4 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 20:37:13.29 ID:zwAlhkUSO
(;゚∀゚)「何だって!?」
(´・ω・`)「言った通りだ。
彼女にはお前の機体に同乗してもらう」
ミセリがコロニーVIPに匿われる事になってから二日後。
ジョルジュは、ショボンに呼ばれ、彼の部屋に入るなり予想外の決定を突き付けられた。
5 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 20:38:20.34 ID:zwAlhkUSO
(;゚∀゚)「馬鹿言わないでくれよ!
この前乗せたんだから、また乗せろなんて理屈じゃないだろうな!」
いきり立つジョルジュに、ショボンは冷静に言葉を返す。
(´・ω・`)「理論的に考えた結論だよ。
彼女の能力を最大限に生かすには戦場を迅速に駆け回れる機動力が必須だ」
ミセリが強化人間として持つ能力を、彼女自身は「電子支配」と呼んだ。
簡潔に言えば、ありとあらゆる電子機器を感覚的に操作する力だ。
彼女の前では、幾重もの堅牢なプロテクトを掛けられた企業のコンピューターですら、
そこら辺にあるエレベーターを操作する端末同然に、いいようにして使われる。
さらには修復不可能な程に破壊する事も可能だそうだ。
ショボンはこの二日間で、ミセリを彼女の「電子支配」の能力について質問詰めにしていた。
その結果が、今ジョルジュに言い渡した結論らしい。
6 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 20:39:35.63 ID:zwAlhkUSO
(´・ω・`)「このコロニーで、最も速度の出せる戦力はACだ。
では、その中でも最も速いACを操ってるのは誰なんだい?」
事実を並べ立てるショボンに、ジョルジュは反論の切り口を変えた。
( ゚∀゚)「……一体どうやって乗せんだよ?
ブレストは一人乗りだぞ」
(´・ω・`)「コア部分に改造を施す。
既に必要な物は揃えたし、改造が可能な奴はコロニーに既にいる」
( ゚∀゚)「……モナーか」
(´・ω・`)「やってみるか尋ねたら、喜々として引き受けたよ」
−そりゃそうだろう。
アイツは生粋の機械馬鹿だ。
ジョルジュは内心であの人の善いメカニックをそうなじった。
7 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 20:39:57.42 ID:zwAlhkUSO
(´・ω・`)「ともかく、改造が済み次第テストする。
上手く行ったら実戦で試す。
それまでは、まぁ、ギコとモララーに頑張って貰おう」
( ゚∀゚)「俺はしばらく大人しくしてろってことか」
(´・ω・`)「そう言うことだ。
連絡は以上」
9 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 20:42:54.05 ID:zwAlhkUSO
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
( ゚∀゚)「!」
ショボンの部屋の自動ドアが開き、ジョルジュが出た所で、
通路を歩いてくるミセリと目が合った。
ミセ*゚ー゚)リ「あ……」
( ゚∀゚)「……」
先の決定は彼女の希望ではないのだろうが、彼女も一応はジョルジュの不愉快の原因の一翼を担ってはいる。
話し掛ける気になれなかったジョルジュは、目線を合わせただけで声も掛けず、さっさと擦れ違って自分の部屋に戻ろうとした。
が、
ミセ*゚ー゚)リ「待って!」
逆にミセリから声を掛けられた。
10 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 20:43:53.72 ID:zwAlhkUSO
流石にこれを無視するのは露骨過ぎる気がしたので、ジョルジュは振り返る。
( ゚∀゚)「……なんだよ」
言葉に苛立ちが滲む。
多分ミセリにも伝わる程に。
ミセ*゚ー゚)リ「ショボンさんから、貴方に私と一緒に戦って貰うって聞いたから……。
その、よろしく、ね?」
……何だよそれは。
自分よりもミセリの方に話が早く伝わっていることと、
その内容は自分が承諾していない時に話されたにも関わらず、決定されたような言い草であることが、
ジョルジュの苛立ちを膨らませる。
やり場の見つけられないムカつきが身体をジワジワとはい回る。
けれど。
13 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 20:47:06.30 ID:zwAlhkUSO
ミセ*゚ー゚)リ「……やっぱり誰かと二人で乗るっていうのは迷惑?」
恐る恐るといった風に尋ねるミセリに、ジョルジュはぶっきらぼうに答えた。
( ゚∀゚)「……迷惑とかそういう問題じゃないだろ」
それを発散しても何の意味もないということを、ジョルジュは理解していた。
生きるためにはそんな文句通用しない。
そんな我が儘を許して生きていけるほど、世界は甘くない。
少なくとも、ジョルジュにとっては。
そんな、感情を発露することを許されない世界なんて、最悪だと、いつも思っているだけで、
それに従わざるをえない自分が情けなかった。
15 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 20:52:47.13 ID:zwAlhkUSO
( ゚∀゚)「問題はお前だよ」
心の中に苛立ちを押し込めて、ジョルジュは人差し指をミセリに向け、切り返した。
ミセリの顔に少しばかりの驚きの色が浮かぶ。
( ゚∀゚)「アーマードコアに乗ってる最中は、身体に半端ない負荷が掛かる。
耐えられなきゃブラックアウトか、最悪死ぬぞ」
キツい口調は、別にACに乗せたくないから恐怖を煽ってやろうというわけではない。
言っていることは単なる事実だし、忠告して当たり前の内容だ。
もしもの時にとばっちりを食うのはゴメンだとジョルジュは思っていた。
16 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 20:54:13.85 ID:zwAlhkUSO
ミセ*゚ー゚)リ「それは多分、大丈夫。
研究所で何回も、そういうのに耐えるための訓練を受けさせられたから」
ジョルジュの指摘に、ミセリは少し笑って答えた。
その笑顔は、どこか物悲しそうに見えた。
「もしもの時は、私の事は無視して貰っていいよ。
呼び掛けられたら絶対答えるようにする。
力を使っている時は無理かもしれないけど」
(;゚∀゚)「……そうかい」
そこまで言われて、ジョルジュはとうとう彼女をブレストに乗せられない理由を完全に失った。
18 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 20:56:55.45 ID:zwAlhkUSO
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その時が来たのは、それから数日後のことだった。
(´・ω・`)「君の復帰戦が決まったぞ」
同時に彼女の初参戦とも言える、とショボンは付け足した。
(´・ω・`)「スレストの前線基地を襲撃すると予測されるコラージュの強襲部隊を迎え撃つ。
内容が内容だけに非常に足の早い任務でね。時間が無い。
作戦内容の詳細はモララーに任せてある。悪いがすぐに発ってくれ」
19 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 20:58:27.57 ID:zwAlhkUSO
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(,,゚Д゚)「アイツは俺達を都合のいい駒だと思ってないか?」
ガレージに向かうエレベーターの中。
パイロットスーツに身を包んだギコが、ショボンへの悪態をついた。
( ・∀・)「前もそうやって愚痴ってたよね。
まぁ仕方ないでしょ。それが俺達のお仕事なんだから」
同じ恰好のモララーがそれを窘める。
(,,゚Д゚)「ジョルジュはいいよな、「お休み」貰っちまってからに」
ギコのその一言に、ジョルジュが噛み付いた。
(#゚∀゚)「お前こそあの時散々面倒事押し付けといてよくも……」
そこまで吐き出してしまってから、ジョルジュは自分の背後にいるミセリの存在を思い出した。
21 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:01:41.53 ID:zwAlhkUSO
モララーがこれ見よがしな溜め息をする。
「面倒事はアウトでしょ」と言う視線を受け、溜め息を苦々しい気持ちで聞きながら、
振り返ったジョルジュを、彼より背の低いミセリがやや見上げるように見た。
彼女の為に新調されたパイロットスーツは、本当にそうしたのかと思えるほど不似合いだった。
ミセ*゚ー゚)リ「気にしないで……。もう大丈夫だから」
ここまで苦笑という単語が似合う笑顔を、ジョルジュは見たことが無かった。
(; ∀ )「……悪い」
それ以外にいう言葉を思い付かず、ジョルジュは再び前を向き、
やがて開くであろうエレベーターの扉を眺めたきり黙り込んだ。
24 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:02:50.67 ID:zwAlhkUSO
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企業が世界を巻き込んで引き起こした戦争は、
巻き込まれた世界に様々な変化をもたらした。
その大多数は到底喜べないような負の変化であり、
北極の消滅による水位の上昇もまたしかりである。
結果、海抜の低い陸地は海に沈むこととなった。
現在ジョルジュ達がコラージュの強襲部隊を迎え撃つ舞台として選んだ場所もまた、
そうやって沈んでいった都市の成れの果てである。
彼等は冠水を逃れた高層ビルの内部に潜み、強襲部隊を待ち構えていた。
28 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:09:48.90 ID:zwAlhkUSO
(,,゚Д゚)「しかし背後からとはな……。
一度見過ごしてから追いかけるというのも妙な話だ」
ブレストのコクピットに無線から入ったギコの声が聞こえる。
( ・∀・)「ギコの性には合わないやり方だろうけどね……。
まぁ相手の虚を突いて、こちらの被害が少なく済むなら越したことは無い」
ギコの呟きにモララーが答えた。
今回の作戦は、ジョルジュ達が今まで採ったことの無い策だった。
敵部隊の進攻ルートに初めから潜んでおき、敵が通過したのちに背後から迎撃。
今までは採ったことの無い策と言うよりは、採れなかった策と言える。
何故なら、本来なら敵部隊がジョルジュ達を発見するからだ。
今回は、その敵に存在を発見されないように、ミセリが「電子支配」により、
ジョルジュらの搭乗するACを、敵レーダー上から完全に隠蔽させられるから採択出来たのだ。
30 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:10:16.00 ID:zwAlhkUSO
( ・∀・)「とはいえ……、俺達としても初めての試みだけど」
その言葉は暗にミセリを指している。
それに気付かないほどジョルジュも間抜けではなかった。
ミセリの能力「電子支配」によって、
ブレスト達三機を敵強襲部隊のレーダーから消し去らなければ不可能な作戦を採る、ということは、
裏を返せばその作戦の成功がミセリに懸かっている、ということだ。
ジョルジュは動きには表さなかったが、自身の背後、
改造されたコクピットの後部座席に座るミセリの様子を気配で探った。
ミセリは何も話さない。
が、その無言が逆に彼女の緊張感をジョルジュに感じさせた。
32 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:12:28.66 ID:zwAlhkUSO
( ・∀・)「捉えた。戦闘ヘリが20……いや、25、後は地上用部隊を搭載したVTOLが5って所だな」
VIPの所有する三機のACの中で、最高性能のレーダーを搭載するアンカーによって、
ジョルジュ達が迎撃を請け負った、コラージュの強襲部隊の全容が明らかにされる。
(,,゚Д゚)「合わせて30以上か……ACを含まないとは言え、やっこさんも必死だな、オイ」
ギコが嬉しそうな声で言った。
( ・∀・)「もうすぐ敵のレーダー網にも引っ掛かる。
……頼んだよ」
モララーのその言葉を合図に、ギコも沈黙し、無線で飛び交う声は一切無くなった。
36 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:16:38.51 ID:zwAlhkUSO
強襲部隊とジョルジュ達との距離が詰まっていく。
ミセリが大きく息を吐くのが聞こえた。
距離はさらに詰まる。
(;゚∀゚)「……」
何も変わりは、無い。
既に敵の索敵範囲内には入っているはずだ。
それにも関わらず、敵に動きは無い。
予測されたコースを予測されたスピードで進行していく。
何とも言えない不安を感じながら、ジョルジュは自身の潜む廃ビルの上を部隊が通り過ぎるのを待った。
37 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:17:21.38 ID:zwAlhkUSO
数分の後、部隊はジョルジュ達に気付く事なく、ジョルジュ達に背を向けた。
( ・∀・)「……開始だ」
AC三機が同時に戦闘モードに移行し、
次の瞬間にはブレストのメインブースターが最大出力で火を吐いた。
高層ビルから飛び出し上昇する。
加速による加重がジョルジュにのしかかり、ジョルジュは短いうめき声をあげる。
しかしそれに負けて気を失う訳にはいかない。
ジョルジュはしっかりと己の駆けるべき道を見据えた。
39 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:17:44.95 ID:zwAlhkUSO
作戦の初動はブレストによる奇襲である。
コラージュ部隊に高速で接近し、追い抜くようにして敵の注意を引く。
そして同時に、ミセリの「電子支配」による電子攻撃をかけるのが、ブレストの役目だ。
( ゚∀゚)「ミセリ!」
ジョルジュは叫ぶ。
いちいち文章で尋ねている時間はない。
ミセ*゚ー゚)リ「大丈夫!」
同じ文字数でミセリから返答が来る。
あの時の彼女の言葉に嘘が無かった事を知る為には、その三文字で十分だ。
もっとも、それが喜ばしいかどうかは別だが。
40 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:18:18.23 ID:zwAlhkUSO
ブレストは変わらず加速。
敵部隊の背後を取り、挨拶代わりにレーザーライフルを発射する。
既にブレスト含むAC三機の機影は「電子支配」による隠蔽を受けておらず、
敵部隊に彼等の存在は探知されているはずだ。
しかしそんなことは関係ない。
多数の戦闘機の上を、颯爽とブレストが走り抜ける。
手土産にレーザーライフルの光弾と、ミセリによる電子攻撃を引っ提げて。
42 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:20:10.47 ID:zwAlhkUSO
白い排煙をなびかせた真っ赤な機体は、事態を飲み込めずにいる敵部隊の内の数機を次々と撃ち落としながら、
その最後尾から先頭までを一気に駆け抜けた。
(#゚Д゚)「ようやく出番だぜゴラァ!」
待ってましたとばかりにギコが吠え、リンクスがビル内部から飛び出した。
両肩からそれぞれ迫り出したミサイルポッドから、計8発のミサイルが発射される。
個々が異なる軌道と目標を見据えて煙を吐き出し敵部隊に迫るのと同時、
モララー操るアンカーが両手に握るライフルでブレストの後方支援に踊り出た。
立て続けに響く爆音、空を舞い墜ちていく戦闘機の残骸。
リンクスが放ったミサイルを察知出来たのは、運よくミセリによる電子攻撃を逃れ、
正常なレーダーを頼ることが出来たものだけだ。
敵部隊はあっという間にその三分の一を失い、隊列を崩した。
43 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:20:59.19 ID:zwAlhkUSO
ブレストは部隊を追い抜いたところで反転、慣性で敵部隊の進行方向と同じ向きに動いているブレストを、
今度は敵部隊に突っ込ませるような形で再び加速させる。
ミセリの電子攻撃の矛先はブレストを狙う敵の火器制御システムに向きを変える。
ロックオンに異常をきたし、軌道予測が出来ずに発射される銃撃は、ブレストが通り過ぎた跡を虚しく横切った。
今頃敵部隊で行き交う無線はいかほどか、などとジョルジュは思いながら、
しかしブレストを操作する腕に油断は無い。
やや上昇し、飛び越えるようにして擦れ違う敵機にレーザーライフルを見舞った。
46 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:23:31.13 ID:zwAlhkUSO
( ・∀・)「残り約半数。こっちのペースだ、無茶はするなよ」
モララーが経過報告と共に口にした忠告はジョルジュに向けられたもので、
リンクスは、混乱しまともな攻撃をしてこない部隊に対し、もはやビルの天井に仁王立ち、武装をフルに使って暴れている。
ジョルジュに注意を促したモララーもたまに響くロックオンアラームに合わせてアンカーに回避行動をとらせるだけで、
ブーストを吹かして空中を漂うようにして部隊を叩いていた。
VTOLが撃墜され、中にいた飛ぶ術を持たない戦闘兵器たちが次々に海の底へ沈んでゆく。
もはや敵部隊に、生き残る術は無かった。
47 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:23:50.32 ID:zwAlhkUSO
( ・∀・)「全目標の撃破を確認。ミッション完了」
モララーがそれを告げた時、ブレストは既に速度を大幅に落とし、
海上に点々と突き出ているビルの屋上に着地する寸前だった。
51 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:25:34.23 ID:zwAlhkUSO
ゴゥン、と音を立ててビルに着地したブレストは、戦闘モードから通常モードに移行。
(;ー∀ー)「……ふぅ」
ミセ*゚ー゚)リ「終わった、ね」
後ろから、噛み締めるような、しかし声色自体には別段心配するような事も無いミセリの声が聞こえて、
ジョルジュは振り返らず言った。
正直な話どんな顔をして振り向けば良いのか分からないから振り向かなかったのだが。
( ゚∀゚)「……あれは馬鹿な忠告だったな」
あれ、とは言わずもがなである。
52 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:26:11.52 ID:zwAlhkUSO
ミセ*゚ー゚)リ「そんな事は無いよ。
ジョルジュはジョルジュが正しいと思った事を言ったんだから。
実際正しかったと私も思うから」
( ゚∀゚)「……そうじゃなくてだな」
うまく言い表せない自分にやきもきして、ジョルジュは頭を掻いた。
つまるところ、ジョルジュは彼女が辛いものであると感じていた研究所での出来事を、軽く見たことを謝りたいのだが、
そもそも謝ることすら面を向かい合わせては出来ないジョルジュである。
ましてや彼なりの謝った理由など一々語れるはずも無い。
( ゚∀゚)「……まぁいいや。取り敢えず謝ったぞ」
ジョルジュは適当に言い放って、ミセリの返事を待たずにブレストを再び宙に舞い上がらせた。
64 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:49:40.58 ID:zwAlhkUSO
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コロニーVIPがスレストより引き請けた作戦はこれ以上ないほどの成功を収め、
ジョルジュ達はコロニーVIPに帰還した。
呆気ないと言えばそれまでだった。
例えあの作戦によって何人の命が都市の沈む海の藻屑に消えようとも、
ジョルジュがその内の何人を手に掛けていようとも、
世界情勢に対してそんな情報は意味を持たない。
作戦はスレスト側に被害を出さずに終了し、
コラージュ側の思惑が外れたという事実だけが、
世界に伝わるあの出来事の一部であり、全てだった。
ミセリという強力な手札を手に入れたコロニーVIPは、企業が頼る武装戦力としての位置付けを駆け上がることになる。
それはコロニーVIPに利益をもたらし、そこに住む人々の生活に安定を与える。
しかし同時に、
コロニーVIPを企業に危険視させ、コロニーVIPから安心を奪うものとも言えた。
そう。
いつだって終わりは呆気ないものなのだ。
65 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:51:03.97 ID:zwAlhkUSO
それは唐突だった。
コロニーVIPに向け多数の機影が接近していることをレーダーが捉え、
コロニーVIPの所有する三機のAC全てに出撃命令が下された。
67 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:52:42.54 ID:zwAlhkUSO
( ・∀・)「特攻兵器だ。それもとんでもない数の。
距離はまだあるけれど、こちらから近付いて迎え撃った方が得策だな」
出撃してから精確な状況を把握したモララーが、
残るAC乗りの二人にそれを伝え、同時に作戦プランも提示する。
(,,゚Д゚)「来るべくして来た、か」
ギコが珍しく含みのある言葉を口にした。
(,,゚Д゚)「最近の俺達は流石にお偉方の目に留まったらしいな」
( ・∀・)「だろうね。相手も本気出してきたんじゃない?」
68 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:53:15.92 ID:zwAlhkUSO
どこか楽しんでいるような気配を感じさせながら、二人が言葉を交わす。
しかしながら状況も気楽に受け止められるようなものであるわけではない。
80機もの特攻兵器など、見たことも無い軍勢である。
(,,゚Д゚)「とはいえ、おいそれとやられるつもりもないがな」
その事実を見据えた上で、ギコは不敵な笑みと共にそう言った。
( ・∀・)「同感だね。……各機散開して特攻兵器を撃墜する。
一機でも漏らしたらアウトだと思えよ」
( ゚∀゚)「了解」(,,゚Д゚)
69 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:54:34.26 ID:zwAlhkUSO
ジョルジュはブレストの武装を多数の敵を同時に攻撃するために有利なミサイルに変更する。
後ろに座るミセリも、能力を発揮すべく集中している。
既に三機は特攻兵器に接近し、射程範囲内に捉えていた。
空を埋め尽くすような特攻兵器の群れが視界に映る。
進行方向に頂点を向ける角錐形のフォルムは、いかにも特攻兵器だ。
それが何十機も向かってくるというのは何とも異様な光景だが、しかし躊躇する余裕も無い。
71 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:55:34.57 ID:zwAlhkUSO
……恐れるな。
自身に言い聞かせ、ジョルジュはタイミングを計った。
( ゚∀゚)「……行くぜ」
その言葉は他の三人に対する合図も兼ねている。
ブレストは跳躍、速度を上げ、他の二機に先行するようにして特攻兵器の群れに接近した。
74 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:57:33.78 ID:zwAlhkUSO
火器制御システムがミサイルのロックオンを着実に熟していく。
それぞれがある程度離れた敵を目標に据える。
ミサイルが命中したときに、他の特攻兵器を最大限巻き込むように。
最大までロックオンしてから、ジョルジュはミサイルを射出した。
総数4のミサイルが敵に向かって飛来する。
後を追うように、ギコの放ったミサイルも特攻兵器に向かった。
75 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:58:07.64 ID:zwAlhkUSO
着弾。爆発。
ミサイルに食らい付かれた特攻兵器達は爆発し、それに巻き込まれた他の特攻兵器がさらに爆発を繰り返す。
爆煙の中からミサイルを逃れてくる特攻兵器を、アンカーが射撃で潰していく。
何度となく同じ戦場に立ってきた者達の間に成り立って来た、それぞれの役割を、暗黙の了解のようにこなしていった。
76 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 21:58:37.47 ID:zwAlhkUSO
(,,゚Д゚)「所詮は数に物を言わせただけか。
呆気が無さ過ぎるな……俺の勘に言わせりゃ、こういう場合ってのは……」
後続が来る。
ギコがそれを最後まで言い切らないうちに、まさしくそれが現実となった。
レーダーに新たな機影。
数だけを見れば大した事は無い。
僅かな数だ。
問題はその速度だった。
78 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:01:26.10 ID:zwAlhkUSO
(;゚Д゚)「ミサイル!?半端ねぇ速さだぞ!」
ギコが吠える。
(;゚∀゚)「撃ち落とす!」
最も速くミサイルを捉えたジョルジュは、対抗するようにミサイルを放った。
しかし明らかに性能が段違いだ。
迫り来る高速ミサイルは、ジョルジュの放ったミサイルの追尾性能では到底太刀打ち出来ない程の速度と軌道を描いて、
苦し紛れのレーザーライフルをも振り切り、ブレストの真上を飛んでいく。
が、
( ・∀・)「厄介だな」
後方からのアンカーの狙撃がミサイルにたたき込まれた。
アサルトライフルから発射された弾丸が数基の内の一基を撃墜。
途端。
光が炸裂。
凄まじい爆発が巻き起こった。
79 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:02:22.42 ID:zwAlhkUSO
(;ー∀゚)「!」
迸しった閃光に、ジョルジュは思わず目を閉じる。
機体が衝撃に揺れる。
咄嗟に出した詰まるような声は、轟音に掻き消された。
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/21(月) 22:03:50.93 ID:bGXG0gZfO
支援
81 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:05:50.66 ID:zwAlhkUSO
ブレストは地上へ吹き飛ばされるようにして横にスライドしつつ着地、砂塵を巻き上げる。
音と光が去った後に、ジョルジュはようやく目を開いた。
(;゚Д゚)「……馬鹿げたモン引っ提げてきやがったなゴラァ!」
一瞬の間をおいて聞こえたギコの怒声には、明らかな焦りの色がある。
( ・∀・)「本当に厄介だ。
もう片方の一基は、既に三機ともの射程範囲内から逃がしてる。
完全にしてやられた」
モララーが早口にまくし立てる。
打ち建てる対策はジョルジュにもすぐ分かった。
( ゚∀゚)「俺が行く」
ジョルジュは静かにそう言うと、ブレストを反転、最高出力で加速させた。
『下手うつんじゃねぇぞ』
リンクスとすれ違いざま、無線に入ったギコの声は荒がっていなかった。
それが逆に事態の深刻さと、ジョルジュに託された事の重要性を物語っていた。
82 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:07:06.18 ID:zwAlhkUSO
二基のミサイルの噴煙をなぞるようにして駆けるブレストは、速度を上げて徐々にミサイルとの距離を詰めた。
モニターに映るミサイルの脇にブレストとの距離が表示されるが、
それが示す数値は未だブレストの射程距離よりも大きい。
( ゚∀゚)「ミセリ!どうにかならないか!」
後部座席にいるミセリに何かしらの行動を要求するが、
ミセ*゚ー゚)リ「……駄目!妨害されて手が出せない!」
ECMに対するEECMのように、ミサイルにはミセリの能力から身を守る何かしらの対策が為されているようだった。
それが、このミサイルをコロニーVIPへ向けて放ったものの正体と、その意志をジョルジュに思い知らせる。
84 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:08:50.81 ID:zwAlhkUSO
(#゚∀゚)「……!
ふざけるなよッ!」
ジョルジュは慟哭した。
そんな目論みなど上手くいかせて成るものか。
今まで自分が数多の苦痛を負って守ってきたものを、そう簡単に破壊させたりはしない。
85 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:10:13.08 ID:zwAlhkUSO
ブレストがミサイルを射程範囲内に捉え、
ジョルジュは直ぐさまブレストが右手に引っ提げるレーザーライフルの照準をミサイルに合わせる。
(#゚∀゚)「今度は外さねぇ……」
焦燥が満ちるコクピット内に響く、ロックオンを告げる電子音を合図とするように、
ジョルジュはレーザーライフルの引き金を引いた。
渇いた音と共に、一筋の光学レーザーがライフルより放たれる。
その光の矢が吸い込まれるようにミサイルへ到達した瞬間、ミサイルから光が溢れ、
先程の光と轟音と衝撃が、ブレストの面前で再び巻き起こった。
(;゚∀゚)「!」
ブレストはそのままではそれに真正面から突っ込まざるを得ない状況に追い込まれ、
ジョルジュは咄嗟にブレストのスピードを落とし、出来る限り推進方向を上に傾けて急上昇させた。
86 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:10:41.30 ID:zwAlhkUSO
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(;・∀・)「……ツイてないんてレベルじゃないな」
モララーはレーダーに映る機影を見て、半ば呆れるように言った。
ジョルジュにミサイルを任せ、特攻兵器の殲滅に掛かっていたモララー達に、
敵の更なる追撃が来ていたのだ。
コロニーVIPだけではなく、その戦力まで完全に捩伏せんとする企業の思惑が形となったかのような波状攻撃。
その何度目かの波を、モララーは何故か冷めた心持ちで待ち構えていた。
88 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:12:34.13 ID:zwAlhkUSO
( ・∀・)「ギコ、追加注文だ」
(,,゚Д゚)「ラストオーダーは何時になるんだ?糞が」
ギコの吐き捨てるような返事を聞きながら、モララーは敵の戦力を把握する。
(;・∀・)「……MT6機にAC1機だって……?
奴ら目指してる場所を企業の大工場と勘違いしてないか?」
嘲るように呟く。
彼の駆るアンカーは既に右腕の肘から先を失い、熔断されたようなそこから、シャーシと数本のコードを剥き出しにし、火花を散らしていた。
他にもあちこちガタが来ている。
人間に例えれば満身創痍だ。
90 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:13:13.93 ID:zwAlhkUSO
(,,゚Д゚)「聞いてみたらどうだ?
……ったく、相も変わらず質より量がデフォルトな連中だぜ」
ギコからの無線は口調こそ変わらないが、あの覇気は感じられなくなっている。
リンクスは五体は辛うじて保っていたものの、その片手に握られたバスーカ砲には一桁の残弾しかなく、
背中に備えていたミサイルパックはとっくの昔に打ち切ってパージしている。
予備装備のハンドガンも、敵戦力を考えると心許ないと言わざるをえなかった。
91 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:15:53.17 ID:zwAlhkUSO
(,,゚Д゚)「特攻兵器は元から捨て駒だったな。
おかげで残弾数がヒデェもんだ」
( ・∀・)「ショボンが弾薬費を聞いたら卒倒するね」
軽快な会話の間で、してやられたという実感が無線を通して互いの間を行き来する。
しかし二人とも、もし特攻兵器が捨て駒だと分かっていても状況は変わらなかったことを理解していた。
コロニーVIPを守るために、特攻兵器を見過ごすわけには行かなかったのだ。
( ・∀・)「おまけに?ACからは何やら馬鹿げたエネルギー反応ときてる。
ありゃ下手しなくても大爆発を巻き起こすな。イカしたカミカゼ仕様だよ全く」
(,,゚Д゚)「死なば諸とも、か。
人の命を何だと思ってやがるんだろうな。
……あの小娘も逃げ出したくなるわけだ。
アレに乗ることに抵抗しなくなるような精神状態なんざ考えたくもない」
( ・∀・)「同感だ」
そこにはある種の諦めがあり、同時に決意があった。
92 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:16:19.48 ID:zwAlhkUSO
(,,゚Д゚)「……まぁ、アッチはジョルジュなら何とかするだろ」
ギコが嗤うように呟き、モララーが言葉を返す。
( ・∀・)「あれでしくじるようなら地獄で説教さ」
決意は、二人の間での暗黙の了解。
戦う理由を失う訳にはいかないのだ。
代償が、何であれ。
94 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:17:29.52 ID:zwAlhkUSO
(,,゚Д゚)「どうせなら最後くらい無線の相手は美人が良かったが……文句は言えねぇか」
( ・∀・)「そりゃこっちの台詞さ。
……さぁて、最後の仕事だ。
派手に行こう。
旅の道連れは多い方がいい」
(#゚Д゚)「おうよ。片端から巻き込んでやらにゃあ、逝くにも逝けねぇさ」
二機のACが、迫り来る敵影に対峙し、銃口を掲げる。
(#・∀・)「タダで死ぬと……」
(#゚Д゚)「思うなよッ!」
機体を急発進させるブースターの唸りに、迫り来る死に神に喰らい掴んとする二人の咆哮が重なった。
95 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:19:01.55 ID:zwAlhkUSO
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光が引いてゆく。
突き刺すような閃光に細めていた双貌をゆっくりと開きながら、ジョルジュは前を見据えようと目を凝らす。
(;゚∀゚)「やったか……?」
状況を再確認。
ブレストは空中に漂うように、ホバリングの状態で高度を保っている。
機体損傷を表すマーカーがモニターに表示されるが、
戦闘の為の機能に置いては大した問題も無いようだ。
98 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:21:09.80 ID:zwAlhkUSO
( ゚∀゚)「ミセリ、大丈夫か?」
ミセ*゚ー゚)リ「目がチカチカするけど大丈夫」
(;゚∀゚)「……冷や汗かいたぜ、全く……」
ジョルジュが安堵の溜め息を吐いた、次の瞬間。
ブレストの背後、ギコとモララーがいるはずの方角で、何もかもを真っ白に塗り潰す光が輝いた。
100 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:23:14.93 ID:zwAlhkUSO
(;゚∀゚)「嘘だろ……」
振り向いたブレストの見つめる先、モニターに映し出される荒野の果てで、
巨大な光と轟音が響き渡っていた。
光はやがて収束し、地から空に向けて茶色の混じる黒煙が舞い上がる。
ミサイルが爆発した時よりも、遥かに大規模で、苛烈な爆発が、
ギコとモララーがいるはずの場所に巻き起こっていた。
101 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:23:45.82 ID:zwAlhkUSO
ミセ;゚ー゚)リ「……二人の反応が……消えた」
ミセリが呟く。
(;゚∀゚)「ギコ!モララー!」
無線に投げ掛ける声に、答える声は、無い。
現実が、じわじわとジョルジュを蝕んだ。
(;゚∀゚)「……ッ!」
沈黙に耐え切れず、ジョルジュはブレストを爆煙の舞い上がる中心へと走らせた。
103 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:25:14.39 ID:zwAlhkUSO
凄惨の一言に尽きた。
レーダーに映る反応も、目視出来るような何かも、何一つ無く、
ただ爆発の勢いに撒き散らされた粉塵と、大きくえぐられた地面。
破壊の跡だけが、そこにあった。
(;゚∀゚)「ギコ!モララー!応答しろ!」
返事はない。
(;゚∀゚)「悪ふざけはよせよバカヤロウ!」
『……がなるんじゃねぇよ……欝陶しい』
望みを託すように叫んだジョルジュの声に、擦れるようなギコの声が聞こえた。
107 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:27:22.45 ID:zwAlhkUSO
(;゚∀゚)「ギコ!?何処にいるんだ!」
口調が自然と焦りに満ちるジョルジュとは対照的に、ギコは至って冷静に答えを返した。
『……さぁな。
計測器は軒並みイカレてて役に立ちゃしねぇし、
モニターは真っ暗で何も見えんときてる。
無線が生きてるのが奇跡なくらいだ』
(;゚∀゚)「何があったんだ!?
モララーはどうした!?」
『……死んだよ。盛大に爆発した敵もろともな』
一瞬の間が空いて、ギコが静かにそう言った。
108 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:27:58.76 ID:zwAlhkUSO
(;゚∀゚)「そんな……」
ジョルジュの口からため息のような呟きが漏れる。
あの飄々とした表情のモララーが脳裏に浮かんだ。
『まぁ…俺も時間の問題だがな……』
へっ、と自嘲するような嘆息と共に、ギコが言う。
(;゚∀゚)「馬鹿言ってんな、今すぐ見つけて……」
『止めとけ。
ブレストのコクピットで、下半身ズタズタで血まみれの俺が死ぬ様を見たいのか』
ジョルジュの言葉を遮ってぶつけられた、敢えてえげつのない表現を選んだギコの発言に、
ジョルジュは二の句を継げなかった。
110 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:29:29.57 ID:zwAlhkUSO
『俺に構うな。今すぐコロニーVIPに帰還しろ』
(;゚∀゚)「見捨てろってのか……!」
ジョルジュが唸るように言う。
『どのみち長くねぇ。
とうとう俺とモララーの番が来たってだけの話だ』
達観したかのような口調で話すギコに、ジョルジュは怒りを感じた。
(#゚∀゚)「ふざけんな!」
激昂するジョルジュを、ギコは一蹴する。
『こんなときに冗談噛ますと思ってんのか、ド阿呆。
何もおかしくは無いんだよ、この世界は結局奪うか奪われるかなんだ。
それはお前も身を持って分かってるはずだろうが』
111 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:31:20.78 ID:zwAlhkUSO
(;゚∀゚)「……でも!」
『でもじゃねぇよ……このド阿呆……!
現実を受け入れろ若造!』
淡々とした口調から一転、空気を震わせるような怒号が、無線を通じてジョルジュをひるませる。
112 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:32:25.62 ID:zwAlhkUSO
『いいか。もう俺とモララーはコロニーVIPには戻れないんだ。
テメェしかいねぇんだよ……!
分かってて、目を逸らすんじゃねぇッ!!』
そこまで怒鳴ったところで、ギコは咳き込んだ。
その何か詰まったかのような咳に、ギコに「先が無い」という実感がジョルジュの胸に芹あがる。
『コロニーVIPを守れ。
……守るんだろう?散々吠えたんだ、一人になったくらいで今更逃げるなよ……!
出来るのは、お前だけだ』
(;゚∀゚)「……ギコ……」
114 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:33:15.03 ID:zwAlhkUSO
『安心しろ。テメェは俺とモララーのお墨付−−から−−よ』
ギコからの無線に、ノイズが走り始め、その声自体が聞き取りづらくなる。
(;゚∀゚)「ギコ!」
『何度も言わ−−な……テメェの声−−、腹に響−−だよ……。
ああ、畜−−。目−−霞ん−−やがっ−−……。
……いよ−−お別−−ぜ、−−な、ジョルジュ』
聞き取れないヶ所が増えていく。
まるでギコが遠退いていくような感じがした。
(#゚∀゚)「馬鹿野郎!ふざけんな!!」
ジョルジュは怒鳴る。
消えていくギコを引き止めようとするかのように。
しかしその叫びがギコを捕まえることは無い。
116 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:34:18.79 ID:zwAlhkUSO
『へへ、ッ、−−悪くな−−−だっ……』
自身の人生を振り返ったかのような切れ切れの言葉を最後に、ギコからの通信が途絶える。
(;゚∀゚)「ギコ!おい!」
ジョルジュが無線に齧り付くようにギコを呼ぶが、
彼がジョルジュの呼び掛けに答えることは、二度と無かった。
117 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:35:09.77 ID:zwAlhkUSO
( ∀ )「……何でお前らは……」
しばしの沈黙の後、ジョルジュは俯くようにして、モニターにもたれ掛かる。
(#゚∀゚)「いつもそうやって、俺に押しつけて逃げやがるんだよっ!」
振り上げられた拳が、鈍い音を立ててコンソールに叩きつけられた。
118 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/21(月) 22:35:33.98 ID:zwAlhkUSO
(#゚∀゚)「一度くらい!こっちの身にも!成ってみろってんだ!畜生!」
叫ぶ度に拳がコンソールに叩きつけられ、やがて振り上げる拳から血が滲む。
後部座席に座るミセリは、それを止めることも出来ず、
ただ苦しそうな声をあげながら拳を叩きつけるジョルジュを直視に耐えずして俯いていた。
(# ∀ )「クソッタレェェェッ!」
ジョルジュの慟哭は、荒れ果てた大地に響き渡りもせず、
ただ、コクピットに響くのみだった。
最終話
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