- 5 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 19:27:07.00 ID:aa5wgzD8O
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どこにでも立つ噂
そいつはやはり、怪談噺
それは勿論この遊郭にもある物で
夏にもなれば、そりゃアもう
夜に挙って楽しむモンで御座いやす
lw´‐ _‐ノv春の日々、のようです
『遊廓七不思議に挑め! 前編』
ほらほら其所のお稚児らも
蝋燭片手に妓楼を抜け出し、駆け回っておいでです
怖い物見たさの根性は、今も昔も変わる事無く───。
- 6 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 19:29:15.53 ID:aa5wgzD8O
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蒸し暑くも雨はすっかり止んだ日、夏も始まり蝉が騒ぎ出すのも遠くない、そんな日の事。
姉女郎に言い付けられ文を届けに行く禿(かむろ)っ子と、姉女郎に言われて白米を持ってきた禿っ子が居た。
二人のお稚児は何かを胸に秘めた様に、至極真面目な顔で、ゆうっくりと歩く。
(*゚ー゚)「合言葉は」
ζ(゚ー゚*ζ「無い袖は」
(*゚ー゚)「振れぬ」
ζ(゚ー゚*ζ「今宵、みんなが寝静まった頃に二階物置前」
(*゚ー゚)「承知つかまつった、では後程」
擦れ違い様のお稚児のやりとり。
それは二人の耳だけに届き、そっと消えていった。
- 7 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 19:31:05.40 ID:aa5wgzD8O
-
そして夜八ツ、客も引けて遊女も眠るその頃に、何かが階段を軋ませる。
その軋みは二階で止み、続けて廊下の僅かな軋みと衣擦れが夏の夜中に広がって。
とんとん
物置の襖、その縁を指先で叩くは小さな指先。
ζ(゚ー゚*ζ「無い袖は」
(*゚ー゚)「振れぬ」
ζ(゚ー゚*ζ「来たねぇ、しぃちゃん……」
(*゚ー゚)「うん、……さあ、始めようか、でれちゃん……」
(*゚ー゚)「この遊郭の七不思議に、挑もう……!」
- 8 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 19:33:08.29 ID:aa5wgzD8O
-
ζ(゚ー゚*ζ「あほくさぁ」
(*゚ー゚)「七不思議に挑もうって言い出したのはでれちゃんでしょうが」
ζ(゚ー゚*ζ「そうだけどぉ……そんなに力入れてかっこつけて言うなんて……ぷぷっ……」
(#*゚ー゚)「うわーい腹立つー」
ζ(゚ー゚*ζ「ななふしぎに、いどもう…!! ぅふはあはははははは」
ばしーん
(#*゚ー゚)=っ)* ー )ζ うぶっ
(*゚ー゚)「じゃ、行こうか。見付かったら大変だから、静かに静かにね」
ζ(#)ー゚*ζ「うん、いこー」
(*゚ー゚)「えらい顔に……」
- 9 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 19:35:16.44 ID:aa5wgzD8O
- ◎
先日、髪を二つに結ったお稚児が口にした言葉が始まり。
ζ(゚ー゚*ζ「この遊廓にも七不思議があるんだってぇ」
(*゚ー゚)「へぇ、どこにでも出てくるもんだね」
ζ(゚ー゚*ζ「でね、こんど一緒にその七不思議の場所にいってみたいなぁってぇ」
(*゚ー゚)「誰が」
ζ(゚ー゚*ζ「あたしが」
(*゚ー゚)「行ってらっしゃい」
ζ(゚ー゚*ζ「一緒にいこ」
(*゚ー゚)「やなこったい」
ζ(゚ー゚*ζ「いーこーぉーよー」
(*゚ー゚)「やですよ、ろくな目に会わなそうだもの」
ζ(゚ー゚*ζ「いーいーじゃーなーい、いーこーぉーよーいーこーぉーよー」
(*゚ー゚)(ちょっと鬱陶しいなあ)
- 10 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 19:37:14.88 ID:aa5wgzD8O
-
ζ(゚ー゚*ζ「しぃちゃんは気にならない? 『虐められた末に武雲屋物置で自害した男の呪い』とか『武雲屋地下で遊女を殺した喜助が拷問を受ける男の悲鳴』とか」
(;*゚ー゚)「七不思議って此処にあるの!?」
ζ(゚ー゚*ζ「あと『下り階段に出る愛する男に捨てられた女の幽霊』とか……ね、行きたくなったでしょー?」
(*゚ー゚)「う……いやいや、馬鹿馬鹿しい。そんなおままごとに付き合うほど暇じゃあないんよ! 行くならお一人で! じゃね!」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、こらー! 逃げるなーぁ!」
禿でれの罵声やらを背中に浴びながら、しぃは妙な迷いを断ち切ろうと頭を横振って歩き出す。
後ろの方ではでれの声が聞こえるが、気にしない事にした。
とたとた、軽い足音をさせて姉女郎の部屋に戻ってきたしぃが、溜め息混じりに部屋へと入る。
それを見た姉女郎、花魁“おつう”は首を傾げて寝転がったまましぃに近付き。
- 11 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 19:39:03.00 ID:aa5wgzD8O
-
(*゚∀゚)「どうしたんだィ? しぃ」
(*゚ー゚)「あ、花魁……実はですね、下らないお話なんですが」
(*゚∀゚)「うんうん」
(*゚ー゚)「でれちゃんが、武雲屋に怪談噺があるって」
(*゚∀゚)「ほうほう」
(*゚ー゚)「物置で男の呪いだとか」
(*゚∀゚)「ふんふん……」
(*゚ー゚)「地下で男の悲鳴だとか」
(* ∀ )「ほう……」
(*゚ー゚)「二階廊下に女の幽霊だとか」
(* ∀ )「…………」
(*゚ー゚)「……本当にもう、下らなくって……花魁?」
- 12 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 19:41:09.75 ID:aa5wgzD8O
-
(* ∀ )「……ひゃ……」
(*゚ー゚)「ひゃ?」
(*゚∀゚)「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!! 楽しそうだねェそれ! あたしらもやろうぜ肝試し!!」
(;*゚ー゚)「はぁ!?」
(*゚∀゚)「そうさねェ、七日後だ七日後! しぃも準備しときなァ!!」
(;*゚ー゚)「ま、ちょ、え!? なんで!?」
(*゚∀゚)「怪談は解き明かしてくのがァ面白いンじゃあないかィ! もう誰かに解かされてンなら別だが、そうじゃあ無いみたいだしねェ!」
(*゚ー゚)
三(*゚ー゚)
(*゚∀゚)「だからさァしぃ、あたしらも……あれ? しぃー?」
- 14 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 19:43:44.60 ID:aa5wgzD8O
-
だだだだだだだだだっ ききぃっ ばぁん!!
(;*゚ー゚)「でれちゃん!?」
ζ(゚ー゚*ζ「んぁい?」
(;*゚ー゚)「行く! 行きます! 肝試し!!」
ζ(゚ー゚*;ζ「う、い、良いけどぉ……どったのぉ? いきなりぃ」
(;*゚ー゚)「どっちにしろ行かなきゃいけないし、あの状態のつう姉様が暴れたら他の人たちに大迷惑! 怪我人はぜったい出る! だから私が先に七不思議とやらを暴いてつう姉様の興味を削がせなきゃ!!」
ζ(゚ー゚*;ζ「ぅ、う? よくわかんないけど、肝試しいくのぉ?」
(;*゚ー゚)「行く! 行かなきゃいけないから!!」
ζ(゚ー゚*;ζ「うん、じゃ、じゃあ三日後の夜八ツでいいー?」
(;*゚ー゚)「頑張って起きとく!」
ζ(゚ー゚*ζ「んじゃあ、えーと……遊廓七不思議に、いどもー!!」
(;*゚ー゚)「おー!!」
- 17 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 19:46:04.66 ID:aa5wgzD8O
- ◎
(*゚ー゚)「結局でれちゃんの所為、か……?」
ζ(゚ー゚*ζ「どったのー?」
(*゚ー゚)「ううん、顔戻ったね」
ζ(゚ー゚*ζ「まぁねー」
(*゚ー゚)「あ、そだ。七不思議なんだったら、他の四つは? 武雲屋で三つでしょ?」
ζ(゚ー゚*ζ「んーとねぇ、『神社の境内に捨てられ死んだお稚児の幽霊』」
(*゚ー゚)「神社に幽霊て」
ζ(゚ー゚*ζ「『九羽屋の井戸に投げ捨てられた女が数える皿の数』」
(*゚ー゚)「何か聞き覚えが」
ζ(゚ー゚*ζ「『九羽屋裏の林にて、丑の刻参りをする女』」
(*゚ー゚)「生々しく恐ろしい……」
ζ(゚ー゚*ζ「『西門脇の小屋で男女の幽霊』だよぉ」
(*゚ー゚)「ろくな噂が無いね、流石は怪談」
ζ(゚ー゚*ζ「んじゃー最初は“武雲屋一階物置で自害した男”に、呪われにいこー!」
- 18 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 19:48:07.15 ID:aa5wgzD8O
-
ぎしぃ、と軋む階段を抜き足差し足忍び足。なるたけ音がせぬ様に、と気を遣って二人は行く。
一階へと降り切って、周囲に人の気配は無いかと挙動不審に陥りながら歩いていた。
でれは好奇心いっぱいな顔で、しぃの袂を右後ろからぎゅう、と掴み。
しぃは燭台片手に至極真面目な顔をして、下唇をきゅって噛んで居た。
今夜は居続けの客が居ない事もあり、皆が寝静まりしぃんとしている。
大きな音をさせて誰かに見つかったりしないか、もし人間ならざる物を見つけたらどうすれば良いか。
そんな事を考えていると、次第に口の中は乾いていって。
ζ(゚ー゚*ζ「ついた、ねぇ」
でれの言葉にはっと気付いた様に顔をあげれば、いつの間にかしぃは物置の前に立っていて。
何時もなら何の躊躇いもなく戸を開けて、中をざかざか歩き回れるのだが。
蝋燭に照らされて暗闇に浮かぶ物置の戸は、異様な迄に重々しく禍々しく
なかなか開けられずに
がららっ。
ζ(゚ー゚*ζ「失礼しまぁす」
(*゚ー゚)「……緊張感……」
- 19 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 19:50:04.48 ID:aa5wgzD8O
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きしきし、と湿気の多い物置の中に入って行く二人の後ろ姿。それを見つめる二つの目玉。
ζ(゚ー゚*ζ「ん……何か、聞こえるぅ」
(*゚ー゚)「え……あ、本当だ……」
ζ(゚ー゚*ζ「どこから聞こえるのかなぁ、と」
(*゚ー゚)「本当に緊張感ないね……」
物置の中で耳を澄ませてみれば、確かに吐息や小さな声が耳を擽る。
声の元をたどる様にでれが歩き回っていると。
げしっ。
('A`)「んぇあ」
(*゚ー゚)ζ(゚ー゚*ζ
- 21 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 19:52:21.85 ID:aa5wgzD8O
-
(*゚ー゚)「……」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
(-A-)「んにゃ……もう勘弁し……むにゃ……」
ζ(゚ー゚*ζ げしっ。
('A`)「んぇあ」
ζ(゚ー゚*ζ げしげしっ。
(#)A`)「んぶぇあ」
ζ(゚ー゚*ζ げしげしげしっ。
(#)A(#)「んるぶぉぇあ」
ζ(゚ー゚*ζ げs
(*゚ー゚)「やめなさい」
(#)A(#)「頭……いたい……」
ζ(゚ー゚*ζ「踏みすぎたか」
(*゚ー゚)「蹴ってたじゃないの」
- 23 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 19:54:20.87 ID:aa5wgzD8O
-
ζ(゚ー゚*ζ「武雲屋物置の呪いは湿っぽいどくおさんでしたぁ、と。つぎ行こっか」
(*゚ー゚)「どくおさん、済みませんでした……」
(#)A(#)「すや……すや……」
がらがら、ぴしゃん。
(*゚ー゚)「で、次は?」
ζ(゚ー゚*ζ「地下行こっかー」
(*゚ー゚)「はいはい地下の拷問部屋ね……地下なんてあったっけ?」
ζ(゚ー゚*ζ「あるよぉ、物置の脇に隠し階段ー」
(*゚ー゚)「え? 物置脇ってそんな」
(*゚ー゚)っ_| がこっ。
(;*゚ー゚)「あったよ!」
- 24 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 19:56:25.53 ID:aa5wgzD8O
-
ひたあん、ひたぁん。湿っぽい苔むした石の階段を降りて行く。
蝋燭の灯りを便りに一歩ずつ慎重に進むしぃとでれ。
その背中を追う人影。
(*゚ー゚)「なんか、空気がむわってする……」
ζ(゚ー゚*ζ「じっとりむわぁってするぅ」
(*゚ー゚)「うーん……なんか、それっぽいね」
ζ(゚ー゚*ζ「拷問……うふふぅ……」
(*゚ー゚)「怖いよ」
──ぁ───ぅぁ────
(;*゚ー゚)「ッ! 今、こ、声?」
ζ(゚ー゚*ζ「ごっうもん、ごっうもん」
(*゚ー゚)「緊張感ー……」
- 25 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 19:59:47.43 ID:aa5wgzD8O
-
ぁぁぁ─────ぁ゙ぁ───
(;*゚ー゚)「怖いってこれ普通に怖いですって!」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、扉はっけぇん……むひひ」
(*゚ー゚)「あんた様はもう」
あ゙ぁ────ああああぁああぁぁぁあ─────
(;*゚ー゚)「声ちかい声ちかい……!」
ζ(゚ー゚*ζ「はい失礼しまぁす」
ぎぃ。
(;*゚ー゚)「だから緊張感……もう……」
戸|*゚ー゚)ζ「なにがでるかなっ、なにがで」
戸| ゚ー゚)ζ
- 27 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 20:01:16.36 ID:aa5wgzD8O
-
戸|*゚ー゚)「……でれちゃん? どうし」
戸| ゚ー゚)
(;´_ゝ`)「だから止めろって弟者! 火掻き棒はまずいだろう!」
(´<_`#)「黙れ! 貴様はまた褌一丁で客の前に出て人様の禿に手を出して変態が!!」
(;´_ゝ`)「変態違う違う手は出してない! ただ『お嬢ちゃん可愛いねハアハア飴あげようねハアハア』て言っただけ!!」
(´<_`#)「それが変態なんだあああああああああ!!」
(;´_ゝ`)「ギャアアアアアアアアアーッ!!」
(´<_`#)「で、褌一丁は?」
(*´_ゝ`)「夏が俺を開放的にさせるの……だから弟者も、ね? 褌でさ?」
(´<_`#)「覚悟は良いな、俺は出来てる」
イヤアアアアアアアアアーッ!!!!
死ねええええええええええッ!!!!
- 28 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 20:03:14.35 ID:aa5wgzD8O
-
(*゚ー゚)「忙しいみたいね」
ζ(゚ー゚*ζ「むっさぁい」
(*゚ー゚)「つぎ、行こうか」
ζ(゚ー゚*ζ「地下拷問部屋の悲鳴は男色でした、と」
(*゚ー゚)「いや違うでしょそれは」
ζ(゚ー゚*ζ「どっちでも良いよぉ、どっちにしろ今のは不愉快だった」
(*゚ー゚)「わー……厳しいー……」
並んで階段を戻って行くしぃとでれの後ろを歩きながら、同意する様にうんうん、と頷いて腕を組む。
地上に戻り、戸を閉めて新鮮な空気を胸一杯に吸い込んで二人は溜め息を吐いた。
未だ二つ目だと言うのにぐったりと身体は疲れ、幾つもの溜め息を転がしては廊下を軋ませる。
(*゚ー゚)「……次は?」
ζ(゚ー゚*ζ「下り階段だからぁ、とりあえず二階から三階いってみよっかぁ」
(*゚ー゚)「また階段かぁ……」
- 30 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 20:05:22.12 ID:aa5wgzD8O
-
気を取り直して向かうは階段に出る女幽霊の元へ。
やっと機嫌がなおったのか、軽い足取りで進むでれと、その小さな背を追いかけるしぃ。そして大きな影。
ぎしぎし、と板を軋ませ三階へ。二つある階段を見て回るが、遊女達の寝息と自分達が発する音以外は殆んど無音。
虫の音も聞こえぬ真夜中には、出歩く人間も居らず。
(*゚ー゚)「何にも居ないね……」
ζ(゚ー゚*ζ「ねー、デマかなぁ」
(*゚ー゚)「でも今までもちゃんと何かはあった訳だし、おかしいね」
ζ(゚ー゚*ζ「まー居ても人間かなぁ……んー?」
(*゚ー゚)「ん? どうし……あっ、人影が……!」
二階の踊り場に降りてきた頃、幽霊を拝むのは諦めようかとした時。
ゆら、と白い人影が廊下に現れた。
廊下の向こう側から来たらしい人影はゆったりと、階段を降りようと足を踏み出して、板を軋ませる。
二人のお稚児は踊り場から三階に続く階段へと身を隠し、そぉっと幽霊を覗き込む。
- 31 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 20:07:39.12 ID:aa5wgzD8O
-
(*゚ー゚)「軋ませてる時点で幽霊じゃないような……」
ζ(゚ー゚*ζ「さぁてさて、幽霊さんいらっしゃぁい」
(*゚ー゚)「ほんっとぉに緊張感無いよね、でれちゃん」
────め──
(*゚ー゚)「う、また声が……」
──米、米─────
(*゚ー゚)「…………」
lw´‐ _‐ノv「米を求めて……えんやこら……」
(*゚ー゚)「しゅう姉様、ほっかむりして……まさか、盗み食い…?」
lw´‐ _‐ノv「こっそり米も、また美味なり……むひひ……」
ζ(゚ー゚*ζ「せっこぉ!!」
(;*゚ー゚)「ちょ、声おっきい…!」
- 32 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 20:09:31.93 ID:aa5wgzD8O
-
ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫だよぉ、花魁けっこぉとろいからぁ」
lw´‐ _‐ノvζ*゚ー゚)ζ
lw´‐ _‐ノvζ(゚ー゚*ζ
lw´‐ _‐ノvζ(゚ー゚;ζ
lw´‐ _‐ノv「これ」
ζ(゚ー゚;ζ「て……てへぇ……」
lw´‐ _‐ノv「悪い子には、お仕置きである。めっめっ」
ζ(゚ー゚;ζ「あ、や、助け、きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ………」
(((*゚ー゚)
(*゚ー゚)「……」
(*゚ー゚)「……でれちゃん、さらば!!」
- 34 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 20:11:05.19 ID:aa5wgzD8O
-
友を見捨てて抜け出した、幼子しぃは蝋燭片手に遊廓を行く。
遊廓と言っても建物の明かりは全て落とされ、人の気配は全くない。どことなく孤独を掻き立てる街並みで。
(*゚ー゚)「元気でね、でれちゃん……えーと、後は確か……『神社の境内に捨てられ死んだお稚児の幽霊』だっけ」
(*゚ー゚)「神社に幽霊ってなぁ……なんかおかしいような……」
(*゚ー゚)「……帰って、寝たいなぁ」
とことこ、と一人で進むには辺りの闇が濃すぎて、足取りは次第に重くなって行く。
離れた場所からしぃを追うが、心細そうなその背中に声を掛けようかと迷う。
結局、迷っている間にしぃは神社に辿り着き、小さな足音をさせて石の階段を上っていった。
(*゚ー゚)「お稚児の幽霊、お稚児の幽霊……こんな時間に子供なんて、普通は居ないよ……」
自分の事を棚に上げて呟き、暗い暗い境内をぐるりと見渡す。
いくら神社と言えども、この時間ではさすがに恐怖を撫で上げる。
風の音や木々の揺らぐ音に敏感に反応しつつ、しぃは広くも狭くもない神社の中を歩いた。
- 35 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 20:13:35.38 ID:aa5wgzD8O
-
(*゚ー゚)「だーれも居ない、か……これはやっぱりただの噂、かな」
| )
(*゚ー゚)「まぁ普通は居ないよねー……こんなとこに幽霊なんて」
|;;-゚)
(*゚ー゚)「さて、次に」
|゚;;-゚) (゚ー゚*)くる
(#゚;;-゚) (゚ー゚*;)
(;*゚ー゚)「出たぁああああああ!!!!」
(#゚;;-゚)「ひゃあっ!?」
(*゚ー゚)「きゃあああああああぁ───ひゃあ?」
(#゚;;-゚)「な……何です、やろぉか……」
(;*゚ー゚)「……人間?」
- 37 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2008/07/06(日) 20:15:22.53 ID:aa5wgzD8O
-
(#゚;;-゚)「……こないな顔やけど、人間ですぇ……」
(;*゚ー゚)「あ、ごめ、ちがっ、ああ泣かないで! ごめん、ごめんなさい!」
(つ;;- )「う……別に、その、しゃあない……から……うっ、うぅ……」
(;*゚ー゚)「驚いてごめんなさい! 泣かないで! ああ泣かないで、ごめんなさい! ごめんなさい! あうぅ泣かないでーっ!!」
神木の影から姿を現した幼子、九羽屋のでぃ。
しぃがその蝋燭の僅かな灯りに照らされた姿に悲鳴を上げたので、何事かと影から覗き込む。
すると、そこには泣きじゃくるでぃを宥めるしぃの必死な姿があるだけで、ほっと安堵の息を吐く。
まあ、一人よりは安心か。
七不思議はあと三つ。
無事に回り終わる事を祈って、影は溜め息を吐いた。
つづく。
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