3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 21:32:28.22 ID:VwoL9xOK0
二日目 深夜
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 21:35:07.37 ID:VwoL9xOK0
流石に一時ともなると内藤たちの喘ぎ声も聞こえなくなる。
それでも前日を上回る0時まで頑張っていたのだから褒めてやりたい。
人の性欲、げにおそろしきかな。
/ ゚、。 /「いーんですか?勝手に持ち出して」
私は先輩に手をとられながらおっとと、と歩く。
伸長差もあるし、彼が早足で私がちゃんと靴を履けていないこともある。
まあ、それでもちょっとだけ握り返すんだけど。
(=゚ω゚)ノ「落ちてたんだよぉ」
/ ゚、。 /「どこに?」
(=゚ω゚)ノ「内藤の鞄の中」
/ ゚、。 /「……それってつまりは、パクっ――」
(=゚ω゚)ノ「拾った!!」
/ ゚、。 /「…………」
(=゚ω゚)ノ「拾った!!!」
分かりましたよ。
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 21:39:10.18 ID:VwoL9xOK0
暗闇の中、懐中電灯を左手に、先輩の手を右手に、肩から機材をかけて歩いていく。
ちょっと行けば石階段。下りて歩けば畦道で。
もう少し頑張って、水霊洋館。
夜の畦道は歩きにくいことこの上なかった。
普通の通路とは違い、それを切断するように何本も水路が通っているのだ。
道を乱れ切りにする水路に足をとられそうになる。
/ ゚、。 /「あいっかわらず歩きにくいですねぇ」
水の流れる音は風流なもんなんだけど。
(=゚ω゚)ノ「ま、苦労がないと楽しみを見出せないよぉ」
/ ゚、。 /「水霊男爵の徘徊、見れますかね」
(=゚ω゚)ノ「……大丈夫だよぉ。我々しかいないもの」
/ ゚、。 /「見たかったなぁ。男爵いも」
(=゚ω゚)ノ「お前……それ間違ってもじーじたちの前で言うなよぉ」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 21:43:12.35 ID:VwoL9xOK0
よたよた歩いて場所は水霊洋館前。
さすがにここは木々のせいで冷え切っている。
見上げても夜空を覆う、葉、葉、葉。
わずかな隙間から必死に輝く星が見えるだけ。
/ ゚、。 /「寒い……」
洋館は昼間見たときよりもずっと恐ろしく見えた。
闇の中から溶け出すようにして現れ、今だけ、そうこの深夜の時間帯にだけ現れたようだ。
幽霊屋敷。ドラキュラ城。言葉を選んでオカルト的要素を自分の中で高めていく。
女、ダイオード、ここで物怖じするぐらいならオカルト特集なんぞに参加しませぬ。
(=゚ω゚)ノ「僕の服着るかよぉ?」
先輩が羽織っていたシャツを私に渡す。
/ ゚、。 /「ありがとうございます」
もわわと煙草の匂いの中に先輩の人間臭を見つけた。
うへへへと嬉しいのを隠して袖を通そうとする。
/ ゚、。 /「あ」
だが、ビリッとやぶけてしまった。
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 21:47:00.21 ID:VwoL9xOK0
(=゚ω゚)ノΣ
(=゚ω。)ノ「あわあわわわああああ、僕の一張羅が、あわわわ」
よくよく考えれば約20センチ差の私たちが同じ服を着ようというのも無謀な話だ。
(=;ω;)ノ
/ ゚、。 /「……すまぬ」
(=;ω;)ノ「……別にいいよぉ」
これ、どうしましょう、なんてとても聞けなくて。
しょうがないから鞄の中に突っ込んだ。
/ ゚、。 /「寒くないですか?」
(=´∀`)ノ「イオがぎゅーっとしてくれたらぬっくぬく!」
/ ゚、。 /「どうやって入ろうかしら」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 21:50:06.65 ID:VwoL9xOK0
懐中電灯を館に向けた。
壁の高さは三メートルほど。並んだ門も同様に。
また大層頑丈に作ったものだ。これが数十年以上前に存在していたというなら水霊男爵の用心深さが伺える。
(=´∀`)ノ「…………」
(=゚ω゚)ノ「へい!」
これ見るんだよぉ!と数枚の紙らしきものをばさばさと振った。
一枚、二枚……四枚ほどか。
/ ゚、。 /「なんです」
(=゚ω゚)ノ「水栄村の地図。もちろん洋館も載ってるよぉ」
/ ゚、。 /「なんというご都合主義。どこから持ってきたんですか?」
(=゚ω゚)ノ「グーグルアースって知ってるかね」
うひひ、と先輩は笑った。
そんな、まさか。
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 21:53:53.40 ID:VwoL9xOK0
うひひ、と先輩は笑った。
そんな、まさか。
/ ゚、。 /「嘘おっしゃい」
(=゚ω゚)ノ「やっぱりばれたか」
/ ゚、。 /「で、どうしたんです?」
(=゚ω゚)ノ「集会所探ったらあったよぉ」
嘘。
私がざっと見た限りそんなものしまう場所なんてなかったし、
貼り付けてあったわけもでない。
もしどこかから引っ張り出したというのなら、内藤たちのいた(くんずほぐれつ)たんすの中か。
それとも奥にあるもう一室か。
どこを探ったというのだろうか。
要領のいい人だと思ってはいたが、そんな簡単に次々便利グッズを発掘するなんて。
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 21:57:02.43 ID:VwoL9xOK0
/ ゚、。 /「どこにあったんです?」
(=゚ω゚)ノ「ちょいと奥の方に」
/ ゚、。 /「…………」
(=゚ω゚)ノ「…………」
不毛だ。
牽制しあっているつもりか。地図がどこにあったかなんて問題じゃないはずだ。
第一集会所以外のどこにあるという。
小さな体を活かしてどこからか引っ張ってきたのだろう。
(=゚ω゚)ノ「む、今失礼なこと考えなかった?」
/ ゚、。 /「……いえ」
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 22:00:47.69 ID:VwoL9xOK0
考えただろ!と懐中電灯をこちらに向けられた。
突如目の前で爆発した光に、視界を奪われる。
追いつかない暗から明への切り替えに目の奥が痛くなった。
/ >、< /「や、やめなさい」
(=゚ω゚)ノ「うっひょひょーい」
/ ゚、< /「んー、もう!」
懐中電灯を振り回す先輩を捕まえ、その頭に拳を振り下ろした。
::(=゚゚ω゚゚)ノ::「メメタァアア!!」
/ ゚、。 /「止んだか」
残光で世界が白んでいた。
ちかちかするので何度も目をこすってしまう。
/ ゚、。 /「次やったら、分かってますね?」
Ω
(=゚ω゚)ノ「了解です……」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 22:06:37.59 ID:VwoL9xOK0
地面に地図を広げ、光を当ててのぞいてみる。
ボロボロで全体的に茶色がかったその地図は、触れるだけで崩れ落ちてしまいそうだ。
(=゚ω゚)ノ「これが水霊洋館」
トン、と指を置く。
(=゚ω゚)ノ「この枠が、多分塀だよぉ」
真四角の形で洋館らしきものを示す“水”の印を囲んでいる。
(=゚ω゚)ノ「多分、ここまでの距離が歩いて三十分とちょっと、それでこの距離だから、
この塀の長さは、えーっと」
数学嫌い。任せよう。
(=゚ω゚)ノ「70ぐらいかよぉ?」
/ ゚、。 /「一辺がですか?」
(=゚ω゚)ノ「いや、正確にはもう少し違うだろうけど、うん、まあ65以上75以下」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 22:08:55.01 ID:VwoL9xOK0
/ ゚、。 /「ひゃー、広い」
縮図もないのにどうやって計算したのだろう。
/ ゚、。 /「先輩、今輝いてますよ」
(=゚ω゚)ノ(勘だとはとても言えねぇ)
/ ゚、。 /。o○(そんなこと考えてたら最低だな」
(=゚ω゚)ノ「にょほほほ。こんなもん朝飯前よ。僕の足幅と歩数とちょこっと時間を計算したまでよぉ!」
逆にすごい。
/ ゚、。 /「でも定規も何も無しで……」
(=゚ω゚)ノ「僕の家の長男は代々手のひらを黄金長方形になるよう設計されてるんだよぉ」
/ ゚、。 /「なんです、その黄金長方形って」
(=゚ω゚)ノ「……これは、無視されるよりある意味きつい」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 22:11:19.18 ID:VwoL9xOK0
で。
/ ゚、。 /「囲ってるのは分かりましたが、それで何になるんですか?」
(=゚ω゚)ノ「まあ本番はここからよ」
ぺらりと捲って二枚目。
(=゚ω゚)ノ「じゃん!これ水霊洋館、一階の見取り図ー」
もちろん二階も!と三枚目をぺろり。
素晴らしい。となると四枚目は三階か。
これは素晴らしいぞ先輩。
/ ゚、。 /「先輩、すごいです!」
(=゚ω゚)ノ「よ?」
/ ゚、。 /「すごいです、すごいです先輩。かっちょいいです!」
(=*゚ω゚)ノ「い、イオに褒められた」
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 22:14:01.61 ID:VwoL9xOK0
照れてる。
いけない。つられてこちらまで笑ってしまいそうだから、そろそろ落とさないと。
/ ゚、。 /「まあ先輩なんだからそれぐらいできて当然です。とっとと話を進めましょう」
(=´Д`)ノ「ひどいツンデレを見た」
/ ゚、。 /「私にデレの部分はありませんよ」
(=´Д`)ノ「あうう。落差ひでー」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 22:15:59.78 ID:VwoL9xOK0
ひゅんひゅんと鍵の束を指先で回しながら先輩は門の前に立った。
例え三メートルの塀だろうと、なんだろうと、正面突破の正攻法には敵わない。
がちょん、がちょん、と次々に鍵を試しているらしい。
一分もしないうちに開錠の音がして、じゃらじゃらと巻きつけられていた鎖を解く作業に入る。
予想以上の量で。
何十にも重ねて鎖を巻いていたのを見るとよほどここが大切だということがわかる。
いいんだろうかなぁ、入っちゃって。
解き終わった鎖を脇に置いて。
門を押すと長年のせいで錆付いた、ギィィィという嫌な音が辺りに響いた。
(=゚ω゚)ノ「おーおー、雰囲気出てきたよぉ」
/ ゚、。 /「楽しんでますね」
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 22:18:55.39 ID:VwoL9xOK0
置いた地図と、懐中電灯を先輩は持ち上げる。
/ ゚、。 /「門から、館まででも距離がある」
気の利いた噴水や、造園なんてものがあるわけもなく、ただの更地をひたすら進む。
わずかに伸びた雑草を踏み分けて、進むのみ。
/ ゚、。 /「馬鹿!長い!!」
(=゚ω゚)ノ「かっかするなよぉ」
ようやく玄関に着いた。
これまた豪勢な、木の扉だ。
よくわからない、ライオンがわっかを咥えた、ノック専用のあれまでついている。
/ ゚、。 /「じゃ、入りましょうか」
よいしょ、とずれていたわけではないが機材を担ぎなおす。根性の入れなおしである。
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 22:22:38.83 ID:VwoL9xOK0
(=゚ω゚)ノ「あ、その前に一つ、おもしろドキドキクイズをしないかよぉ?」
どんだけ引き伸ばす気だよ、こいつ。
/ ゚、。 /「……仕事が先です」
(=゚ω゚)ノ「だめー。先輩権限」
/ ゚、。 /「仕事!」
(=゚ω゚)ノ「もめたときは、どうするんだっけ」
すごい私用のくせに。
/ ゚、。 /「じゃんけんか、コインですけど」
うちの社のルールである。
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 22:26:01.55 ID:VwoL9xOK0
ポケットから12本の足をもつ蜘蛛のコインを取り出そうとしたら、先輩の声が先に響いた。
(=゚ω゚)ノ「じゃんけん、いくよぉ」
ほーれ、じゃーんけーん、と文句を言う間もなく先輩はグーの体勢に入る。
慌てて私もグーを出し、振り下ろす瞬間にチョキに変えた。
じゃんけんの最初はチョキだ。
(=゚ω゚)ノ「勝った!」
/ ゚、。 /「ちくせう!」
(=゚ω゚)ノ「ではでは」
ふぅん、と息を吐いて、
(=>ω<)ノ「ぃょぉのドキドキクイズ!!」
/ ゚、。 /「わー」
先輩はこほん、と息を吐いて喋り始めた。
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 22:31:33.46 ID:VwoL9xOK0
(=゚ω゚)ノ「19XX年――」
/ ゚、。 /「世界は核の炎に包まれた」
(=゚ω゚)ノ「話の腰どころか、五文字目から折らない!」
/ ゚、。 /「すまねぇ、その言葉を聞くとどうしても」
(=゚ω゚)ノ「もう」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 22:33:33.81 ID:VwoL9xOK0
19XX年。
とある避暑地で殺人事件が起こった。
夏も真っ盛りな8月の某日。G県にあるペンションで主を除く一家三人の惨殺死体が発見された。
42歳の母、16歳の娘、14歳の息子、その三人である。
問題なのはその全ての死体の首から上がなかったこと。全て首なし死体。母親、娘、息子。みんな首がなかった。
第一発見者はそのペンションの隣人とペンションの管理人。
異臭がする、そういう苦情がするから鍵を開けて入ってみれば、腐敗し始めた首なし死体とご対面。
警察は、猟奇殺人事件として捜査し始めた。行方不明の父親を殺人容疑で指名手配して。
異臭騒ぎの前日に管理人は父親の姿を見ていたからである。ちなみに管理人はその日、新しくペンションを購入する人を案内していた。
夜は友達同士の飲み会に出かけた。隣人は近くの湖に釣りへ。
山道を切り裂いて作ったペンションは全部で十軒。五軒ずつ、一本の道を向かい合うようにして。
街へ行くにも、山を降りるにもその一本道を通るしかない。ちなみに一番街に近い場所には管理人夫婦の住むペンションがある。
つまり、誰かがこの避暑地に入るにも出るにも必ずその道を通らなければならない。
遺体発見の十日前まで、そのルートには不審者の姿はなかった。それに事件現場は完全な密室だった。
さあ、問題。
犯人は誰でしょう。
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 22:37:09.77 ID:VwoL9xOK0
/ ゚、。 /「んー、そうですね。まあ普通に考えれば父親でしょう」
(=゚ω゚)ノ「ふっふ〜ん。それでいいの?」
/ ゚、。 /「ぬっ、その言い方だとハズレですね。少しカチンときましたよ」
今まで出てきたのは父親、隣人、管理人。鍵を持っているのは父親と管理人。
父親は遺体発見前日謎の失踪。管理人にはアリバイらしきものがある。隣人……。いや、やはり父親があやしい。
(=゚ω゚)ノ「あ、言い忘れてたけど父親は日曜大工が趣味で工芸用の道具はペンションに常備だったらしいよぉ」
つまり首を切る道具を父親は持っていた。怪しすぎるだろ、父親。だが、父親が犯人だというと先輩はしてやったりの顔をする。
それがあやしい。……いや、むしろそれがひっかけか。
父親が犯人だ。え、それ選んだのかよおまえ。みたいな顔をしてそれが正解。そういうことを平気でしそうだ。
/ ゚、。 /「父親ですね」
(=゚ω゚)ノ「ぬっ……」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 22:40:17.19 ID:VwoL9xOK0
ほら、やった。
(=>ω<)ノ「はっずれー!」
/ ゚、。;/「な、あれ?」
(=゚ω゚)ノ「引っかかってやんのー」
/ ゚、。 /「え、でも父親以外犯行は不可能じゃ」
(=゚ω゚)ノ「なんで?」
/ ゚、。 /「え、なんで、ってそりゃみんなアリバイが」
(=゚ω゚)ノ「そりゃ遺体発見前日のでしょ。人間、腐ってその臭いが外に漏れ出すのに一日なんて早すぎるよぉ」
あ、そうか。
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 22:44:29.70 ID:VwoL9xOK0
(=゚ω゚)ノ「正解は、その家の奥さんと不倫関係にあった管理人でしたぁ」
/ ゚、。 /「今更そんな情報を」
(=゚ω゚)ノ「管理人は嘘をついたよぉ。父親は実は家族が殺されたとき一緒に殺されてるんだよぉ。彼の日曜大工用具で」
父親の死体は裏の山から発見されたらしい。その首にはちゃんと頭がついていた。
同時に娘と息子の首も見つかった。だが、どこを探しても妻の首だけが見つからない。どこを探しても。
捕まった管理人は絶対に口を割らない。
そうしているうちに署内で舌噛んで死んじゃった。
/ ゚、。 /「…………」
(=゚ω゚)ノ「この事件で一番かわいそうなの、誰かわかる?」
/ ゚、。 /「夫ですよね」
(=゚ω゚)ノ「うん。妻には浮気され、自分も被害者なのにテレビや世間じゃ犯人扱い。
趣味の、愛用していたもので家族の首を刈り取られ、それでも妻の首は帰ってこない」
/ ゚、。 /「んー、ミステリアス」
(=゚ω゚)ノ「夫は今でもさまよっているらしいよぉ。首を胸に抱えて。これでもない、これでもない、愛しい彼女の首は、」
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 22:46:58.45 ID:VwoL9xOK0
「これでもない」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 22:49:05.17 ID:VwoL9xOK0
(=゚ω゚)ノ「と」
ざーっ、と風が吹いた。
辺りの陰鬱な空気を持ち上げ、私の頬を撫でた。
少しだけ唾を飲み込んだ。乱れた髪を直す余裕なんてなかった。
(=゚ω゚)ノ「その夫はね、愛する彼女の首を求めて、次々別の場所に現れるらしいよぉ。
とくに、年月の経ったペンションや、」
古い洋館、なんかには。
/ ゚、。 /「…………」
(=゚ω゚)ノ「…………」
やばい。
不覚にも少しだけ怖くなってしまった。場の雰囲気、先輩のしゃべり方。くだらない相乗効果で恐怖心が刺激された。
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 22:52:01.17 ID:VwoL9xOK0
/ ゚、。 /「…………」
(=゚ω。)ノ「ばぁ!」
/ ゚、。;/「!」
先輩が手を広げて目をギョロギョロさせながら、私の顔に自分の顔を近づけた。
ふだんなら殴り飛ばしているところだが、
ひっ、と短い悲鳴をあげてしまった。やってしまった、私のクールキャラが台無しだ。
(=゚ω゚)ノ「イオ、でもいい線いってたよぉ」
/ ゚、。 /(主に騙されてくれて、とか思ってそう)
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 22:59:26.85 ID:VwoL9xOK0
(=゚ω゚)ノ「頑張ったで賞をぃょぉクイズ委員会からプレゼントだよぉ」
先輩は500ミリのお茶を取り出して、私に向かって放り投げる。
/ ゚、。 /「…あ、りがとうございます」
胸の前で数度はねたが、なんとか受け取ることに成功した。
それじゃ、楽しい話もしたし行くかよぉ、と先輩はノブに手をかけた。
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 23:02:57.45 ID:VwoL9xOK0
またも重たい扉を押し開けて。
懐中電灯の先に、まず目に付いたのは巨大な柱。
それを囲むようにして大広間と言っても過言ではないスペースが展開している。
すごい、中世のダンスパーティーをやる場所みたい。
(=゚ω゚)ノ「大広間だよぉ」
奥に対称となった階段が二階へとゆるいカーブを描いて伸びている。
右、左、これも対称となった扉が同じ数だけある。あと、階段の根本に一つ。
/ ゚、。 /「玄関から何も無しで大広間ってすごいですね。土足制だわ」
(=゚ω゚)ノ「レッツ・ダンシング!」
ふざけたことを言いながら扉を閉めた。
ゴォン、と盛大を音を立てて、光は私たちの持つ懐中電灯だけになる。
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 23:06:09.90 ID:VwoL9xOK0
(=゚ω゚)ノ「暗いねぇ」
/ ゚、。 /「暗いですね」
それ以上に怖いです。実はものっそい怖いです。
完全な暗闇のせいで洋館、建物の中だっていうのにどこまでも続いていそう。
それに、何十年も人が住んでいないせいで、全く、命、というものを感じることが出来ない。
死んだ空間だ。
死んだ世界に今立っている。
立っているだけで冷たい空気が私の、生きている者の存在を圧迫してくる。
喉の奥からあふれ出た唾を飲み込んだ。
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 23:08:11.71 ID:VwoL9xOK0
/ ゚、。 /「どこから攻めます?」
もちろん、この人の前では怖いなんて口が裂けても言えない。
馬鹿にされるのはもちろん、今後半年そのネタで引っ張られるだろう。
(=゚ω゚)ノ「んー、そうだねぇ。二手に分かれるかよぉ」
おい、なんて言った今。
(=゚ω゚)ノ「僕一階行くからイオは二階頼むよぉ」
/ ゚、。;/「え、あ、ちょ……」
(=゚ω゚)ノ「どうしたの?」
わかってんだろ、実は。
/ ゚、。;/「いや、セオリーというか、普通は二人一組ツーマンセルというか、万一の事態が起こったらどうするんです!」
(=゚ω゚)ノ「……ほぉ、イオはこの状況が怖いと見える」
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 23:11:49.80 ID:VwoL9xOK0
/ ゚、。 /「…………」
(=゚ω゚)ノ「今、ムッ、なんだとこの野郎って文字が背後に見えたよぉ」
ムカつくが。怖いことは怖い。
というか、こんなところで怖くないだなんて、先輩の気が知れない。
だいたいこの人のせいでホラームードがだめだめになっているのだ。
/ ゚、。 /「そう言ってもだめですよ。二人一組は守ります」
(=゚ω゚)ノ「じーじたちが来たらやりたいこと出来ないでしょ。ちゃっちゃとしちゃうの!」
/ ゚、。 /「だめです」
(=゚ω゚)ノ「もめたら?」
/ ゚、。 /「……じゃん!」
(=゚ω゚)ノ「けん!」
(=゚ω゚)ノ「「ほい!!」」/ ゚、。 /
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 23:14:41.94 ID:VwoL9xOK0
/ ゚、。 /「地図…貸してください……」
泣きたい。
(=゚ω゚)ノ「はい♪」
渡されたボロボロの地図を腋に挟んだ。荷物を背負いなおし、懐中電灯を階段に向けた。
(=゚ω゚)ノ「それじゃあ、探索が終われば、ここで待ってるよぉ」
/ ゚、。 /「……はい」
(=゚ω゚)ノ「頑張れよぉ。ちょっとリアリティなお化け屋敷だと思えば怖くないよぉ」
ろくでもない人だ。
それじゃあ、行って来ます、と歩き出した。足が非常に重たい。
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 23:18:21.09 ID:VwoL9xOK0
(=゚ω゚)ノ「あ、一つ言い忘れていたよぉ」
/ ゚、。 /「……なんです?」
「あの話、実話だから」
/ ゚、。 /「…………」
もう最低この人。
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 23:20:11.41 ID:VwoL9xOK0
二日目 深夜 おわり
戻る