4 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 20:13:08.99 ID:dtF6Dna2O
遠い未来において、
世界は大きな変貌を遂げた。
世界を一応は穏やかな状態に保ち続けて来た政治体制の崩壊と、それに伴う武力行動の頻発。
破綻していくと国家体制は裏腹に、企業は軍事産業によって影響力を強め、幾度もの合併と吸収を繰り返し、
最終的にはたった二つの巨大軍産複合企業が、実質的な世界最高権力組織として君臨した。
世界を統治する機構が、各国の政府から、世界の経済を握る企業へと移り変わったのだ。
5 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 20:15:17.08 ID:dtF6Dna2O
そのような世界において、大半の人々は「コロニー」と呼ばれる、大小規模様々な居住区で生活していた。
世界に点在するコロニーは、二大企業のどちらかと密接な関係を結んでいる。
コロニーが提供する何らかの形での労働の対価として、
企業はコロニーの人々に衣食住を提供する。
一応は生きていくことの出来る環境を、コロニーは企業に依存することによって手に入れていた。
7 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 20:19:16.31 ID:dtF6Dna2O
しかしながら、そうやって手に入れた環境も、安全とは言えなかった。
世界の革命から数年たった今でも、世界は戦火に塗れていたのだ。
企業戦争。
もはや過去の企業の経済抗争などからは想像も出来ないような、武力によるシノギの削りあいが、
世界を震わせ、大地を荒廃させ、その姿を大きく様変わりさせていた。
8 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 20:22:42.79 ID:dtF6Dna2O
そして、コロニーの中には、そういった抗争への「武力介入」を労働として企業へ提供し、
対価を得て存続しているものも現れる。
彼等は戦うために、生きるために、力を所持した。
人型戦闘兵器、アーマード・コア。通称AC。
それが、彼らの力だ。
9 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 20:26:16.00 ID:dtF6Dna2O
狭苦しいコクピット内に響き渡る、ロックオンアラート。
(#゚∀゚)「邪魔クセェ……!」
ジョルジュは高音程で響くそれを耳にしながら、自身が搭乗している人型戦闘兵器、アーマードコアを操作した。
紅に近い赤を基調に、白いラインが映えるその機体……ブレスト……が、迫る弾丸を急駆動で横にかわす。
同時に機体の向きを変え、ジョルジュはブレストに向けて銃弾を放った敵を、コクピットのモニター越しに自身の視野に捉えた。
12 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 20:29:22.97 ID:dtF6Dna2O
ブレストに向け攻撃を仕掛けていたのは、ブレストとはそのフォルムが大きく異なった、
空中を浮遊する飛行機ともロボットとも形容しがたい戦闘兵器だ。
再びブレストに向けて、その兵器が握るマシンガンから唸るような連続した発砲音と共に複数の弾丸が放たれるが、
それらは全て真紅の影が通り過ぎた後の軌道をなぞるようにして空を切った。
敵の攻撃が止んだのを見計らい、ブレストが握るレーザーライフルの銃口が、そのある意味不格好な戦闘兵器に向けられる。
間髪置かずにトリガーが握り締められ、
レーザーライフルの先端から放たれたレーザーが、戦闘兵器を貫いた。
14 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 20:31:11.97 ID:dtF6Dna2O
右翼を失った戦闘兵器は、バランスを失う前に爆発する。
爆散する戦闘兵器を気にする暇も無く、ブレストは既に次の目標をその視界に収めていた。
背中のバックパックに備え付けられたブースターが、一際大きく噴射炎を吐き出す。
( ゚∀゚)「……ッ!」
その反動による推進力が、ジョルジュに強烈なGを掛けながら、同時に機械の巨人を加速させた。
16 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 20:33:04.43 ID:dtF6Dna2O
絶え間無い銃声が響くここは、二大軍産複合企業の一つ「コラージュ」が所有する資源保管基地。
ジョルジュは、彼の所属するコロニーVIPが、ラウンジと相対するもう一つの巨大軍産複合企業、「スレスト」から受けた依頼を遂行すべくこの場にいた。
基地の上空に到達したブレストは、真下に見える基地を破壊すべく、レーザーライフルを連射し、その高度を下げる。
お返しだとばかりに基地に設置されている対空砲から飛来した砲弾は、
ブレストの装甲に掠りもしない。
当たるものか、とジョルジュは内心呟いた。
ジョルジュ駆るブレストは、装甲を犠牲に速度を重視した高機動機体だ。
最高速度は時速1500キロに達する。
17 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 20:36:44.51 ID:dtF6Dna2O
ジョルジュは高度を下げながら、今度はブレスト背部のバックパックに装着していたミサイルパックを起動、
ロックオンを知らせる電子音が響いた瞬間に発射した。
各々が別々の空中を漂う標的を捉えて発射された4つのミサイルが、煙を噴射しながら目標に向かっていく。
( ゚∀゚)「二発が命中、二発がミス……」
コックピットのディスプレイの片隅に表示された結果を一瞥して、
ジョルジュは更に高度を下げた。
遂には機体が地上に達し、接地した脚と均された地面との摩擦により派手な火花を散らしながら、基地の滑走路を滑るように着地。
降下しながら基地の中央を横切るように飛行していたブレストは、滑走路を滑りながら同時に機体を回転、
再び基地の中心を正面に見据えるようにしてスライド移動を止める。
19 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 20:38:40.01 ID:dtF6Dna2O
建築物の立ち並ぶ地上には、空中で相手をした敵戦闘兵器とはまた別の、それよりは人型に近い形をした戦闘兵器が待ち構えていた。
一斉に、各々が持つ武装の銃口をブレストに向ける。
( ゚∀゚)「遅いぜ?」
ブレストの背面に備え付けられたブースターが一気に出力を上げて爆発的な推進力を生み出し、
ブレストはいともたやすくその射線から消えた。
( ゚∀゚)「速攻ってのはな、こうやるんだ!」
軌道を切り返し、ブレストはその内の一気に肉薄。
敵機の正面を右から左に駆け抜けるのと同時、ブレストの左腕に装着されたレーザーブレード発生機から、
ヴゥン……と唸りを挙げて、蒼白の光の刄がブレストの二の腕に沿うように形成される。
ブレストはすれ違いざま、左腕を右から左へ振り抜いた。
21 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 20:41:22.25 ID:dtF6Dna2O
稲妻の刄はそれなりの頑丈さを誇る装甲に、チーズ同然に切り込まれた。
刄は敵機の右脇腹から左肩を断ち切る。
胴体を寸断された敵機の上半身が下半身を残してぐらり、と後ろに倒れこんだが、
その時既にブレストは跳躍し、再び空中に舞い戻っていた。
何も全てを破壊する必要はジョルジュにはない。
ジョルジュの役割は牽制と撹乱が主で、
破壊は「他の二人」の役割なのだから。
22 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 20:43:29.27 ID:dtF6Dna2O
『拍子抜けだな』
ふと、耳に付けたヘッドセットから聞こえた太い男声の持ち主は、
ジョルジュと同じくアーマードコアを操るギコという男だ。
(,,゚Д゚)「コイツら本気でやってるのか?
誰か言ってやれ、「これは訓練ではない」ってよ」
彼の機体、リンクスは、凜とした響きの名前とは裏腹に漆黒の重厚な装甲を持つ重量機体で、
ブレストとは違い速度ではなく火力で敵を圧倒するのを戦法としている。
つまる所はリンクスが破壊担当だ。
現にリンクスは基地にその巨体を君臨させ、
仁王立ちの態勢で大した回避行動も取らず、両手に握った、重火器と呼ぶに相応しいガトリング砲とバズーカ砲で、立ちふさがる敵を掃射していた。
24 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 20:44:43.30 ID:dtF6Dna2O
『油断は禁物さ、ギコ』
今度は先よりも穏やかな声が、それに答えた。
( ・∀・)「あくまで慎重かつ速やかに、だ」
スマートな声色の持ち主はモララーと言い、
ジョルジュやギコと同じくアーマードを操るのを生業としている男だ。
彼の操るアーマードコア、アンカーは、射撃性能に重きを置いた灰色の中量機体。
リンクスの後方で、その両手のアサルトライフルを別々の敵に向けて発砲し続けている。
25 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 20:46:26.03 ID:dtF6Dna2O
(,,゚Д゚)「分かってるさモララー。
なぁ、ジョルジュ」
軽く流したギコに同意を求められ、
ジョルジュはレーザーライフルの引き金を引いた後に、自分よりも一回りも年齢が上のギコに言い放った。
( ゚∀゚)「ギコはいつもそうじゃねーか」
ギコハハハ、と高らかな笑い声が鼓膜を震わす。
(,,゚Д゚)「そうでなけりゃ、俺にはこんな仕事やってられん」
その一言が、彼の性格も、リンクスの機体指向も物語っている。
( ゚∀゚)「そうかい」
また一機の戦闘兵器を撃墜し、欝陶しいアラートが止んだ時を見計らって、ジョルジュはギコの言葉に適当な返事をした。
同時に頭の片隅ではこう思う。
大体こんなことをしなきゃいけない世界自体が腐っていると。
26 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 20:49:20.82 ID:dtF6Dna2O
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(,,゚Д゚)「……片付いたな」
黒煙を揚げ、沈黙する基地に立ち尽くすブレストの中で、ジョルジュはギコの任務完了宣言を聞いた。
( ・∀・)「みたいだね」
モララーもそれに同意する。
(,,゚Д゚)「用は済んだ。さっさと帰還しよう」
( ゚∀゚)「……」
(,,゚Д゚)「おい、ジョルジュ」
( ゚∀゚)「……分かってる」
しばし眺めていた、残骸の佇む基地跡から目を離し、ジョルジュはブレストを、
既に上空へ舞い上がり帰路に着こうとしている、ギコの乗るリンクスの後に続くように上昇させた。
27 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 20:52:06.31 ID:dtF6Dna2O
海岸沿いの平原に半円状に拡がる、蒲鉾型のパイプのような通路で繋がった建築物の集合体。
ジョルジュ達三人の本拠地、コロニーVIPを簡潔に説明するとそんな感じだ。
ブレストのコクピットのディスプレイに映し出される故郷を見て、
ジョルジュはようやく数時間張り詰めっぱなしだった神経を緩めた。
VIPの端に建てられた、地下へと続く巨大エレベーターの前に、
三機のアーマードコアが、ブースターの吐き出す噴射炎で辺りに土埃を巻き上げながら着地する。
ブレストに搭乗したままエレベーターに乗って、地下のガレージに到着したところで、
ジョルジュはブレストのコクピットシートから腰を上げた。
28 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 20:54:51.43 ID:dtF6Dna2O
( ´∀`)「お疲れモナー」
地上から数メートルのコクピットから、下降ワイヤーにぶら下がってブレストから降りたジョルジュに、
作業服を来たジョルジュより少し年上に見える男が、特徴的な語尾を添えた労いの声を掛けた。
( ´∀`)「今日もまた被弾はゼロ。
流石モナね」
( ゚∀゚)「ありがとよ、モナー」
ジョルジュは若い男……「VIP」の所有する人型戦闘兵器のメンテナンスを担うメカニックのモナーの称賛に、ジョルジュは背伸びをしながら答える。
( ´∀`)「いつも通りショボンさんが部屋で待ってるモナよ」
( ゚∀゚)「あいよ」
モナーに返事をして、ギコとモララーよりも早くガレージを去った。
29 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 20:58:01.42 ID:dtF6Dna2O
地下から人間用のエレベーターで地上に上がり、
更衣室で、身体を戦闘時のGや血液の偏りによるブラックアウトから守る窮屈なパイロットスーツを脱ぎ、
下着だけを来た状態で足速にシャワールームに向かう。
降り懸かる水を頭から浴び、熱の篭るコクピットで火照った身体を冷やす。
どれだけ兵器の機動による殺人的なGや、意識を失いかける一歩手前の感覚に慣れても、
任務を終えた後のこの後味だけはどうしようもなかった。
何度経験しても慣れない。
無我夢中に人を殺し、物を破壊する感覚。
任務を遂行している最中の映像はいつもぼやけていて、はっきりとしない。
だべる余裕はあるのに、その時の事を鮮明に覚える余裕はなかった。
31 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 20:59:21.23 ID:dtF6Dna2O
むしろ鮮明に覚えたくないから、アラートの合間を縫ってまで話し、
撹乱をその役割とする高機動機体を操るのだ。
そういった記憶は出来る限り明確に作りたくないから。
ギコや、モララーは、そこまで考えてはいないだろう。
彼らはジョルジュよりもアーマードコアを操っている経験は上だ。
本当に余裕があるから、ああやって会話を交わしている。
ただ、アーマードコアに乗っている事自体をどう考えているかは別だろうが。
32 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 21:01:42.23 ID:dtF6Dna2O
シャワーを終えて、任務の前に更衣室で脱いでいた服に着替え、
ジョルジュはそのままショボンがいるはずの部屋に向かった。
(´・ω・`)「やぁ、お疲れ様」
ジョルジュがコロニーの中心に位置するショボンの部屋に着くと、
部屋の奥の机に座ってこちらを向いている男、ショボンが彼に労いの言葉を掛けた。
33 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 21:03:10.81 ID:dtF6Dna2O
ショボンはこのコロニーVIPの全権を担っている立場の人間で、
ジョルジュ達がこなす任務も彼がその選定を行っている。
幼い顔立ちの彼だが、ギコよりも年上だというのが驚きだ。
見渡すと、部屋には既にショボンの他に着替えたギコとモララーがいた。
どうやらシャワーを浴びる時間が長すぎたらしい。
ギコが「のぼせてたのか?」と意地悪そうな口調で尋ねてきたのを、
ジョルジュはうっせェ、と一蹴した。
35 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 21:05:31.63 ID:dtF6Dna2O
(´・ω・`)「オーケー、皆異常無しだね」
三人が任務の後毎回毎回ショボンの部屋に集まるのは、
彼等が任務で何かしらの怪我などを負っていないか、心配性のショボンが確認するためだ。
彼のコロニーの統率者としての手腕は申し分ないものがあるのだが、
時々神経質だったり、あるいは事を急いで無茶をさせられる時もあるのがたまに傷だ。
36 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 21:07:36.32 ID:dtF6Dna2O
(,,゚Д゚)「おかしいと思ったら自分から医務室に行くだろJK」
ギコはそんなショボンの神経質な一面にそう愚痴った。
(´・ω・`)「まあまあ。君達はこのコロニーの大黒柱なんだから。
今回も君達のお陰で暫くはまともな生活が送れそうだよ」
ショボンが嬉しそうに言った。
コロニーの中でも小規模の類に入る「VIP」にとって、
ジョルジュ達が任務を成功させるか否かはその存続に大きく関わってくる。
むしろ全てがかかっていると言っても過言ではないだろう。
(,,゚Д゚)「ああ、そうかい。
ならこれで心置きなく一眠り出来るな」
ギコは大きくあくびをし、リンクスと同じく大柄の身体を伸ばしながら言った。
37 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 21:11:40.02 ID:dtF6Dna2O
( ・∀・)「俺も疲れたから部屋に戻ろうかな」
モララーも賛同するように部屋を後にする。
( ー∀゚)「……俺も寝るわ」
お世辞にもふかふかとは言えないが、それでもこの気分を払拭するには自室のベッドでの睡眠は効果大だ。
ジョルジュはショボンの「お疲れ」という言葉を背に受けながら最後に部屋を出て、
コロニーの海側に位置する自室に入るなり、ベッドに突っ伏し、そのまま動かなくなった。
39 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 21:18:00.41 ID:dtF6Dna2O
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ジョルジュの両親は、彼が生まれる前より続いていた企業戦争に巻き込まれて死んだ。
珍しいことじゃない。
ギコもモララーにも、生きている肉親がいるという話は聞いたことが無い。
両親を失ったジョルジュや彼等にとっては、コロニー「VIP」こそが故郷で、VIPに住む人達が家族だ。
40 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 21:19:49.82 ID:dtF6Dna2O
だから、アーマードコアに乗って戦うという生き方にもそれなりの誇りがある。
誰にだって出来る役割じゃない。
機体を操作する技術や、
急な機動によるGに耐える為の屈強な身体が必要だ。
そこら辺の人間一人の命がゴミみたいに扱われる世界で、VIPに住む人達の命と生活を守る誇り。
例え任務として他のコロニーを襲うことになっても、躊躇するつもりはない。
こんな世の中で見知らぬ奴らの命なんて気にしてもしょうがないのだ。
−−それがジョルジュの精一杯の強がりだった。
43 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 21:21:48.82 ID:dtF6Dna2O
本心では割り切れていない。
やってることは、他人を殺して生活を破壊して何もかも台なしにすること。
考えただけで胸に毒々しいモノが沸き上がる。
だからジョルジュは戦う時に速くありたいと思った。
速くあればあるほど他の事を気にしていられなくなる。
いちいち何かを凝視する暇も無いような状況ならば、
嫌な光景だって極力目にすることを避けられると思った。
そして何より高速の世界は気持ちよかった。
全てを置き去りにする。
誰も立ち入れない領域に自分がいると実感出来た。
45 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 21:24:34.45 ID:dtF6Dna2O
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(´・ω・`)「今回は正確に言えば任務じゃない」
先の基地襲撃から数日が経った頃、ジョルジュはショボンから呼び出され、任務の話かと思いきや、そんなことを言われた。
(,,゚Д゚)「どういうことだ?」
ジョルジュと同じく呼び出されたギコが、ショボンの発言の詳細を求める。
(´・ω・`)「取引、というべきかな。
コラージュの研究員がVIPへの亡命を申し入れて来た」
46 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 21:27:10.94 ID:dtF6Dna2O
ショボンの発言に、
ヒュウ、と口笛を吹かせたのはモララーだ。
( ・∀・)「へぇ、亡命ねぇ」
茶化すようなモララーを一瞥して、ショボンは話を続ける。
(´・ω・`)「そうだ。それで、こちらから迎えを寄越してくれないかとね」
(,,゚Д゚)「亡命する立場の割には随分尊大な態度だなオイ」
( ・∀・)「大方上手く逃げおおせるか自信がないんだろうさ」
(´・ω・`)「そのようだ。 輸送ヘリしか都合がつかなかったらしい。
万が一の場合、ほぼ無力だろうね」
47 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 21:31:41.37 ID:dtF6Dna2O
(,,゚Д゚)「それで、どうするつもりだ」
(´・ω・`)「うん。向こう側もただで亡命はさせて貰えないと踏んで、手土産を持って来る事を申し出てる」
(,,゚Д゚)「手土産?」
(´・ω・`)「コラージュの技術で作り上げた最新機器だよ。
内容を聞く限り悪い話じゃないと思う」
(,,゚Д゚)「なるほどな。有りがちな話だ」
(´・ω・`)「だからこそ検討の価値がある。
そういうことが出来るってことは、コラージュでもそこそこの地位にいたと思うんだよね」
( ・∀・)「情報提供も期待できる、ってことかい?」
モララーがショボンの言葉の先を紡ぐ。
(´・ω・`)「そう。手に入れられるなら、技術も、情報も、上手く使えばVIPの大きな切り札になるかもしれない」
48 名前: ◆L66fmP/Ue6 :2008/04/19(土) 21:33:44.84 ID:dtF6Dna2O
しばらくショボンを見ていたギコが、吹っ切ったように言った。
(,,゚Д゚)「……良いぜ、やってやる」
( ・∀・)「そういう押しつけをギコが断るところ見た事ないな、俺」
(,,゚Д゚)「ああ?何か言ったか」
( ・∀・)「いいえ?何も言ってやしませんよっと」
(´・ω・`)「ジョルジュは?」
( ゚∀゚)「別に構わないぜ」
(´・ω・`)「じゃあ決まりだ。向こう側には伝えておこう。
日時は明後日の明朝、場所はカコログ砂漠だ」
第2話
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