFJZFb0

('A`)「…………」

彼は何も喋らなかった。
僕は、久々に触る(それも僕からではなく)彼の温度に感動して、ますます血が体中を巡る。
僕はほとんどに握られている手に力を込めていない。
それなのにぐいぐい引っ張られるのは彼がとても力を込めて僕の手を持っているからだ。
いや、引っ張るのだから、それは当然なのか。ああ、分からないけど、僕が嬉しいのは確かだ。でも。

川 ゚ -゚)「だ、だめ」

('A`)「何が?」

僕は思い切って立ち止まり、彼の手を握り返す。



170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 23:25:05.81 ID:mvkFJZFb0

川 ゚ -゚)「ペキン、行けない」

('A`)「…………」

川 ゚ -゚)「行けない。行けなくなる。お金、貯めないと」

第一、指なんてほっとけばくっつくはずだ。

('A`)「いいよ。それよりも僕は君が病院に行かないほうが困る」

川 ゚ -゚)「だめ」

彼は乱暴に僕の手を自分のほうに引き寄せた。
僕はよろけて彼に近づく。
そのまま絆創膏を思い切り剥がした。少しの暴力だが、指先がぴりりとする。

そしてそのままくわえこむ。



172 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 23:27:29.26 ID:mvkFJZFb0

('A`)「ほら、いけない味がした」

川 ゚ -゚)「どんな味?」

('A`)「君の血の味」

川 ゚ -゚)「僕の血はいけない味?」

('A`)「普段舐めても血の味はしない。血の味がするのは怪我をしているからだ。怪我をしているのはよくない」

ほら、だから、行こう。
再び強く手をひかれ、僕の足りないおつむでは、彼の言っている言葉遊びついていけない。



174 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 23:29:59.53 ID:mvkFJZFb0

川 ゚ -゚)「……ペキン、遠いね」

('A`)「この世の楽園だからね」

発展途上国、その中でも最悪と言われるトウキョウに僕らは住んでいる。
物心がついたときから親はいなくて、その代わり彼がいた。
一日、不幸を見なければ次の日は台風でも来るだろうという土地だ。
以前、拾った新聞にトウキョウのことを社会のゴミ捨て場、と喩えられていた。
彼はそれを読んで、言い得て妙だ、と呟いていたのを覚えている。

彼曰く、トウキョウは数百年前まで世界でも有数の最高水準の都市だったらしい。

川 ゚ -゚)「ペキン、本当に行けるのかな?」



175 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 23:33:08.14 ID:mvkFJZFb0

ペキンの通貨はペリカ。
1ペリカは1万円で換金される。

僕が一日、死ぬ気で働いたとしても三千円。

('A`)「僕も働くよ」

川 ゚ -゚)「いい。いらない。君は僕が死んだら働けばいい」

('A`)「……東京が腐る前まで、北京なんて簡単に行けたんだ」

彼の口から言葉がでると、それはどこか異世界のものに聞こえる。
同じペキンはペキンでもどこか、違って聞こえる。



176 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 23:36:12.39 ID:mvkFJZFb0

('A`)「だけどいつからか逆転してた。そのまま気付いたらはるか、かなわなくなってた」

川 ゚ -゚)「?」

('A`)「僕らは最下層に生きている。昨日だって、今日だって、最下層だ」

川 ゚ -゚)「……?」

('A`)「でも血は流れてる。赤い血だ」

川 ゚ -゚)「………?」

('A`)「人間として数えられる赤い血なんだろうか」

川 ゚ -゚)「人間だよ?」

('A`)「人間じゃない。僕らには戸籍も個人としての権利もない。
人間じゃないんだ。いうなれば鼠だ。げっ歯類。哺乳類の足元でそのおこぼれをもらって生きる」

川 ゚ -゚)「よくわからない…」

ここにいる人間は、彼みたいに深いことを考えない。感情のまま生きている。
僕はあたまも悪いから、なおさらよくわからない。



177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 23:41:38.54 ID:mvkFJZFb0

('A`)「僕は人間でいたい」

川 ゚ -゚)「人間?」

ほら、あれを見て、と彼の指を指す方向に顔をやる。



178 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 23:44:53.49 ID:mvkFJZFb0

どこから現れたのか、ここらでは見たことも無いぐらいきれいな服を着た女が、
汚らしい男たちに襲われている。
あっと言う間に裸にひん剥かれる。
女は泣き叫ぶ。
周りに人が集まり、手を叩いて笑っている。
女の衣服を分配する。
一人の男が、女を蹴り上げる。
ぐえ、と鳥の首を絞めるような声が上がる。
一瞬、凍りついたように全員が止まり、

連鎖が起こる。

もう一度、蹴る。
もう一人、蹴る。
みんな、一斉に蹴る。
蹴る、蹴る、蹴る、蹴る、蹴る、蹴る。
蹴っている。

あそこにいるのは、人間だろうか。



180 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 23:59:46.41 ID:mvkFJZFb0

('A`)「いつもあの場所で女を犯している。今回のあの女は多分、
   ヤクザの愛人かなんかだったんだろう。だけどへまをしてよりにもよってトウキョウに棄てられてた」

一通り、蹴り終えると、体中真っ赤な女がその中心に現れる。早くも青あざが浮きはじめ、靴の跡がついている。
ひっく、ひっくとすすり泣きしていた。
くの字に曲げた足のつけねに豊かな陰毛が見える。

('A`)「アレと一緒だ」

川 ゚ -゚)「ごめん、わからない……」



182 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/13(日) 00:02:41.08 ID:FGg6NM+60

誰かの合図で、最初に蹴り出した男がチャックを下ろし、ペニスを取り出した。
勃起して、真っ赤に上をむいている。
女は許してください許してくださいと泣いている。

男は女の片足を持ち、強引に股を広げると、そこへ腰をおとした。

破裂音に近い歓声があがる。

一人、また一人とペニスを取り出して、女に近づいていく。

('A`)「もう行こう。見ているのがバレたら僕らがまずい」

強く彼に手をひかれて、僕はまたよろめく。
ふらふらとしながら言った僕の言葉は、彼に届いたのかな。

川 ゚ -゚)「人間じゃないなら、ここはどこ?」



183 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/13(日) 00:07:05.29 ID:FGg6NM+60


('A`)「下衆の世界だ」

ホームレスの老婆が腐った猫を檻に詰め込んでいた。
猫は腐っていた。
手のひらほどのゴキブリが、老婆に絡み付いていた。
猫は腐っていた。

パンパン、と銃声が響いた。
そちらを見ると、ビルの隙間で明らかに薬付けの女を後ろから男が犯していた。
足元に数枚の小銭が落ちている。
パンパンというのは彼らのセックスの音だった?



185 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/13(日) 00:09:10.37 ID:FGg6NM+60

煙がもくもく辺りを包む。
前方の道路の真ん中で誰かが何かを燃やしている。
臭すぎて涙が出る。
火かき棒で黒い塊をつつく初老の男が笑う。歯が一本しかない。
火かき棒の先では、黒い塊が少しだけ動く。
歯が一本しかない。黒い塊は動かなくなる。
口の中に歯はほとんどない。黒い塊が丸くなっていく。丸い。



186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/13(日) 00:11:33.17 ID:FGg6NM+60

緊急の外来ということで、普段でも馬鹿高い診察料の数倍高い値段をもっていかれた。
その割に、薬臭い水を数滴つけ、汚れた包帯を巻いただけだった。

ペキンのために貯めていたお金はほとんどなくなってしまった。

彼女が呟いた気がする。
ごめんなさい、と呟いた気がする。
僕は無視して呟いた。

('A`)「ああ、月食か。見たかった、のかも、なぁ」

千切れ千切れの言葉だった。



188 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/13(日) 00:14:31.66 ID:FGg6NM+60

歯の無い男はいなくなっていた。
道路の真ん中では黒いかたまりが落ちている。
それだけ。で。ある。

ビルの隙間に、くしゃくしゃの女がいる。
卍の形で崩れている。
へらへら笑って、だらしなく股をいじっている。
僕に気付く。
僕は何も言わない。
だから女が声をかける。



190 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/13(日) 00:18:20.46 ID:FGg6NM+60

ξ )ξ「ねえ、今なら500円でいいのよ」

('A`)「薬漬けの女なんて買うほうがどうかしている」

僕は瓦礫を一つ、拾うとそれを女に向かって投げる。
瓦礫は放物線を描き、女の腹に命中する。
女がぐえぐえと嘔吐する。
女はしばらくすると笑い出した。

老婆はいない。
腐った猫が檻の中で鳴いていた。
ゴキブリが、待っている。大きな大きなゴキブリが、猫が鳴くのを待っている。



191 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/13(日) 00:20:46.10 ID:FGg6NM+60

同じ光景だった。
飽きることのないように、数人の男が常に女を抱いている。
いやあれを抱くと呼んでいいのか。
女は動かない。男の動きに合わせて、ゆさゆさと揺れるだけだ。

周りで酒を飲んでいる。
一仕事終えたように、飲み交わしている。

一人が僕に声をかける。



193 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/13(日) 00:22:24.30 ID:FGg6NM+60

( ,, Д )「よお、ドクオ。どうしたんだよ。お前も混ざるか?」

('A`)「いらない」

( ,, Д )「酒、飲むか?」

('A`)「いらない」

( ,, Д )「シャブは?」

('A`)「反吐がでる」

( ,, Д )「どこ行ってたんだ?」

('A`)「病院だよ。手切ったんだ」

( ,, Д )「手じゃねぇじゃねぇか。そりゃ手首っつうんだよ」

('A`)「ああ、そうかもしれない」

( ,, Д )「自慢の彼女はどうしたよ?」



194 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/13(日) 00:26:23.39 ID:FGg6NM+60

('A`)「彼女?お前が数週間前あんな感じで犯しただろ。死んだよ」

( ,, Д )「ああ、そうかそうか。そりゃわりいな。ほら、飲めよ」

僕は酒を受け取る。

( ,, Д )「いー女だったなぁ。お前なんかのために必死に金を貯めてよ」

僕は女が犯されているのを見ている。
女の足元にわずか跳んだ精液が見える。

( ,, Д )「最後まで、ドクオードクオーって。そういや、あの時あの女も怪我してたよなぁ。指先かぁ?」

僕は何も言わない。



196 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/13(日) 00:29:00.87 ID:FGg6NM+60

( ,, Д )「でも金なんか貯めてどうするつもりだったんだ?」

('A`)「ペキンに行きたかったんだ」

( ,, Д )「ペキン?俺たちにゃ無理な世界だ」

('A`)「そうだろうか」

( ,, Д )「行ったところでどうするんだよ」

('A`)「月食を見たいんだ」

( ,, Д )「月食?月なんてもうとっくの昔に無くなったじゃねぇか。見てみろ」

空には、なにも映っていなかった。僕が家からでない間に月はなくなっていた。
彼女はそれを知っていたのか。いや、知っているはずだ。彼女は僕のために外に出ていた。
月はなかったのに。



197 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/13(日) 00:30:44.87 ID:FGg6NM+60

('A`)「月はなかった。でも彼女は頑張ってくれた」

( ,, Д )「おー、そうだなぁ」

男は酒を飲む。
彼女は頑張ってくれた。
僕は瓦礫を掴む。
彼女は頑張ってくれた。

( ,, Д )「なんだぁ、お前、そんなもん持って」

('A`)「僕はあの時、気を失っていた」

( ,, Д )「ああ、邪魔するもんだから、そうするしかなかったなぁ」

('A`)「気を失っていたんだ、なのに」

彼女は頑張ってくれた。



198 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/13(日) 00:34:26.32 ID:FGg6NM+60

僕は赤い顔をした男の頭にそれを振り下ろす。
鈍い感触がして、男がその場で崩れる。
僕はさらにそれに瓦礫を振り下ろす。
振り下ろす。
彼女は頑張ってくれた。

辺りが気付き始める。
だが女を犯す動きは止まらない。
みんな、僕を見ている。
僕はひたすら男の顔に瓦礫を、瓦礫を、瓦礫瓦礫瓦礫を振り、振りおろして、いる。

ついに男は動かなくなった。
ぴくりとも反応しない。
瓦礫から血が落ちていく。
僕にも大量に男の血が付いている。

一掬いとって舐めた。

いけない味なんてしない。ただの血の味だ。

僕は瓦礫を投げ捨てると家へと向かう。



200 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/13(日) 00:36:55.56 ID:FGg6NM+60

僕は鼠なんだろうか。
彼女はいない。

猫は腐っていた。
本当に腐っていたのだろうか。
彼女はいない。

そもそもあれは猫だったの、か。
彼女はいない。

僕は鼠じゃなかった。
彼らも鼠じゃなかった。
両方ゴキブリだ。
腐った猫の側で、猫の鳴き声を待っているゴキブリだった。

彼女はいないんだ。
彼女だけが人間だった。

月はなかった。
星もなかった。

僕は自分で切った左手を見て、明日のバイトをサボろうかなと考える。



201 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/13(日) 00:38:13.66 ID:FGg6NM+60


/ ゚、。 /と(=゚ω゚)ノと謎の洋館のようです オマケ おしまい



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