31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 19:59:19.06 ID:wqLiQeGn0
「たまたまですお」
彼は笑った。
これはある梅雨の一幕。雨蛙が見た夢、蝸牛の甘言。
それから――
( ^ω^)が通り雨にやり込められたようです。 後編
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 20:01:40.67 ID:wqLiQeGn0
「ねぇ、空ちゃん」
ごめんなさい。
「もしね、もし、- - さんのことを許して貰えるなら」
ごめんなさい、ごめんなさい。
「待ってる。私は待ってるわ。あのパン屋さんの――」
ごめんなさい、ごめんなさい。ごめんなさい。
私は一度だって、貴女を − − だと思ったことはありません。
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 20:04:34.59 ID:wqLiQeGn0
( ^ω^)「クーさん?」
回想にふけっていると、ふいに隣から声がした。
聞き覚えは――ある。
首を左に向ける。飛び込んで来たのは、朗々と笑う少年の顔だった。
彼はたしか先日の雨の日の、
川 ;゚ -゚)「……あ、ああ、すまんブーン君。惚けていた」
( ^ω^)「いやいや、正直眼福モノでしたお」
川 ゚ -゚)「ハハハ、こやつめ」
使われたおべっかに愛想笑い。今日も今日とて雨の日だ。
彼は内藤ホライゾンといい、私がビニール傘を貸し出した人物である。
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 20:05:30.69 ID:wqLiQeGn0
( ^ω^)「あの、先日お借りした傘ですがお」
バツの悪そうに切り出した彼。
ザーザーザーザー。
雨音がする。
川 ゚ -゚)「あれか。どうした?」
( ^ω^)「すいやせん、忘れましたお」
川 ゚ -゚)「ハハハ、こやつめ」
キュッ、と握り締めた拳。
(; ^ω^)「ちょっ――ま、まっ、すすっ、すみませんお!」
ゴツッン。
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 20:07:45.90 ID:wqLiQeGn0
( ^ω^)「…………」
川 ゚ -゚)「いや、正味な話、いつ返して貰っても構わないんだがな」
( ^ω^)「ほうほう、僕は殴られ損ですかお」
川 ゚ -゚)「まあそういう事になる」
( ^ω^)「ハハハ、こやつめ」
川 ゚ -゚)「ハハハハハ……ハァ」
笑った後に出たため息。何かを察されて、顔を覗き込まれた。
そうしてから、ブーン君は至極申し訳なさそうな顔で言う。
(; ^ω^)「お……もしかして、正味の正味は、重要だったとかですかお?」
川 ゚ -゚)「そんなことはないさ」
頭を振る。
空を見上げ、曇天を視界に収め、私は再度ゆっくりと首を振った。
川 ゚ -゚)「そんなことは、ないさ」
/
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 20:11:34.86 ID:wqLiQeGn0
父は医者だった。
母は主婦だった。
私は子供で、どこにでもあるような家庭が私の床だった。
幸せな家庭。それは日曜6時の
ネバーエンディングストーリーみたく続くと思っていた。
しかしいつからか歯車はおかしくなり始めた。
原因は、母の浮気だった。
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 20:14:32.44 ID:wqLiQeGn0
――いや、母のそれは、裏切りというより報復といった方が正しいのかも知れない。
元を正せば、諸悪の根源は父の方だったのかも。
『お父さん、絶対に浮気してるわ』
これが私の高校受験期における母の口癖。
柑橘系の香水、カッターシャツについた口紅。
それらが彼女の腹の深い場所に居た嫉妬の蟲を叩き起こしたのだ、と私は思う。
それでもしょうがないとは思わない。
母を裏切った父を、父を裏切った母を認める気はない。
父とは違う男の匂いをさせる母、
母とは違う女の香りをさせる父。
破綻は目に見えていた。
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 20:18:38.34 ID:wqLiQeGn0
そうして私が高校1年の春、
めでたく家庭は崩壊し一家はあっけなく離散した。
私は父方に引き取られ、こうして毎日の人生をこなしている。
離婚前と違った所はない。
自慢にはならないが、もともと生活の不自由は皆無だったのだから。
強いてあげるなら母がいなくなったという点と、
それから――
( ∵) 「空。すまんな、今日も遅くなる。医院会議が入ってるんだ。
夕食は……そうだな、沢近さんと一緒に食べてくれ」
川 ゚ -゚)「了解した。……あの、父さん」
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 20:21:32.17 ID:wqLiQeGn0
( ∵) 「なんだい」
川 ゚ -゚)「雨、振ると思いますか?」
( ∵) 「天気予報じゃ、午後から雨らしいが……」
川 ゚ -゚)「そうですか」
雨の日に、あの人を待つという事だけ。
それは多分、待ち合わせというよりも
( ∵) 「何か用事があるのかい?」
川 ゚ -゚)「いえ」
ただの自己満足。
/
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 20:26:08.98 ID:wqLiQeGn0
あの雨の日から、私の雨の日の日課にはブーン君が組み込まれていた。
雨の度に彼に合い、雨の度に彼は傘を忘れていた。
私はいつもゲンコツ一発で済ませている。
文字通り痛い思いをすれば忘れはしないだろうとは思っているのだが、
何故か彼は毎回毎回、傘を忘れる。
脳内の仕組みとして傘関連の事は瞬時に忘れると言う能力があるのかも知れない。
「へへ、すいやせんお」
そう言って彼はゲンコツを大人しく食らう。
それから、他愛もない会話をするのだ。
これはある梅雨の一幕。雨蛙が見た夢、蝸牛の甘言。
それから、雨にやりこめられた私たちのハナシ。
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 20:30:00.26 ID:wqLiQeGn0
例えばそれは、
( ^ω^)「クーさん。クーさんは、読書とかしますかお?」
川 ゚ -゚) 「ん。まあ、人並みにはな」
( ^ω^)「オススメの本とか……」
川 ゚ -゚) 「地獄変とか、あとは人間失格とかかな。面白いぞー?」
( ^ω^)「…………」
川 ゚ -゚) 「…………」
(; ^ω^)「い、言いわんとする事は解りますお」
川 ゚ -゚) 「そうか」
( ^ω^)「はいですお」
川 ゚ -゚) 「……ああ。そうだ、今ちょうど読み終えたの持ってるんだ。見るか?」
(*^ω^)「はいですお! えっと……」
川 ゚ -゚) つ『ドグラ・マグラ』
(; ^ω^)「……い、言わんとする事は解りますお」
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 20:35:16.62 ID:wqLiQeGn0
例えばそれは、
( ^ω^)「ドグラ・マグラありがとうですおー。謹んでお返しいたしますお」
川 ゚ -゚) 「ん、確かに受け取った。で、傘の方だが」
( ^ω^)「へへ、すいやせ、ぃってぇお!」
川 ゚ -゚) 「等価交換、って奴だな」
( ´ω`)「言い終わる前に殴らないで欲しいですお……」
川 ゚ -゚) 「で、本の方の感想は?」
(; ^ω^)「へへ、すいやせ、ま、まってくだしぃ!」
ゴッッン。
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 20:38:09.25 ID:wqLiQeGn0
例えるならそれは、雨の日の逢瀬。
いつしか私の雨の日の日課はあの自己満足から
ブーン君に会うためのそれに変わって行った。
/
『ねぇ、空ちゃん』
電話口の向こうからは雨音がしていた。
『もしね、もし、お母さんのことを許して貰えるなら』
なんともなしに私は聞いていた。
なんとも思わずに、私は聞き流していた。
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 20:41:10.00 ID:wqLiQeGn0
『待ってる。私は待ってるわ。あのパン屋さんの軒先で』
そうして私がすっぽかした雨の日の待ち合わせの日。
TLEEEEE……
TLEEEEE……
『砂緒ペニサスさんの血縁の方ですね?』
『非常に残念なお知らせですが……』
母はトラックに轢かれ死んでしまった。
95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 21:52:49.90 ID:3Kkqhx1z0
逢瀬はいつも通りの雨の日。
あのベーカリの店先で、また傘を忘れた彼はいつもと違った神妙な顔つきで言う。
ザーザーザーザーザーザー。
雨音は、体のいいBGMだ。
( ^ω^)「あの、ですお。クーさん」
川 ゚ -゚) 「む、なんだい?」
( ^ω^)「お話したいことと、ききたい事がありますお」
川 ゚ -゚) 「……うん」
( ^ω^)「クーさんの待ち人って、誰ですかお?」
――それは、予想していた問いだった。
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 21:56:42.79 ID:3Kkqhx1z0
川 ゚ -゚) 「うん」
相槌を打ち、私は空を仰ぐ。
にび色の雲がひしめき合う空に、小さな晴れ間が覗いていた。
彼になら、と思った。
ブーン君になら、もう話していいんじゃないだろうか。
確固たる理由もなく思った。
何事も、きっとそんなものなのだとも思った。
目を伏せ、息を吐く。
湿気を含んだ大気は肺一杯に広がってから心まで浸透する。
川 ゚ -゚) 「私の待ち人は、」
勇気をもって話始めよう。
彼ならきっと、受け入れてくれるはずだから。
101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 22:03:09.90 ID:3Kkqhx1z0
/
私が話す間、彼はずっと私を方を見ていてくれた。
少し照れくさかったが、心強かった。……とても。
父と母の浮気、離婚。
母からの電話。その後の事故。
――雨の日の、私の後悔。
( ^ω^)「ありがとう、ございますお」
洗いざらい話した後で、ブーン君はそう言った。
穏かな声だった。肩の荷が、おりたような気がした。
川 ゚ -゚) 「話下手ですまない。……うん。私は、弱いな」
言葉と同じような覇気のなさで呟き、そして再確認する。
そうだ。過去のしがらみに未だ囚われ、後悔と自己満足で行動する私は、弱い。
104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 22:06:16.78 ID:3Kkqhx1z0
( ^ω^)「そんなことないですお。それに、嬉しかった!」
川; ゚ -゚)「うれ……?」
予想外の言葉に首を傾げる。
隣にいるブーン君は、梅雨の晴れ間みたいな暖かい笑顔を浮かべて、何度も頷いていた。
(*^ω^)「クーさんが話してくれた事自体が、とても嬉しいですお。
そうやって、クーさんの弱さを僕に話してくれた事がとても嬉しいですお!」
川 ゚ -゚)「……ブーン君。きみは、君って奴は――」
ゆるゆるとため息が出る。
そうか。
そこで全てを納得した。話してもいいと思った理由。彼が日常に溶け込んだ理由。
私は、多分、ブーン君のことを――
107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 22:10:00.57 ID:3Kkqhx1z0
( ^ω^)「クーさん……?」
川 ゚ -゚)「――いや、なんでもない。そうか、嬉しい。か……」
(*^ω^)「はいですお!」
川 ゚ -゚)「で、ブーン君『言いたいこと』っていうのはなんだい?」
彼の言葉を思い出す。ブーン君はたしかに、
( ^ω^)『お話したいことと、ききたい事がありますお』
と言ったはずだ。
先ほどのことが聞きたい事だったのならば、彼が言いたいことと言うのは――
( ^ω^)「あ、あー……それは、次の雨の日で、って事にはならないですかお?」
川 ゚ -゚)「次の……?」
不思議な提案に、復唱する彼の言葉。
( ^ω^)「傘、傘をお渡ししてから話したいんですお!」
傘、と言うのは――
109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 22:14:02.57 ID:3Kkqhx1z0
川 ゚ -゚)「あの、一向に返してもらえないビニール傘のことか?」
( ^ω^)「おっ……それを言われてしまうと返す言葉もないですおー」
ハハハ、こやつめ。と私は笑い、彼も同じように笑って返す。
そうか。元はといえば、あの傘が全部の始まりだったのか。
あれは――はて、私は誰の為にあの傘を持っていたのだった?
ザーザーザーザーザーザーザーザー。
雨音が響く。
雨が止む気配は、まだなかった。
/
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 22:19:09.75 ID:3Kkqhx1z0
( ∵) 「空。今日は学校、休みなさい」
朝。
父はそう言って玄関で靴を履いていた私を呼び止めた。
思わず固まる。なにを言っているのだろうか、このハニワは。
川 ゚ -゚)「父さん、今の私の服装が目に入っていますか?」
( ∵) 「学生服だな」
川 ゚ -゚)「今日は何の日ですか?」
( ∵) 「平日だ。私も仕事が押している」
だったら、と言いかける私を他所に、スーツ姿の父は続けた。
視線をそちらにやれば、いつも通りの無表情が目に入る。
( ∵) 「母さんの墓参りに行こう」
父の口から出た単語は、一生彼の口から出ないであろうと思っていた単語だった。
思わず固まる。
116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 22:25:41.23 ID:3Kkqhx1z0
川 ゚ -゚)「何故、」
( ∵) 「……墓場で話そう」
私の隣に座り、革靴を履き始める父。
……今日は雨でも降るのだろうか。
/
冷然と並ぶ墓石の花崗岩に、上天にある爽涼な青。
伊藤(母の旧姓だ)と刻まれた墓石を眺めながら、私達親子はただ無言だった。
墓石の両脇に添えられた仏花の色鮮やかさを
眩しがっている感じの遠い目をしながら、父は話始めた。
( ∵) 「母さんのこと、許そうと思ってな」
重低音が響く。幼い頃に比べ、目に見えて小さく侘しくなった父の後姿を見る。
川 ゚ -゚)「……父さんが母さんを許すのと、母さんが父さんを許すのとは別問題ですよ」
119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 22:33:43.17 ID:3Kkqhx1z0
私の言葉に、父は破顔した。ついにボケたかマンホールのフタ。
……いや、我が父は。
( ∵) 「まったく、まったくもってお前は母さんと似た者同士だな!」
川 ゚ -゚)「……は、はあ」
( ∵) 「私の過ちから始まったものだが――今では酷く後悔しているよ」
川 ゚ -゚)「……やり直しはききませんよ」
( ∵) 「解かってるさ、重々な。医者でも死人は蘇らせれない。
しかし、人は人を許せる。それはきっと、先に進むための第一歩だ」
許さないよりも許す方が、きっと幸福だ。と父は続けた。
天にのびる線香の煙が風でたなびいていた。白は青に混じり、やがて雲にでもなるのだろうか。
( ∵) 「空。だからお前も、そろそろ母さんの影から解放されてもいいんじゃないか?」
背中越しに聞こえた父の声。
123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 22:40:24.72 ID:3Kkqhx1z0
川; ゚ -゚)「な……」
( ∵) 「知っているよ。母さんがお前に連絡をとった事も、
……お前がそれ以来、雨の日に母さんを待っている事も」
全てを見透かされ言い当てられたように思えた。私は息を呑む。
立ち上がる父の背中が突然大きくなったように思え、一歩後ずさり。
( ∵) 「何年、お前と親子をやって来たと思っているんだい」
振り返った父は、顔一杯に苦笑いを浮かべていた。
――ボーリングの玉か転がすぞストライク出すぞとかいってすみません。
( ∵) 「むっ……さっきとてもとても失礼な事を思われたような気がするが――まあいい」
父はやはり笑顔だった。
この人のこう言う顔、久々に見たような気がする。
川 ゚ -゚)「――父さん」
( ∵) 「なんだい」
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 22:45:35.89 ID:3Kkqhx1z0
川 ゚ -゚)「私なら、大丈夫です。」
言い切り、私も笑顔を見せた。
大丈夫。過去のしがらみは、もう解かれ始めているから。
( ∵)「――――……」
父は呆気にとられたような顔をして暫し私を見つめる。
こう見ると本当に、この人も年をとったものだとしみじみ実感した。
顔に刻まれたシワが、彼の重ねてきた後悔の時間と比例しているんだろう。
( ∵)「そう、か。……いつのまにかお前も成長していたんだな」
そうして微笑む。
ガシリと掴まれた頭。手でくしゃくしゃとかき混ぜられる髪。
( ∵) 「空。すまんな、今日も遅くなる。医院会議が入ってるんだ。
夕食は……そうだな、一緒に食べよう」
それはいつもと違う言葉。
一歩踏み出した父の言葉。大きく頷き、私も笑う。
127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 22:47:19.14 ID:3Kkqhx1z0
川 ゚ -゚)「了解した! 父さん、」
( ∵) 「なんだい」
川 ゚ -゚)「雨、振ると思いますか?」
( ∵) 「お天気お姉さんが言うには、午後から雨らしいぞ」
川 ゚ -゚)「そうですか」
だから私も一歩を踏み出そう。
梅雨明けは、多分もうすぐこそに来ている。
/
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 22:48:59.17 ID:3Kkqhx1z0
ザーザーザーザーザー。
あれ?
ザーザーザーザーザーザー。
いやだな。雨は降っていないはずだろ?
ザーザーザーザーザーザーザー。
ああそうか。幻聴、か。
131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 22:53:36.82 ID:3Kkqhx1z0
ザーザーザーザーザーザーザーザー。
雨音が耳の奥で響いている。
交差点の向こう側、蜃気楼のように霞みがかった視界の先に約束の場所が有るのに。
ザーザーザーザーザーザーザーザーザー。
( ∵) 『まったく、まったくもってお前は母さんと似た者同士だな!』
父さんの言葉を思い出す。ほんとうに、そうだ。
まるで、私と母さんはまるで一緒でした。
確か母さんも、信号無視の――
ププ――ッ!!!!!!!!!
キィィィィ――――!
ドン。
133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 22:54:59.81 ID:3Kkqhx1z0
ああ、ブーン君にあったら、私も言いたいことが有ったはずなのにな。
何でだろう。なんでだろう。
私は、君の事が ― ― だって、
( ∵) 『まったく、まったくもってお前は母さんと似た者同士だな!』
父さんの言葉を思い出す。ほんとうに、そうだ。
まるで、私と母さんはまるで一緒でした。
きっと母さんも、踏み出そうとして踏み外した。
あ。
蒼空に手を伸ばす。
届かない。
当たり前だ。
137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 22:56:26.97 ID:3Kkqhx1z0
全部が閉じあう最後の最期、
ぽたりと雫が頬に落ちたように思う。
一足早い雨だったのかもしれないし、誰かの涙だったのかも知れない。
あ。
暗くなる。
139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 22:58:22.42 ID:3Kkqhx1z0
/
ξ゚听)ξ「あなたも、雨宿りですか?」
私は言う。
「待ち人来たらず、と言った所ですお」
彼は笑った。足もとには一本のビニール傘。
それはある梅雨の一幕。雨音の円舞曲、通り雨の子守唄。
それから――
( ^ω^)が通り雨にやり込められたようです。
終わり
148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 23:03:28.82 ID:3Kkqhx1z0
無限ループって怖くね? って言う所で終ります。
展開についていけない人ように説明すると、
クーとクーの母さんは似た者同士でした。
ブーンは待っています。
ツンは雨宿りしています。
って言う事です。
ここまで読んでくださって本当にありがとうございました。
前編で読み終わるもよし、後編も読むもよしという感じで。
何か指南とか質問とかあれば是非お願いします。
保守や支援本当にあざーっしたっ!
作者 敬具
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