2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 14:35:31.52 ID:imezywYs0
二日目
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 14:38:49.28 ID:imezywYs0
砂を噛んだ窓を開けると、一面に森が広がっていた。
奥まで永遠と続くような深い緑に、思わず感動のに声を上げてしまった
こんなに素晴らしい自然を見たのは一体何年ぶりだ。
テカテカ
(0^ω^)「おはようございますお」
内藤がプレハブにやってきたのは九時だった。
やたら笑顔なのは昨日に満足だからだろうか。
私はもう化粧を終え、今日の下準備を始めていたが先輩はまだ布団の中でうーうーと言っている。
( ^ω^)「朝ご飯一緒に食べませんかお?」
/ ゚、。 /「もらえるのか?」
( ^ω^)「材料たんまり買い込んであるので」
元々サークル仲間でやるつもりだったんですけど、みんな何故だか来れなくなっちゃって。
と内藤は笑った。
疑問は残るが、なんにせよありがたい。
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 14:41:35.55 ID:imezywYs0
/ ゚、。 /「先輩、起きてください。ご飯ですよ」
(=-ω-)ノ「んー、いお?」
/ ゚、。 /「はい」
(=-ω-)ノ「いおー」
寝ぼけているのだろう。そのまま私に抱きついてきた。
普段ならそのまま投げ飛ばしているが、都合がよいのでそのまま肩にかつぐ。
( ^ω^)「おお、中々だいたんですお」
(=-ω-)ノzzzZZZZ............
/ ゚、。 /「米俵とかをこうやって自慢げに担ぐ男を見ると殴りたくなるのは私だけかしら」
わしわしと歩いていけたらよかったのだが、いくら大柄な私といえど所詮は女の筋力。
すぐ疲れたので内藤にパスする。
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 14:45:52.02 ID:imezywYs0
ξ ゚听)ξ「あ、今持って行きますね」
奥ではツンデレが忙しそうにトレーに椀などを乗せて行ったり来たり。
手伝おう、と一緒に奥へ行く。
/ ゚、。 /「もしかして、君がこっそり裏でサークル仲間に頼んだのかな、二人にさせてほしい、と」
ξ ゚听)ξΣ
ξ ///)ξ「ななななんでそれを」
いやいや、なんとなくだが分かるさ。
大丈夫、言わないから、と四人分の茶碗を畳の部屋に運ぶ。
/ ゚、。 /「結果的に邪魔をすることになって悪いな」
ξ ゚听)ξ「いいえ、全然!」
/ ゚、。 /「内藤と二人だとスタミナがもたなさそうだな」
ξ ゚听)ξ「ほんとにそれですよー」
ξ ゚听)ξ「………って」
ξ ///)ξ「ひゃあああああ」
自分で言ったくせに、自分で照れていた。
なんだ、こいつは。と思ったがまあつっこむのもめんどうだ。
私は玉子焼きを持っていく。
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 14:50:20.86 ID:imezywYs0
(;^ω^)「ぃょぉさん、まだ寝てるんですけど」
(=-ω-)ノzzzZZZZ............
畳の部屋で干されたイカのように全身を伸ばし先輩が寝ていた。
(;^ω^)「起こしましょうかお?」
/ ゚、。 /「いや、私が起こす」
玉子焼きの乗った皿をちゃぶ台に置く。
静かにいびきをたてる先輩の股間に、右足を合わせた。
(=゙ω゙)ノ[ひゃびゃあああああああ」
貧乏ゆすりの要領である。
スリッパ越しなので感触自体は分からないが、とりあえず苦しんでいるのはよく分かる。
ビクンビクンとニ三度痙攣を起こすと、泡を吹きながら寝息すら立てなくなった。
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 14:55:17.37 ID:imezywYs0
(;^ω^)「なんちゅーことを」
股間を押さえながら内藤が言う。
/ ゚、。;/「まずかったか?」
(;^ω^)「加減次第ですが……。よくはないと思いますお」
(=゙ω゙)ノ
/ ゚、。 /「ツン、君も内藤が浮気などしたらこれをすればいい」
( ^ω^)!
ξ ゚听)ξ「なるほど」
( ^ω^)「ツン、納得しちゃだめだお」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 14:56:57.00 ID:imezywYs0
(=゚ω゚)ノ「なんだかここまで来た記憶がはっきりしないんだけど」
先輩は焼いたウインナーを頬張りながら言った。
眠そうに目をこすっている。
/ ゚、。 /「寝ぼけていたのでしょう」
(;^ω^)
ξ;゚听)ξ
(=゚ω゚)ノ「そうかよぉ。それにしてもウインナー美味しいよぉ」
/ ゚、。 /(なんという皮肉)
(=゚ω゚)ノ「ご飯、申し訳ないよぉ」
( ^ω^)「いえいえ。みんなでバーベキューするつもりだったんで、僕らだけじゃ腐らせてしまうだけですお」
/ ゚、。 /「本当に助かる。先輩がお菓子しか持ってこなかったからな」
(=゚ω゚)ノ「イオだって、食べ物持ってきてないじゃないかよぉ!」
/ ゚、。 /「最初に話したでしょ。役割分担するって」
(=゚ω゚)ノ「……ウインナー、おいしぃ!」
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 14:58:48.57 ID:imezywYs0
/ ゚、。 /(逃げた……)
(=゚ω゚)ノ「あ、内藤」
なんでしょう、とウインナーを頬張りながら内藤は答える。
ツンがそれを行儀が悪いと諭す。
(=゚ω゚)ノ「一応バツが悪いもんで、僕らのことは大学の鳥類研究会にでもしてくれないかよぉ」
( ^ω^)「お?」
(=゚ω゚)ノ「信仰の厚い水霊男爵について調べに来たなんていえばじーじたちは嫌な顔をすると思うんだよぉ」
( ^ω^)「はぁ。まあ構いませんが。ブーンたちもそうしたほうがいいかもしれませんし」
/ ゚、。 /「とは?」
( ^ω^)「そんなことじーじたちに話したなら、『なんちゅうバチ当たりな人間を連れこんどるんだお!』とか言われちゃいそうですお」
/ ゚、。 /「な、るほど?」
ですお。ってお前。本当にいいの?
(=゚ω゚)ノ「じゃ、今から僕らは大学の鳥類研究会。そういうことでお願いしますよぉ」
( ^ω^)「了解ですお」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 15:02:20.15 ID:imezywYs0
(=゚ω゚)ノ「ところで」
( ^ω^)「はい?」
(=゚ω゚)ノ「水霊洋館の詳しい場所を教えてくれないかよぉ。ちょっと見てみたいんだよぉ」
(;^ω^)「お、構いませんが……」
構いませんという割にその表情は暗く見える。
(;^ω^)「見るだけですよ? 入れませんお」
(=゚ω゚)ノ「そうだろうと思ってたよぉ」
/ ゚、。 /「やはり、元村人たちにとって大切な扱いなのだな」
(;^ω^)「大切どころじゃありませんお。そりゃあもう、たとえるなら、聖域ですお。聖域」
聖域。
(;^ω^)「下手に近付こうもんなら怒鳴られるし、話を出すだけでも、そりゃあもう」
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 15:06:13.46 ID:imezywYs0
/ ゚、。 /「その割に案内はしてくれるのか?」
(;^ω^)「まあ、ブーンもこの機会にちゃんと見ておきたい、そういう気持ちがありますお」
/ ゚、。 /「いいのか? 元村人がそういうので」
( ^ω^)「ブーンからすれば水栄村は故郷というよりも時々来る保養地ですお。
故郷は、あくまで、心の、故郷ですお」
/ ゚、。 /「ふむ」
(=゚ω゚)ノ「まあ固いこと言うなよぉ。内藤がこう言ってるんだから、僕らにとっても助かるわけだし」
そんなに楽観的でいいのだろうか。
私はスープをすすりながら思う。
聖域、とは少し大げさではないか。
誇張しているのだろうか。いや、たった数時間の付き合いだが、内藤の人の良さは分かったつもりだ。
内面からにじみ出るそれと、言動、行動、全てが善良そのものに繋がる。
そんな男が嘘を付くだろうか。
そんな男の口からでる、聖域、とは。
軽んじていいものか。
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 15:10:50.39 ID:imezywYs0
/ ゚、。 /「…………」
(=゚ω゚)ノ「……イオ、手が止まっているよぉ」
/ ゚、。 /「…あ、はい」
椀を持ったまま固まっていたらしい。
ツンが不思議な顔でこちらを見る。
(=゚ω゚)ノ「君は変に考えすぎる癖がある。
我々は今、超常現象を追い求めているんだよぉ。
そんなもの、世の科学者がうん百年追い求めて解明できないものだよぉ。
そこには考えの追いつかない世界があるはずだよぉ。
今は、内藤君の好意に甘えて、それを受け入れるんだ。分かったね?」
/ ゚、。 /「はい……」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 15:14:03.45 ID:imezywYs0
久々の先輩真面目モードだ。
じっと目を見て話されると、理不尽な内容でも頷いてしまう。
目で相手を殺す。相手は殺される。そして私は頷くのだ。
( ^ω^)「ツン、このスープめちゃんこ美味いお」
ξ*゚听)ξ「あ、当たり前じゃない!」
( ^ω^)「おっおっおっ。ツンが料理上手でよかったお」
/ ゚、。 /(聖域、か……)
先輩はこの言葉をどう受け取っているのだろう。
(=゚ω゚)ノ
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 15:17:25.05 ID:imezywYs0
( ^ω^)「じゃ、行きますお」
こちらですお。と彼女の手をとってそのまま歩き出した。
/ ゚、。 /「鍵はかけなくていいのか?」
私はカメラとフィルムなどの入った鞄を肩からかける。
( ^ω^)「おっおっおっ。誰もいませんお」
こんな感じだから昨日の夜私たちの進入を許してしまったのか。
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 15:19:14.37 ID:imezywYs0
(=゚ω゚)ノ「よっよよーん」
先輩は楽しそうに飛び跳ねながら、内藤についていく。
なんだか見たことがある、と思ったら残業時に先輩が見ていたアニメの動きとそっくりだった。
∧ ∧
(*‘ω‘ *) ちんぽっぽ
( )
v v
ぼいんっ
川
( ( ) )
(=゚ω゚)ノ「だよぉっお!」
/ ゚、。 /(パクった!)
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 15:20:36.42 ID:imezywYs0
夜に行った広場は明るい時間に見るとますます境内のようだった。
探せば、鳥居や神社が出てくるんじゃないだろうか、と辺りを見回すもそれらしきものはない。
ただここから見下ろす村の風景には息を呑むものがあり、それだけでもここに来た価値が十分あると思った。
( ^ω^)「あの奥に昨日言ってた石碑がありますお」
内藤が広場の奥を指していた。あっちですお、と。
/ ゚、。 /「行きます?」
(=゚ω゚)ノ「行ってみるかよぉ」
内藤に誘われるままについていく。
森を割って進んでいく。ぐねぐねと蛇行する道の奥にひっそり立っていた。
三メートルほどだろうか。
大きな一枚岩に、水霊之碑、と彫られていた。
文字の中にわずかな苔と、ところどころの劣化を見つける。
裏に回り、その背を見るも、劣化が激しくて読めたものではなかった。
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 15:26:35.39 ID:imezywYs0
(;^ω^)「ささささ、触っちゃだめですお」
/ ゚、。 /「へ、あ、ごめん」
表面をはたけば何か読めるかと思ったのだが、触ろうとしたら怒られてしまった。
(=゚ω゚)ノ「写真撮っといてー」
先輩に言われるまま、色々な角度からパシャリパシャリとシャッターを切る。
先輩はその間、じっと石碑を眺めていた。
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 15:29:06.93 ID:imezywYs0
広場に戻り、村へと向かう。
相当な距離だろう、石階段を一つ一つ下りていく。
かろうじてついている手すりも劣化が激しくて触るのをためらってしまう。
石階段自体の幅も狭くて、不注意に進めば足をとられて一番下まで転げ落ちそうだ。
そうなったら、笑えん。
/ ゚、。 /「ほっ、ほ、ほっ」
(=゚ω゚)ノ「イオ、手をかそうか?」
/ ゚、。 /「な、なんとか大丈夫です。
夜見たときはもう少し余裕があると思ったんですけどねぇ」
転んだとしても、せめて機材を壊してしまわぬようにせねば。
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 15:32:38.49 ID:imezywYs0
長い長い石階段を抜けると、
畦道と呼ぶに相応しい田んぼと田んぼの隙間を縫うようにして出来た道に出た。
こちらですお。
と誘われるままについていく。
舗装もろくにしていない。
家屋には必ず水車がついている。
まるで、はるか昔にワープしたようだ。
不思議な錯覚を覚えてしまう。
おおよそ近代文明的なものは一つも見えず、
荒れているとはいえ、村としての形をちゃんと残し、
無人でも動くよう設計された水車は今もその役割を果たしている。
田んぼが野に変わっただけだ。
そしてくもの巣を張るように、縦横無尽に水が通っている。
畦道を裂いてまで、水路がある。
道の脇に生えた雑草から赤い実がなっている。
小鳥がチチチと鳴いて目の前に舞い降りた。
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 15:35:08.78 ID:imezywYs0
/ ゚、。 /「……すごいな」
( ^ω^)「はい。ブーンも来るたびここが本当に現代かと疑いますお」
現代と疑う。なるほど。
(=゚ω゚)ノ「いよー。中々、すごいよぉ。見て見てイオ。あの家、わらの屋根だったんだよぉ。ボロボロだけどコケが生えてたんだねぇ」
ちょろちょろと脇を流れる水路の澄んでいることよ。
小魚がずいぶんと楽しそうだ。
/ ゚、。 /「きれいだ……」
道を割ってまで水路が通っている。
いくらなんでも田んぼの量に対して水路の量が多すぎる。
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 15:39:28.51 ID:imezywYs0
/ ゚、。 /「水路がやたら多いな」
( ^ω^)「気付きましたか」
待ってましたと言わんばかりの笑顔だ。
( ^ω^)「ここは水の宝庫なんですお」
/ ゚、。 /「水の?」
( ^ω^)「はい。周りに水栄村以外ありませんお。
そのくせ、ここらには湧き水が豊富で、沼も多く、盆地になっているので、
ここら一体の水は全て水栄村に流れ込んできますお。
昔は少々の水路で十分だったんですが、台風や大雨が起こると、溢れ出してしまったそうですお。
水はけのずいぶん悪い地質だそうですお。
試行錯誤の末がこのくもの巣のような水路ですお。
豊富な水、そこから村の名前をとり、水栄村、となりましたお」
ちょろちょろと流れる水は本当にきれいだった。
何枚か、これも写真としておさめた。
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 15:42:07.82 ID:imezywYs0
十分近く、畦道を歩いたはずだ。
風景を見ていて飽きるものはなかったが、ただ着かないのは困る。
/ ゚、。 /「内藤、まだ?」
( ^ω^)「お、村の端ですお。もう少しで屋根が見えます……おー、あれですお、あれ!」
/ ゚、。 /「え、どれ?」
( ^ω^)「目を凝らしてくださいお」
内藤が指差すほうに顔をやると、山の木々の隙間に、深緑の屋根が見えた。
苔の色。
濃い苔色が深い緑の中に溶け込んでいる。
注意してみなければとても気付きそうになかった。
一見するとあまり不自然なく、そのまま見過ごしてしまいそうだった。
一枚、撮っておく。
そこからさらに十分ほど歩き、山を少し登り、洋館の前に着いた。
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 15:45:46.91 ID:imezywYs0
場違い、第一印象がそれだった。
日本独自のからぶき屋根に目が慣れていたせいで、その苔色を放つ西洋の屋根が異様なものに映った。
鉄で出来た巨大な門も、それに並んだ塀も、焦げ茶のレンガも全てが場違いだった。
三階建て。
煙突つき。
とがった屋根。
西洋も、西洋。これでは化け物の出る秘密の屋敷だ。
(=゚ω゚)ノ「バイオ1みたいだよぉ」
( ^ω^)「前原屋敷のようなものを想像していましたかお?」
(=゚ω゚)ノ「そこまでひぐらしに期待していないよぉ」
まあ、ちょっとはそのほうがよかったけどね、と笑っている。
ただ、村に見るような劣化はあまりないが、
門は鎖でガチガチに固められているし、窓は全て板で貼り付けられている。
まるでこれでは、呪いの館だ。
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 15:50:08.58 ID:imezywYs0
/ ゚、。 /「何故、ここだけこんな、そう、たとえる言葉が出てこないが、うーん」
言ってから言葉を先に選んどくんだとひどく後悔した。
彼らの目に阿呆に映っただろう。
恥ずかしいな。
(=゚ω゚)ノ「“聖域”には見えないよぉ」
/ ゚、。 /「ああ、ニュアンス的にそれです!」
そう、まるで潰れた後、処分に困っているように見える。
(;^ω^)「それはよく分かりませんが、保存するために人や獣を近づけないように、と聞きましたお」
/ ゚、。 /「だから劣化が少ないのか?」
( ^ω^)「ここいらの木はどれも樹齢が高くて、丈夫だから台風などが来ても館を守ってくれるんですお」
写真を、撮る。
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 15:52:46.46 ID:imezywYs0
先輩が門を引っ張った。
鎖が声を上げるが、何度も引っ張る。
(;^ω^)「ちょちょちょ、聞いてました? 駄目ですお」
(=゚ω゚)ノ「あれ? 入りに来たんじゃなかったっけ?」
(;^ω^)「見るだけですお。ブーンは見れたら満足ですお!」
ふーん、とつまらなさそうに声をあげた先輩の耳に内藤の必死な声は届いていない。
ぼんやりと水霊洋館を眺めている。
私は出来る限りの角度でそれをフィルムの中に収めていくが、中々外側からだけではいいものがとれない。
せめて敷地内に入らなければ。
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 15:55:24.86 ID:imezywYs0
/ ゚、。 /「内藤」
(;^ω^)「ダイオードさんもぃょぉさんに言ってくださいお。聞いてるんですかこの人」
/ ゚、。 /「無理を承知で言うが、中に入りたい。入れてくれ」
( ^ω^)(なんかエロい)
/ ゚、。 /?
数秒の沈黙が内藤を包み、目を細くしたツンに突付かれて我に返る。
( ^ω^)「だ、だめですお!」
/ ゚、。 /「どうしても?」
(;^ω^)「どうしてもですお」
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 15:59:49.18 ID:imezywYs0
あいにく私に大人の女の色香はない。
色仕掛けなど無駄に終わるだろう。つまりストレート、それもしつこく食いつくのだ。
それが駄目なら、もしくは、
/ ゚、。 /「なら私はうっかり口が滑って、じーじたちに君たちの夜を喋ってしまいそうだ」
脅すとか。
(;^ω^)「お…それは……」
/ ゚、。 /「なあ、頼むよ」
だいぶ動揺したようだ。
私のような大人の女性が言い寄ればそれは心が動じぬはずはない。
脅しているということなのだが。色香もないし。脚色してみただけ。
悪くないはず、胸ないもん。
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 16:04:57.77 ID:imezywYs0
(;^ω^)「おおお、おっお………」
(;^ω゚)「………………………………」
(;゚ω゚)「…………………………………………………で!」
(=゚ω゚)ノ「やめなさい。イオ」
(;^ω^)「お……」
助かったと言わんばかりに息を吐き出した。
それはツンの方も同じらしく、二人してよかったよかったと目で言い合っている。
/ ゚、。 /「すいません」
(=゚ω゚)ノ「謝るのは僕じゃなくて内藤君とツンさんだよぉ」
それもそうか。
/ ゚、。 /「無理を言ってすまない。ごめんな、内藤、ツン」
( ^ω^)「あ、いえ、そんな。僕も入りたいんですけど、そりゃもうトーチャンが怖くて」
ξ ゚听)ξ「彼がそういうので…」
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 16:08:16.00 ID:imezywYs0
それにしても、先輩がこんなにも簡単に引き下がるとは驚きだ。
いつもなら何があろうとこんなおいしそうなもの食いつくというのに、どうしたのだ。
ふんふーんと鼻歌なんか歌いながら来た道を戻っていた。
( ^ω^)「お、帰りますかお?」
(=゚ω゚)ノ「だって入れないんだったらしょうがないもーん」
ひょろひょろと歩く先輩の後ろについていく。
私は脇に流れる小川に目をやって、先輩が今何を考えているか想像してみる。
ちろちろと流れるそれの流れが崩れたかと思うと、
ツンが片足を突っ込んで遊んでいた。
ξ*゚听)ξ「きもちいー」
(*^ω^)「だお!」
(=゚ω゚)ノ「よっよよーん」
/ ゚、。 /「あれ?行っちゃうんですか?」
(=゚ω゚)ノ「年寄りは去るもんだよぉ」
先帰っとくよぉ!と先輩は二人に向かって叫んだ。
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 16:12:48.89 ID:imezywYs0
/ ゚、。 /「で、どうするつもりですかい?」
私は小走りになって先輩に並んだ。
身長の低い彼はひょいひょいと水路を飛び越えていく。
小学生の息子を持つとこういう気分なのだろうか。
(=゚ω゚)ノ「なんのことだよぉ?」
/ ゚、。 /「このまま諦める気ではないですよね?」
(=゚ω゚)ノ「内藤が入れてくれないんだから、僕らには打つ手がないよぉ」
僕らには、と嫌な笑い方をしてぴょんぴょん跳ねた。
何かあるんだろうな、そう思ったが黙っている。
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 16:14:55.25 ID:imezywYs0
もうすぐ石階段。
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 16:17:29.07 ID:imezywYs0
晩もご馳走になって。
風呂があったのは非常に嬉しかった。
着替えはないけれど、ま、いいや。気持ちがいいし。
覗けないように柱にくくりつけておいた先輩は、太目の丸太と入れ替わっていた。
忍者かよ、と言葉を漏らして髪をばさばさと叩くようにして拭きながら、押入れの戸を引いた。
中では正座でビデオを凝視する先輩がいた。
殴って奪うと案の定私の入浴シーンだった。
もうやだ。
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 16:21:20.02 ID:imezywYs0
寝込みを襲われてはいけないと、寝袋を逆さにして外に吊るしておいたのに、深夜一時、奴は来た。
(=゚ω゚)ノ「イーオちゃん」
ぽんぽんと肩を叩かれ反射的に殴ったが、私の腕は空を切り、先輩は正反対の位置にいる。
どんどん化け物じみていく。なんだこの人。
(=゚ω゚)ノ「起きた?」
/ ゚、。 /「夜這いのつもりならあなたの股間が更地になると思いなさい」
(=´Д`)ノ「そんなぁ…」
(=゚ω゚)ノ「って違うよぉ!」
これなーんだ、と先輩は人差し指で何かをひゅんひゅんと回している。
/ ゚、。 /「…鍵?」
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 16:24:16.84 ID:imezywYs0
内藤が持っていたそれだった。
(=゚ω゚)ノ「正解」
/ ゚、。 /「いったいいつの間に」
(=゚ω゚)ノ「僕らは先に帰ったよねぇ」
あのときか。
(=゚ω゚)ノ「じゃ、行こうか」
/ ゚、。 /「打つ手がないんじゃないんですか?」
(=゚ω゚)ノ「それは『鳥類研究会』の僕らだよぉ。記者の僕らは無敵だよぉ」
/ ゚、。 /「ありかよ……」
ほいじゃ、行くよぉ。と先輩に手をひかれ夜を歩くわけである。
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 16:26:11.44 ID:imezywYs0
二日目 おわり
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